楽天市場「送料無料化」賛同店舗90%超えも、出店者の本音は「参加しないデメリット」を懸念か

現在、様々な分野でその存在感を強め続けている楽天グループ。「楽天カード」や「楽天ペイ」といったサービスが、CMなどで認知度を高め続けていることは読者の方々もよくご存じかと思われる。しかし、そんな楽天グループの主力のひとつ「楽天市場」で現在、賛否両論の制度の存在が話題となってきている。

今回は、楽天市場で進む「送料無料化」の是非について考えていきたい。

楽天・三木谷氏、出店者向けイベントで送料無料化のメリットを強調

(Image:slyellow / Shutterstock.com)

日本を代表するECサイトでもある楽天市場は多彩な商品を購入可能だ

楽天グループは9月2日、楽天市場の出店者向けイベント「楽天EXPO2021」をオンラインで開催した。その中で代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏が登壇し、「今年、国内の年間EC流通総額は5兆円」に達する見込みであることを明かし好調ぶりをアピール。さらに、「2030年くらいまでに10兆円を目指したい」と今後の展望を語った。楽天グループ全体の2020年の国内EC流通総額は、前年から20%近くアップし4.5兆円となったことはすでに2021年2月に発表されているが、2021年はその勢いが増している様子が伺える。

グループの好調なEC事業の中でも、最も存在感を示しているのはやはり楽天市場だ。2020年には楽天市場単体で流通総額3兆円を突破している。

三木谷氏はそんな楽天市場での送料無料化について、「送料無料化に賛同する出店店舗数が90%を超え、実際に送料無料化に対応していない店舗よりも売り上げを伸ばしている」と言及。送料無料化の効果を強調する。続けて「導入店舗は未導入店舗と比較して25ポイント高い成長率を記録している。絶対に伸びるのでぜひ導入を検討いただきたい」とアピールし、画面の向こうで視聴している出店者に導入を呼び掛けた。

出店者からは反対の声も根強い送料無料化

元々の体力が少ない小さな店舗ほど値下げには慎重にならざるを得ない

しかしこの送料無料化、出店者側からは異論も少なくない。実はこの無料化された送料の負担は事実上出店者が負担するシステムであることが明らかとなっている。そのため出店者側の任意団体「楽天ユニオン」などが無料化の導入に猛反発。2020年2月には公正取引委員会が動いたこともあり、楽天側も導入を見送った経緯がある。

そうした過去の経緯を考えると、「賛同する出店店舗数が90%を超え」ているという話も、どこまで出店者側の本音が反映されているのか疑問に思えてくる。前述の楽天ユニオンが2021年2月に公開した「第4回楽天ユニオンアンケート集計結果」によれば、286件の回答店舗のうち送料無料化に「参加している」のは56.3%。しかし参加店舗中78.4%が参加理由を「参加は反対だが、検索等で不利益を被る可能性があったため」であると回答しているという。「入るメリット」よりも「入らないデメリット」を懸念する声が多かったようだ。

また、「参加していない」店舗の不参加理由も「参加した場合利益が出なくなるため」が82%と多数を占めている。大きな店舗にとっては参加すれば売上があがって利益をカバーできる施策なのだろうが、薄利で経営している小さな店舗などは、送料を負担するだけでも経営が立ち行かなくなってしまうのかもしれない。

送料の無料化は、送料を負担することになる出店者側からすれば実質的には値下げをさせられているのと同じことだろう。値下げによる価格競争はここ20年ほどの日本国内を見るだけでも失敗事例に事欠かない。

楽天市場側としては、送料無料を押し出して消費者の購買意欲を刺激することで流通額も右肩上がりに伸びていくことだろう。しかし望まぬ競争のフィールドに半強制的に立たされることとなる出店者の声は、果たして運営に届くのだろうか…?

参照元:第4回楽天ユニオンアンケート集計結果【楽天ユニオン

※サムネイル画像(Image:楽天市場公式サイトより引用)

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