楽天モバイルが、またしても大きな一歩を踏み出した。2020年4月のキャリア参入時から使用し続けているau回線へのローミングの対象エリアを、2021年10月1日から大幅に縮小させはじめたのだ。当然、対象から外れてしまったエリアではau回線を利用することができなくなり楽天モバイルの自社回線を使うことになるのだが、自社回線はまだまだ普及が進みきっていないのも事実。楽天モバイルユーザーからはこの動きを疑問視する声すら多く飛び出している。果たしてこの一歩は吉と出るか凶と出るか…。
楽天モバイル、ローミングエリアの縮小が加速
楽天モバイルは、キャリア参入時に東京・大阪・名古屋の大都市圏を中心とした一部エリアのみが自社回線で、それ以外の大部分のエリアではパートナー回線であるauの回線を使ってのローミングが行われていた。しかしそれ以降急速に自社回線の基地局を増設しており、2020年3月末時点で23.4%だった自社回線の人口カバー率は、2021年8月末には92.6%まで伸長している。さらに年内には96%への到達も目指しており、これからもさらなる拡大が続くことは必至だ。
そして楽天モバイルでは、自社回線の拡大に合わせてパートナー回線となるエリアの縮小も同時進行している。これはユーザーがローミングでの通信を行うと、楽天モバイルはauを運営するKDDIに使用料を支払わなければならないため、自社回線で事足りるようになったエリアは順次ローミングを終了させていくことで、余計なコストを抑えられるのだ。
10月1日からは対象エリアが一気に拡大。23道府県でローミングからの切り替えが始まり、以前から切り替えが行われていたエリアと合わせて、現在では39都道府県でローミングの停止が進むこととなる。これで切り替えが始まっていないのは岩手県、山形県、山梨県、和歌山県、島根県、高知県、長崎県、鹿児島県の8県のみとなったという。
支出の削減?収入の維持?楽天モバイルに問われるバランス感覚
楽天モバイルの現在のプラン「Rakuten UN-LIMIT VI」では、楽天の自社回線であればどれだけ使っても最大2,980円(税抜)だ。ユーザーとしては通信量に制限のあるパートナー回線が減り、自社回線エリアが増えるのならば大歓迎…かと思いきや、そんな簡単な話でもなさそうだ。
現状の楽天モバイル自社回線は「屋内や地下で通信状況がかなり不安定になることがある」とSNSなどで多くのユーザーが報告している。つまり「自社回線があるけど不安定」なエリアではパートナー回線が頼みの綱だったのだ。そうした背景もあり、ネット上からは「茨城では未完成の基地局が多数だけど、この状況でローミング切って大丈夫なのか?」「地方でローミング切るのは相当リスキーだと思う」「(通信基地局が)たった3万局でauローミング切ったら阿鼻叫喚になるんじゃない?」など、とくに基地局整備が行き届いていない地方エリアでの使い勝手を心配するユーザーが相次いだ。
また、「仙台市地下鉄 泉中央駅、楽天モバイルの圏外はいまだ継続中。ローミング復活させて」と実際に“通信難民”となってしまっているユーザーからの嘆きの声も聞こえてきている。さらには「今の電波状況なら自粛明けに解約予定」「今月で無料期間が終了するので、他社に乗り換えを考えている」といった、ユーザー離れを示唆する声も複数投稿されている。ユーザー数アップが急務の楽天モバイルにとって、流出は是が非でも避けたい事態ではないだろうか。
ローミングという選択肢自体、通信環境が整いきっていない段階での苦肉の策と言える。報道によれば、ローミングは使われれば使われるほど楽天モバイルの赤字もかさんでしまうといい、ローミングの提供エリアの縮小は収益の健全化には欠かせないことだろう。しかし支出を抑えたことでサービスの利便性が低下してしまうと、今度はユーザーが離れて収入が減少していくことにもつながりかねない。やみくもなコストカットに終始せず、ユーザーの離脱を招かない適度なローミングエリア縮小を進めていくことができるのか。楽天モバイルのバランス感覚が問われる。
参照元:楽天モバイルがKDDIローミングの7割を終了 コスト圧縮で契約者獲得へ本腰か【ITmedia Mobile】