今やQRコード決済サービスでひとり勝ち状態となっている「PayPay」。2021年6月17日には登録ユーザー数4,000万人を突破したことも発表されたばかり。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだ。「楽天ペイ」や「d払い」など大手各社から様々なQRコード決済が出ている中でもPayPayの業界シェアは断トツであり、もはやスマホ決済の代名詞と言っても過言ではないだろう。
2021年10月からPayPay加盟店の手数料が有料に
PayPayがここまでシェアを拡大できたのには理由がある。それは、ユーザーに向けた大規模なポイント還元サービスや、加盟店の手数料を無料にするといった“先行投資”だ。キャッシュレス決済は、ユーザーだけでなく、加盟店も確保することではじめて成立するサービスである。これまで手数料がかかるためクレジットカード決済を導入しなかった店舗が多いが、PayPayであれば初期費用や手数料は一切無料。店側も「タダならいいか」と障壁が下がり、316万店以上の店舗を獲得した。
“無料”を武器に加盟店を増やしたPayPayだが、2021年10月からは毎回の決済時に加盟店から手数料を徴収する仕組みに切り替わることが決まっている。具体的な金額は発表されていないが、「タダならいいか」で加盟した店舗は有料化を機に解約してしまう可能性もありそう……と思いきや、どうやらそんなこともないようだ。AppsFlyer Japan カントリーマネジャー・大坪直哉氏は日経XTRENDに寄せた記事の中で、PayPayの戦略について「新規ユーザーに『PayPayがないと困る』と思わせるアプローチを強化している」と述べている。
デジタルメディア・日経XTRENDにて、大坪氏は「決済手数料を取る時期までにより多くのユーザーを獲得すれば、加盟店もPayPayをやめれば集客に影響が出ると考え、解約しづらくなる」と述べている。つまり、ユーザー数が増えれば増えるほど、加盟店にとって解約のデメリットが大きくなるということだ。
ユーザー間において1円単位で手数料無料にて送金できるPayPayは、食事や宿泊費の割り勘などで非常に役に立つ。すると、仲間の中で自分だけPayPayを持っていないと迷惑をかけてしまうため、PayPayユーザーに仲間入りする。こうしてユーザーにとって便利な機能を搭載することで、PayPayがユーザーにとって「無いと不便」な状況を作り出してきた。これについて大坪氏は、「ユーザーが増えれば増えるほど、サービスの利便性や訴求力が高まる特性をうまく利用したわけだ」と説明している。
巧みな戦略で会員数を増やしてきたPayPay。これだけ包囲されれば、店側は手数料を払ってでも加盟店で居続けざるを得ない。手数料がいくらになるかはわからないが、手数料の損失よりも、解約による機会損失の方が大きいなんてこともおおいにありそうだ。
参照元:独走PayPayが投資回収ターンに 何重もの「やめさせない」仕掛け【日経クロストレンド】