「楽天モバイル」のキャリア参入によって、スマホ業界のシェア争いは新たな局面に入ってきているかもしれない。というのも、先日発表されたコロナ禍でのスマホの乗換え加入件数で、楽天モバイルが他キャリアを圧倒する割合を記録し1位となったのだ。やはり「1年間無料」という破格のサービスがユーザーの心を掴んだのだろう。一方で乗換え前のサービスにも目を向けると、そちらでも特徴的な現象が…。
今回は、現在値下げ発表が相次ぐ激動のスマホ業界のシェアの動向を見ていきたい。
大盤振る舞いの“1年無料”はやはり効果絶大か
格安スマホから自社回線を持つキャリアへの転身を果たした楽天モバイルが、3月に打ち出した「300万人限定で基本料金1年間無料」というキャンペーンに驚きを覚えた読者も少なくないことだろう。さらにその中には、実際に楽天モバイルに加入した人もいるかもしれない。
そんな社会現象とも言える破格のキャンペーンの効果は、データにもはっきりと表れた。マーケティングリサーチ会社のMMD研究所が実施した「2020年通信乗り換えに関する実態調査」によれば、2020年の3月から10月にかけて新規・乗換え加入した人のうち、実に21.3%が楽天モバイルに加入しているという。「docomo」や「au」など他のキャリアが10%台で拮抗しているだけに、加入の勢いの違いは一目瞭然。第四のキャリアとしてスタートダッシュに成功したと言っていいのかもしれない。
一方で2位以降の事業者に目を向けてみると、2位のdocomoが14.3%。3位には「Y!mobile」で13.3%、auは13.2%でわずかにトップ3に届かず、という並びになっている。楽天モバイルに大きく離されていることがわかる。
そしてここで出てきていないのが「SoftBank」だ。SoftBankはauに次ぐ5位だが、その数字は11.4%と、2位集団からさらに離されており、サブブランドのY!mobileにも負けるありさまだ。加えてSoftBankは「乗換え前の通信サービス」においても、「未契約」を除くと1位となる14.4%を記録。2位がキャリアに乗り換えたであろう「楽天モバイル(MVNO)」であるだけに、加入は少なく流出が多い“一人負け”と言わざるを得ない厳しい一年となったようだ。
また調査期間が10月で終わっていることから、この数字には11月から続く“値下げ騒動”の影響は反映されていない。auの新プランが大炎上し「au解約」がSNSのトレンド入りしたことを筆頭に、現在ユーザーの流出を予感させる事態が相次いでおり、キャリア3社で有効な手を打てたのはdocomoくらいではないだろうか。
既存勢力がこの状況であれば、これからスマホ業界でも楽天旋風が巻き起こるかもしれない。2021年は、楽天経済圏急拡大の年になるのだろうか。
参照元:2020年3月~10月 コロナ禍の通信サービスの契約方法は MNPが47.4%、新規契約が39.7% 新規・乗換えの加入は楽天モバイル(Rakuten UN-LIMIT)が21.3%、次いでdocomoが14.3%【MMD研究所】