成田【首都圏格差シリーズ】憧れの街の意外な現実

成田市は、成田国際空港開港をきっかけに、市域の経済や産業構造を大発展させた都市である。国際ビジネス・イノベーション拠点としての国家戦略特区、業務核都市や国際会議観光都市にも指定され、千葉県からは、千葉新産業三角構想の中核都市として位置付けられた独特の存在感を持っている。
空港開港後、関連事業である東関東自動車道の開通、内陸工業団地、成田ニュータウンが造成されて人口が増加。成田ニュータウン地区は、当初、おもに成田空港や関連企業の従業員向けの街として計画されたが、現在では東京都心や千葉県北西部へ通勤する住民も多い。実際に居住してみると、治安なども良いが、車の交通量は多い。ただ、市街地はごく一部であり、少し歩くと周辺には、のんびりとした地方都市の風景が拡がっている。子育ての面では、行政は、15年度から公立保育所の大規模改修や認可保育所の新設などを進め、国家戦略特区を利用した「地域限定保育士」の採用や、17年度からは、私立保育所保育士の補助制度「なりた手当」を設け、保育士の確保や待遇改善にも取り組んできた。待機児童も発生はしているが、年を追うごとに減少していくとみられている。また、日本の玄関口ともいえる成田市は「国際教育推進特区」に指定されており、2020年からの全国での英語科完全実施に先駆け、市内の小学校には「英語科」が設置されて、英語の授業を実施しているのも土地柄で興味深い。

千葉県の医師不足解消となるか!?

成田【首都圏格差シリーズ】憧れの街の意外な現実

(Image:Tooykrub / Shutterstock.com)

成田は、市街地を少し離れると、途端に田舎の風景に出くわすギャップが面白い。この差こそ、地方都市・成田の暮らしやすさともいえるのだが、一方で地方なりの問題も抱えている。もともと千葉県は深刻な医師不足である。千葉は団塊世代が多く、今後、医療需要の増加とともに、ますます悪化することが予想されている。そこで成田市が、国家戦略特区を用いて、公津の杜に開設したのが国際医療福祉大学(本校・栃木県大田原市)だ。財政が潤沢だからこその抜本的政策だが、成田市が、いかに住環境の問題に、真剣に取り組もうとしているかの表れでもある。
また、将来的な問題として、東京国際空港(羽田空港)の再国際空港化に伴う、国際ハブ空港の地位が低下する恐れも。とはいえ、長期的に解決策を模索する問題ではあるので、現在の住環境の大きなマイナスポイントとはいえないだろう。

文=

引用元:首都圏格差 首都圏生活研究会 (著)(三交社刊)

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