健康と危険が隣り合わせの首都圏チャリ通族の実情

通勤手段に自転車を選ぶビジネスパーソンが急増している。スタイリッシュなロードバイクやクロスバイクでオフィス街を駆け抜ける姿は爽やかで快適そのものに見えるが、実情にはイメージと異なる部分もあるようだ。

なぜ高額バイクを選ぶのか?格安ロードバイクの知られざる不便性

健康と危険が隣り合わせの首都圏チャリ通族の実情

(Image:Shutterstock.com)

 ここ数年の自転車ブームによって、都内でもスーツ姿で自転車に跨って会社に向かうサラリーマンたちをよく見かけるようになった。ラッシュタイムでごった返す最寄り駅のホームを尻目にクランクを回し、スシ詰めとなった通勤バスも颯爽と追い抜いていく。細い路地や裏道も容易に選べる機能性は、交通渋滞とも無縁。憂鬱の種である通勤ストレスから解放され、運動不足の解消にもなる。何よりエコロジーでオシャレというのが、一般的に語られる自転車通勤のメリットだろう。都内の出版社に勤めるAさんもそうしたメリットに惹かれて、1年前から自転車通勤を始めた。現在も世田谷区の自宅から広尾にある会社まで約10kmの道のりを通い続けているが、実際に自転車に乗り始めてから自転車通勤に当初抱いていたイメージと現実に少なからぬギャップがあることに気がついた。

「とにかくドロップハンドルのロードバイクが欲しくて専門店を見てまわったんですけど、これまでママチャリしか乗ったことがない自分からすると、どれも信じられないくらい高いんですよ」

 国内外の主要自転車メーカーのロードバイクは初心者向けのエントリーモデルでも10万円前後が相場。ロードバイクよりお手ごろとされ、自転車通勤者のあいだで人気が高いクロスバイクでも5~7万円前後が主力ラインナップとなっている。自転車にさほど興味がなければ、高額な印象を抱いても仕方ない。その結果、Aさんはインターネット通販で3万円の格安ロードバイクを購入した。しかし、それはサイクリストのあいだでは“ルック車”と呼ばれる代物だった。

「専門店で売られているロードバイクと何が違うかといえば、見た目以外の全て。ブレーキや変速ギアはもちろん、シートポストやペダルまで細かいパーツがママチャリ仕様なんです。要するにロードバイクの形をしたママチャリ。通販サイトの格安ロードバイクは大半がそうしたルック車と考えていいと思いますよ」

 しかし、本人が気に入っていればコスパとしては十分とも思えるが、Aさんは1カ月で有名ブランドの本格ロードバイクを乗り換えた。理由は自宅近くにあるサイクリングショップにブレーキのメンテナンスを断られたからだ。実際、そうしたネット通販の自転車の修理やメンテナンスを受け付けないショップは少なくない。

「ルック車といっても形状はロードバイクですから、それなりにスピードは出るんです。ただ、そのわりにパーツの剛性が足りない。店からすれば、メンテナンスや修理をしたところで安全性を保証できないモノを扱いたくないのが本音なんでしょうね。また、ネット通販で自転車を購入した場合、ブレーキなどは無調整で届くことがほとんど。自分でメンテナンスができる知識や技術がないと、私のようにあとで後悔すると思います」

取りざたされる交通マナーの悪さ。都内は自転車無法地帯

自転車通勤ライフ

(Image:Shutterstock.com)

 かくして新しい相棒と快適な自転車通勤ライフに漕ぎ出したAさんだが、満員ラッシュとはまた異なる通勤ストレスを抱えることになった。
「都内は交通量が多いうえに、路上駐車が延々と並んでいたり、ムリな車線変更をしてくる車なんてのもざら。自転車道や専用レーンも少ないから、おのずといつも危険と隣り合わせといった感じです。週に1度くらいはひやっとしてますよ」

 わが国の道路事情は、車道と歩道という区分が自転車通勤者の急激な増加に対応しきれているとは言いがたい。また、ネット上では自転車通勤者自体の交通マナーの悪さも取りざたされている。信号無視や急な飛び出しなどの横行――。都内に限らず大都市圏では自転車無法地帯と化したスポットがいくつもあるという。理由には、車道を走ることを義務付けられたれっきとした軽車両でありながら、車との衝突事故では圧倒的に有利になる自転車の交通法上の立ち位置と、自転車に関する交通ルールが一般に浸透しきれていないことが挙げられる。

 傘差し運転で車道を逆走してくるママチャリのおばちゃんに違法行為を重ねている自覚などまったくないというワケだ。さらに事故という点でいえば、自転車保険に未加入の自転車通勤者の方々も多いのではないだろうか?スピードの出るロードバイクやクロスバイクは加害者となりうる可能性も高く、歩行者との衝突事故によって数千万円の高額賠償を命じられた事例もある。たかがチャリ通、されどチャリ通。これから自転車通勤を始める方は、こうした状況を考慮したうえで優良ライダーをめざしていただきたい。

オトナライフ編集部
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