いまや国民の必需品であり、重要インフラとしての役割をはたしている携帯電話。しかし、国際的に見ても日本国内の携帯電話料金は高い水準とされており、利用者にとって分かりにくい複雑なプラン設定が当たり前となっている。消費者にとって分かりやすく納得のできる低廉な料金設定と、多様なサービスの中から自らのニーズに合ったものを利用できる環境の実現が求められているとして、政府は2020年10月に「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」を公表した。
携帯乗り換え活発化を目指し整備されたアクション・プラン。しかし……?
これまで携帯電話の販売店などでは、手数料などの初期費用を「頭金」と表記するなど、何にいくら支払っているのかが分かりにくい状況だった。アクション・プランには、こうした分かりにくさを是正するとともに、大手キャリア同士や、格安スマホへの乗り換えをしやすくして競争を促し、携帯電話料金を下げる狙いがある。
分かりにくさの是正に関しては、総務省が「携帯電話ポータルサイト(正式版)」を公開。詳しくない人にも分かりやすいように記されているのだが、読み進めていくのが負担になる情報量であり、このポータルサイトだけで消費者の理解が進むとは考えにくい。
そして、総務省は、消費者がウェブでMNP手続きをする場合は無料に、対面や電話で行う場合は1,000円以下にするよう指針を示していた。NTTドコモとKDDIはそれを受けて、4月1日にMNP転出手数料を廃止。楽天モバイルは2020年11月から、ソフトバンクは2021年3月から、それぞれMNP転出手数料を無料化していた。こうした動きや格安な新料金プランの登場により、乗り換えが活発化するとの見方もあった。
だが結局は、同じ通信事業者内でのプラン変更が多いようだ。MMDLaboが2月に行った調査によると、ドコモの打ち出した新プラン「ahamo」に契約変更を検討している人の72.9%はドコモ利用者だった。同じく新プランのKDDIの「povo」では82.4%が、ソフトバンクの「LINEMO」(調査時点の名称は「SoftBank on LINE」)では76.6%が、それぞれ自社内からの移行検討となっていた。
どこかが新プランや新サービスを出しても、追随して似寄りの対抗プランを展開するため、携帯通信大手のサービスや料金は同質化していく一方だ。消費者にとってみれば、今使っているキャリアに同じようなプランがあれば、あえてキャリアを変える必要なない。
そんな中でMNPが無料になっても何の意味があるのだろうか。以前、各社の提示したプランに対し政府は「羊頭狗肉」と厳しい言葉を浴びせたが、今度はその言葉をそっくりそのまま返されてしまう日が来るのかもしれない。
参照元:携帯「乗り換え」促進策は不発か。MNP無料化の落とし穴【ニュースイッチ】
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