「オンライン飲食予約によるポイント付与」と「プレミアム付食事券」の2つが主なサービスとなる「Go To Eat」。そのうちオンライン予約での特典が2020年11月に入り早期終了することが分かった。わずか1か月余りの期間で予定予算を超える好調でサービス終了を迎えるとあって、飲食店には多くの予約が入り、大幅な売り上げ増加につながったのかと思いきや、実情は違うようだ。
うまく活用して、売り上げを伸ばした企業や、お得に食事ができた消費者がいる一方で、意図しない使用法や一部の店舗への予約の集中など多くの課題も見つかった。サービスの終了を迎えて、今回はその実態を振り返っていく。
SNSで話題の“無限くら寿司”には乗り遅れなかった?
新型コロナウイルス流行に伴う飲食業の大幅な利用者減を受けて、政府が2020年10月より開始した支援事業が「Go To Eat」だ。オンライン予約をする際に、最大1,000円分のポイント付与を受けることができる「オンライン予約ポイント付与」と、販売額の25%を国が負担する「プレミアム付食事券」の2つの支援のうち、「オンライン予約ポイント付与」が各サイト随時終了を迎えることが分かった。Go To Eatを利用したオンライン予約は、11月11日時点で5,000万人以上。ポイント付与額が400億円以上を記録しており、近日中に予算である616億円に達することが見込まれることを受けて1カ月での早期終了が決定したようだ。
Go To Eatにより大きく話題になった企業のひとつが「くら寿司」ではないだろうか。ディナー時に家族3人でオンライン予約をしたうえで3,000円以上の食事をすると、予約サイトより3,000円分のポイントが授与。次回来店時も予約をして、このポイントを使用すれば3,000円引き、さらに予約特典で3,000円分のポイントが再びもらえる。このサイクルを繰り返すことで絶えず3,000円引きで食事をし続けることができると公式HPが推奨。これが通称「無限くら寿司」と呼ばれ大きな話題となった。
実際には、どの店舗でも上記のような割引のループは受けられることができるのだが、公式から実例を踏まえてわかりやすく発信したことで、消費者にとっては、実態が掴みきれていなかったGo To Eatが、「くら寿司で使えば、とりあえずはお得のようだ」と伝わり、多くの予約が集まった。
「無限くら寿司」が公式推奨の良い使用例だとしたら、一方でグレーな使用例として話題となったのが、鳥貴族などの安価なメニューの揃う店舗を狙った「トリキ錬金」だ。ディナー予約で一律1000円分のポイントが付くことを利用し、食事を1000円以内で済ますことで、差額分のポイントを取得。実質食事をすればするほど儲かっていくという制度の抜け穴を狙った使用例はSNSなどで話題になり、連日鳥貴族を予約し、一品(298円)だけを注文するという人が続出した。このような利用は不正とはならないが、満席時には一般的な客単価を持つ利用客の予約を断ることなるほか、回転率の低下を招くなど店舗側にとっては迷惑極まりない行為となる。「トリキ錬金」は、支援事業としての観点にも反する行為となり非難が集まった。
また、消費者の使用方法以外でもGo To Eatは大きな課題を残した。オンラインサイトを経由した予約に限るという制度上、店舗はオンラインサイトに登録が必須。また、サービスの適用を受けるためにはサイト側に手数料を支払わなければならないという出費もあり、壊滅的な被害を受けている個人経営の飲食店が同サービスに参加できていたかは不明だ。一部の大手企業に恩恵は集中してしまっていたのではないだろうか。
一部の消費者による思わぬ利用法や、大手企業への支援の集中など多くの課題を残したGo To Eat。日本政府としては支援事業の難しさを痛感したのではないだろうか。今後の支援策はより練られたものとなり、万人が恩恵を受けられる制度となることを期待したい。