QRコード決済最大手の「PayPay」が、10月の決済手数料有料化の詳細に言及し話題となったことをご存知の読者も多いかもしれない。これまで中小店舗はこの手数料が無料化されていたことで、「タダなら入れてもいいか」と導入を決めていた店舗も少なくないはずだ。それが有料化されるとなれば多少の店舗の離脱も予想される。果たしてこの転換についてPayPayはどのような戦略を持って決断したのだろうか。
PayPay、有料化後の決済手数料は1.60%(1.98%)と控えめに
PayPayが決済手数料の有料化の詳細に正式に言及したのは8月19日のこと。これまで“無料”を武器に加盟店舗数を急拡大する戦略を取っていただけに、PayPayの動向には大きな注目が集まった。世間が注目した手数料設定は、有料プラン「PayPayマイストア ライトプラン」の加入店舗は1.60%、未加入店舗であれば1.98%(どちらも税別)となっている。1.60%と比べると1.98%が割高に見えるかもしれないが、他のQRコード決済など他サービスが2.6%や3%台であることをふまえて見ればかなり頑張った低めの設定であることがわかる。
しかし低い設定とはいえ、店舗としては有料化を機に利用を諦めるところも出てくることだろう。PayPayの取締役副社長執行役員COOの馬場一氏はITmedia Mobileの取材に対し、「ある程度の(離脱数の)腹づもりはあるが、それが何%とは言えない」とコメントしている。
PayPay側からしても、どこまで加盟店舗を引きつけていられるか未知数で、ふたを開けてみないことにはわからないのかもしれない。
ユーザーの利便性を考えれば利用可能店舗数の維持は欠かせないが、一方で企業としては当然ながら事業の収益化も図らなければならない。「事業に影響が出るほどの加盟店の減少を起こさず、ある程度の収益化が図れる」ラインを1.60%・1.98%とはじき出したのだろう。
この設定について馬場氏は、「決済手数料はトントンぐらいでいい」と述べているという。QRコード決済サービスでありながら、決済だけで黒字化を目指すのではなく、そこに付随する各種サービスを利用してもらうことでしっかりとした利益を生み出す計画のようだ。これはまさに、「スーパーアプリ化すれば決済事業の分の利益も生み出すことができる」という、スーパーアプリ・PayPayに対する自信のあらわれと言っても過言ではない。
現在は、有料化をきっかけに「加盟店の減少→利便性の減少→ユーザーの減少」という負のスパイラルへと陥ってしまう可能性が危惧されているPayPay。しかし有料化をソフトランディングさせることができれば、収益を上げることでPayPayのサービス・システムの改良にもさらなる投資をしやすくなるだろう。システムの改良による利便性が向上することで、「利便性の向上→ユーザーの増加→加盟店の増加」という相乗効果を生むことも期待できるはずだ。
有料化後のPayPayはどちらのルートに進むことになるだろうか。今後もPayPayの成長ぶりに注目していきたい。
参照元:「決済手数料はトントンぐらいでいい」 PayPay馬場副社長が語る加盟店戦略【ITmedia Mobile】
※サムネイル画像(Image:paypay.ne.jp)