マンガやアニメのファンが自身の作品愛をかたちにする同人グッズ。マンガ形式の同人誌や様々なアイテムが存在し、「コミックマーケット」のような世界的な即売会イベントも多数開催されている。そんな同人グッズを取り扱う同人ショップ大手「とらのあな」が、近年実店舗を次々と閉店させているという。いったい何故なのだろうか。今回は、「とらのあな」へのインタビューから見る、オタクたちの購買行動の変化について考えていきたい。
全国各地の「とらのあな」、続々と閉店のナゼ?
そもそも同人グッズとはファン個人が出版・製作する二次創作のアイテムで、基本的には一般の書店やショップに並ぶことはない。そんな同人グッズを手に入れるために重宝されているのが「とらのあな」をはじめとした同人ショップだ。大量の同人グッズが販売されるコミケ翌日などには、当日買えなかったグッズを求めて同人ショップに大量の人が押し寄せる“コミケ4日目”という現象も起こるほどだ。
そのため「とらのあな」や他の同人ショップは全国各地に存在し、その地方在住のオタクに愛されてきた。しかし現在「とらのあな」では地方店舗の閉店が相次いでいるという。6月9日に発表された2店舗が閉店すると、残るのは関東5店舗・名古屋1店舗・大阪2店舗・岡山1店舗のみとなってしまう状況だ。まさか地方のオタクたちが“同人誌離れ”してしまい企業の業績が悪化してしまったのだろうか…?
「とらのあな」がねとらぼの取材で答えたところによると、頻発する閉店はコロナ禍による影響は全く無関係ではなく、「前年と比べ70%近く来店客数が低下した」時期もあったという。しかしそれ以上に大きな理由が、実は来店客数の減った時期に「通販事業が前年比150%の伸び率を示す」など、近年は販売が通販に傾いてきており、コロナ禍によってその動きが加速したことが要因として大きいようだ。2015期には93億円だった通販事業の売上は年々増加し2020期には123億円を記録。2021期も145億円の見込みだとしている。業績悪化による規模縮小でないことがわかり一安心だ。
また近年は同人グッズの販売だけでなく、クリエイター支援プラットフォーム「ファンティア」や、オタクの婚活を支援する結婚相談サービス「とら婚」の運営も好調のようだ。オタクに対する理解が深い企業だからこそできる、オタクと多角的に関わる事業展開だと言えるだろう。
「とらのあな」の実店舗の減少は、時代のニーズに合わせた変化だったようだ。仕事の働き方改革だけでなく、“推し事”も新たなスタイルへと改革してきているのかもしれない。ただ、即売会の会場で感じる“お祭り感”や“まだ見ぬ傑作同人誌に出会えるかもしれないワクワク感”は無くならないでほしいなとも思う。
引用元:「とらのあな」なぜ急ペースで閉店? コロナ禍の影響は? 閉店が相次ぐ理由を聞いてみた【ねとらぼ】
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2106/17/news019.html