携帯電話のメール=キャリアメールだったのも今は昔。スマホやSNSの普及で利用する機会はほぼなくなったという読者も多いだろう。もしかしたら「一度もキャリアメールを使ったことがない」という人もいるかもしれない。しかし、総務省は「キャリアメールの持ち運び」の早期実現を、各キャリアに要求しているよう。もはや役割を終えたとさえ思っていたキャリアメールだが、そのニーズはあるのだろうか。
コミュニケーション手段としてキャリアメールがもてはやされた時代もあったが…
「docomo.ne.jp」、「au.com」、「softbank.ne.jp」などのキャリアメールは、スマホが普及する前は日常的なコミュニケーションに欠かせないものだった。だが、スマホが普及すると「LINE」をはじめとしたメッセージアプリなどにその地位を奪われ、利用機会は減少。スマホからモバイル利用をはじめた若い世代の中はキャリアメールをほとんど利用しないともいわれ、事実、そういった人々をターゲットにした「ahamo」などのオンライン専用サービスではキャリアメールの提供がない。
ところが総務省が発表した「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクションプラン」の中では、「キャリアメールの持ち運び実現の検討」が打ち出されている。その後の報告書にも「2021年中をめどに、できるだけ早期の実現を目指す」と結論付けられており、通信料金引き下げに合わせてキャリアメールの持ち運びをできるようになることが、乗り換えのハードルを下げることになると考えているよう。通信料金の引き下げがさらに実現すれば総務省としては鼻高々、というわけだ。
キャリアメール持ち運び需要は本当にあるのか?そのコストは誰が負担する?
キャリアメールの持ち運び需要がそれほどあるのだろうか?と首をかしげたくなるところだが、総務省はその根拠として、5,000人に実施したWebアンケート結果を示している。それを見ると、キャリアメールを週1回受信利用している人が67.7%、送信している人が37.1%いるとしており、持ち運びサービスを利用したいと答えた人は74.1%であることから「一定程度のニーズがある」と考えているようだ。
もちろんそれは5,000人の意見に過ぎず、持ち運びは必要ないという声もネット上では多い。また、持ち運びに関するコスト負担については全く考慮されていないため、もし「月々の支払いが増えてもキャリアメールを持ち運びしたいか」と聞かれれば、アンケート結果は全く違ったものになっていただろう。
ネット上でも様々な意見が飛び交っている。「有料でも構わないからキャリアメールが移管できるようにしてくれるのはありがたい」「若者はこの価値がわからんと思うけど、中高年は結構キャリアメール必要なんよ」といった現状でキャリアメールを必要と感じているユーザーも少なくない。また、「個人的には必要ないが中高年層に需要があるのは理解できる」と理解を示す人も一定数存在している。
一方で「維持コストは、持ち運びを希望するユーザーが負担すべき」など、キャリアメールの使用を自己責任として捉える意見や、「国民全員に『生涯不変なメールアドレス』の提供をしてくれないかな?」と新たな解決策を提唱するユーザーもみられた。
いずれにせよ、考えられる課題を放置した状態でコストをかけて整備し、結局は負の遺産となってしまった……というのでは意味がない。周辺環境の整備やコストの問題をクリアにしてからでも遅くはないのではなかろうか。
参考元:菅政権肝いりの「キャリアメール持ち運び」、どこまでニーズがあるのか?【ITmedia Mobile】