一人暮らしをしている人の中には、テレビを持たずに生活している人も少なくない。ガラケーとは異なり、スマートフォンにはワンセグなどのテレビチューナーが備わっていないことが多い。こういった人はNHKの視聴機会がないため、これまでは「うちテレビないんで」と受信料支払いを回避する手段が存在していた。
ところがこのたび、NHKはテレビを持たない人へのネット配信について概要を発表。「スマホを持っているだけで支払い請求が来るかもしれない……」と批判が殺到している。
NHK=何度も来る受信料契約の訪問営業員のイメージは撤廃?
コロナ禍以前は、ピンポーンとインターホンが鳴り、「NHKです」とNHK受信料契約のために戸別訪問営業員が家にやって来るのが一般的だった。基本的には「日本放送協会の放送を受信することのできる受信設備」を設置・保持していれば受信料支払いの対象者となる。
ところが、一人暮らしやテレビ離れから「家にテレビがない」ことに加えて、「車も所有していないためワンセグ機能の付いたカーナビもない」「iPhoneなど、ワンセグ搭載ではないスマホのため視聴できない」と正当な理由を述べてもなお、何度も訪問してくる場合には迷惑だと感じている人もいたことだろう。
コロナ禍を受けて、NHKは対面での営業は控えるようになり、前田晃伸会長は2020年12月の定例会見で「2021年度以降、従来と同じようなスタイルの営業活動はしない」と明言していた。「テレビを持っているかどうかというのはNHK側ではわからないため、トラブルの原因のもとにもなっている」とも述べていたため、過度な徴収活動に対する苦情に近い声は減ってくると思いきや、2021年1月から実験開始するNHKの新たな取り組みが波紋を呼んでいるようだ。
NHKは、2022年度に実施する予定で進めている、テレビを持たない人へのインターネットを通じた番組配信の実証実験の概要を公表した。テレビを持たない人を含めて日常的にテレビ視聴をしない人を全国から選び、1回あたり最大3,000人を対象にして番組やネット情報の利用状況や感想などを集約、検証する実験を複数回行う。さらに具体的な方法に関しては毎年1月に公表する実施計画で明らかにするという。
今や、10代~30代のインターネット利用率はほぼ100%、そのほとんどがスマホを用いての利用との結果になっている。もちろん、そういった若者たちのテレビ離れによる視聴率低下を補うためや、より広い場面でテレビを楽しんでもらうための策なのは明らかだが、民放局が取り組んでいる動画配信サービス「FOD」や「TVer」と同じようにはいかない。世間の意見はなかなか厳しいようだ……。
ネット上には「これでテレビを持たない人からも受信料をとる理由ができるわけか……」といった声や「今は見てなくても家にテレビがあれば強制的に受信料を徴収してるけど、今度はスマホやパソコンを持ってるだけで強制的に取られるのか?」といった批判が殺到している。「どうにかして国民のほとんどと受信料契約をしたいのでは?」と思わざるを得ない状況になってしまっているようだ。
実験結果によっては実施状況や条件も変わってくるだろうが、まずは疑問に思っている人も多い「テレビを持たない人を含めて日常的にテレビ視聴をしない人を全国から選ぶ」とはどのように行うのか?スマホ所有者はみな受信料支払い対象者になるのか?ネットでの受信料の金額はどうなるのか?など、具体的な内容について知りたいものだ。
参照元:NHKがネット配信実験の概要公表 2022年度、テレビない人向けに【毎日新聞】
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