「入場者数」「視聴率」「お客様満足度」、世の中にはサービスの人気ぶりを示す指標が数多く存在する。2021年に入ってからは、携帯通信業界の大手4キャリアが揃って“新プラン”を出したこともあり、「契約者数」という指標も頻繁に聞こえてくるようになった。しかしそんな中、“第4のキャリア”楽天モバイルで謎の指標の使い分けが起こっているようだ。はたしてどんな目的でなどというややこしい行為を行っているのだろうか…。
楽天モバイルが使う“累計”契約申込者数とは
キャリア各社が自身のサービスの規模を示す際によく使用しているのが「契約者数」だ。これは単純に「現在どれだけのユーザーがこのサービスを契約して使っているか」が把握できるため、多くの場面で見られる表現だ。また、「一人で複数台持ち」というユーザーなどの存在も考慮して、単位に「人」をつけなかったり「契約数」と表現したりすることもあるだろう。
楽天モバイルでは、この契約者数だけでなくたびたび「累計契約申込者数」を公表していることが、現在ネットで注目を集めているという。「累計」という言葉からもわかるように、これは「いままで楽天モバイルと契約を結んだことのある人の数」と捉えるのが一般的だろう。つまり一度契約したあと、解約をしたユーザーも1人にカウントされるのだ。
「累計何万個売れました!」のような消費財的な商品であれば重要な指標かもしれないが、「あのアイドルには累計何万人のファンがいます!」と言われたらちょっとモヤッとしつつ「で、今は?」と思ってしまうのではないだろうか。
そのモヤッと具合は、8月11日の楽天グループの決算説明会でも具体化したようだ。楽天グループ代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏が示した資料では、3月末時点での楽天モバイルの契約者数は「289万」と説明されたという。しかし楽天モバイル社長の山田善久氏の資料では、同じ時期の累計契約申込者数が「351万」だったというのだ。その差は実に62万。同時期に「(ライバルと比べて)相当少ない。50万にも満たない」と正直に契約者数を報告した「LINEMO」がすっぽりと収まってしまうほどの規模だ。
累計という数字の性質上、これからこの数値が下がることはない。今後さらに差が広がっていく可能性が高いのだ。
ではなぜこんな誰もがすぐに違和感を覚える数字のトリックを使い続けているのだろうか。可能性としては、「グループの総力を挙げて成長に注力しているコンテンツだから」というのが考えられるだろう。
キャリア参入当時からスタートさせた「プラン料金1年無料キャンペーン」は大きな注目を集め、現在の「Rakuten UN-LIMIT VI」でも「データ1GBまで0円」という採算度外視とも思える前代未聞の従量制プランを打ち出している。グループ全体で先行投資を続けているだけに、簡単に「減りました。ごめんなさい」というワケにはいかないのかもしれない。
しかし当然ながらグループ内では契約者数の実数は共有されていることは確実だ。また外部の人間であっても、総務省が四半期ごとに公開する「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表」からおおよその数は推定できるという。となると本格的に、隠す必要性が無くなってくる気がするのだが…?
はたして楽天モバイルはいつまで「累計」を使い続けるのだろうか。今後の発表にも注目していきたい。
参照元:楽天モバイル契約者数500万の真相 願わくば「契約者数で開示してほしい」(石野純也)【Engadget 日本版】
※サムネイル画像(Image:corp.mobile.rakuten.co.jp)