借金の滞納などによって「これ以上お金が借りられない」という、本当にお金がない状態に陥っている方に向けて当座の資金を用意する最終手段をご紹介します。
生命保険や公的融資、債務整理などさまざまな手段を用いることで、当座の生活資金を工面したり借金を減額することも可能です。ぜひ参考にしてください。
クレジットカード | 「キャッシング枠」の利用
まず最も手っ取り早い資金の確保手段が「クレジットカードのキャッシング枠」の利用です。
キャッシング枠の範囲内であれば、クレジットカードを使って全国の銀行やコンビニ、郵便局のATMで現金を借り入れることが可能です。返済はカードの利用金額と併せて口座から引き落とされます。
ただしカードの利用代金の延滞が過去に発生した場合、カードの利用自体が停止され、キャッシングできないケースも。またカード会社が利用者の与信情報を不定期に調べ、与信情報に問題があると判断された場合はキャッシングできないケースがあります。
またキャッシングできた場合も、金利が13%~18%程度と高いため、あくまで「緊急時に一時的に借り入れる」に留めましょう。
銀行の定期預金 | 「定期預金担保貸付」の利用
銀行に定期預金をしている場合は、銀行の定期預金を担保にキャッシングできる「定期預金担保貸付」がおすすめです。
定期預金担保貸付とは、定期預金を担保に預金額の最大90%まで借り入れ可能な仕組み。定期預金口座の解約は不要で、貸付を受ける際に審査も不要です。
借り入れの限度額は200万円~300万円程度のケースが多く、金利は0.5%程度。もしも定期預金をしているならば、この方法が最も確実に、すぐにまとまった金額を確保できます。より詳しくはこちらの記事で解説しています。
生命保険 | 「契約者貸付制度」の利用
生命保険に加入している場合は、生命保険の解約払戻金の一定範囲内で「契約者貸付制度」を利用できるケースがあります。
ただし生命保険の契約者貸付制度を利用するには、いくつかの条件を満たす必要があります。
・加入している保険が「掛け捨てタイプ」ではないこと
・貸付制度を利用する人物と契約者が同一人物であること
一般的な定期保険は、安価な「掛け捨てタイプ」で解約払戻金が存在しないケースが多いです。自身の加入している保険がどのようなプランか、まず確認してみましょう。
また貸付制度を利用する人物と契約者は、同一人物である必要があります。契約者が夫で、被保険者が妻の場合、貸付制度を利用できるのは「夫」のみ。契約の名義人も確認しておきましょう。
これまでに紹介した3通りの方法で、お金を確保できなかった場合は「公的融資」を受けることが視野に入ります。
公的融資の制度について、ご紹介します。
なお実際に公的融資を受ける際は、最寄りの自立相談支援機関や社会福祉協議会への相談が必要となります。相談先は以下の通りです。
資金の種類 | 相談先 |
・福祉費 ・教育支援資金 ・不動産担保型生活資金 |
市区町村の社会福祉協議会 |
・総合支援資金 ・緊急小口資金 |
市区町村の社会福祉協議会、および自立相談支援事業 |
審査と支援の決定には申し込みから10日から1カ月程度かかるため、まずは早めに最寄りの市区町村名の社会福祉協議会と自立相談支援事業に問い合わせを行うよう心がけてください。
生活福祉資金貸付制度
生活福祉資金貸付制度は低所得世帯、高齢者世帯、障害者世帯を対象とした貸付制度です。具体的には「総合支援金制度」をはじめとした、主に4通りの制度があります。
制度名 | 対象者 | 貸付限度額 |
総合支援金制度 | 失業等によって生活維持が困難な世帯に再就職までの支援金を支給 | 単身世帯で最大月15万円 |
福祉資金 | 障害者世帯で車椅子などの福祉機器の購入や住宅改修が必要な場合 | 対象経費により50万~460万円 |
教育支援基金 | 子どもの就学に際して入学経費や授業料などの支援が必要な世帯 | ・高校 → 月3.5万円以内 ・高専/短大 → 月6万円以内 ・大学 → 月6.5万円以内 ・修学支度費は50万円以内 |
不動産担保生活資金 | 現在住んでいる不動産を担保に融資を受けたい世帯 | 月額30万円以内 |
緊急小口資金貸付
今すぐお金が必要で、生活が維持できない世帯を対象とした緊急的な小口資金の貸付制度です。緊急小口資金の貸付限度額は一世帯につき、原則10万円以内。資金貸付の条件は以下の通りです。
対象者 | 緊急かつ一時的に生活の維持が困難になった世帯 |
貸付限度額 | 原則10万円以内 |
据置期間 | 貸付けの日から2月以内 |
償還期限 | 据置期間経過後12月以内 |
貸付利子 | 無利子 |
保証人 | 不要 |
「緊急かつ一時的に生活の維持が困難になった場合」とは、主に「勤務先の企業が倒産し、収入がない」「高額な医療費の支払いにより生活費がどうしても足りない」といったケースが想定されています。
より詳しい「緊急かつ一時的に生活の維持が困難になった場合」に該当するケースは、各都道府県の社会福祉協議会がそれぞれ発表しているため個別にご確認ください。
また令和4年(2022年)9月30日までは、新型コロナウイルス感染による影響が認められる場合、15万円~20万円程度まで特例貸付の申請が受け付けられていました。同期間までに申し込まれた緊急小口資金貸付は、条件次第で返済免除の対象になる可能性があります。詳しくはお住いの地域の社会福祉協議会、および自立相談支援事業にご相談ください。
求職者支援資金融資制度
職業訓練受講給付金を受けている、もしくはこれから受ける予定の「求職者」を支援する融資制度です。
基本的には「月額5万円もしくは月額10万円 × 職業訓練の受講予定月数」が融資を受けられる限度額となります。配偶者/子または父母がいる場合は月額10万円の融資対象です。
・単身者が6カ月の職業訓練を受ける場合
月額5万円 × 6カ月 = 30万円
・配偶者がいる人が6カ月の職業訓練を受ける場合
月額10万円 × 6カ月 = 60万円
母子父子寡婦福祉資金貸付
母子家庭や父子家庭といったひとり親世帯を対象とした融資制度です。20歳未満の子供を扶養している母子家庭または父子家庭が対象で、2019年度には27,953世帯が母子父子寡婦福祉資金貸付金で借り入れを行っています。
借りられるお金の種類は、修学資金や生活資金、住宅資金など12通りです。
制度の利用には、最寄の地方公共団体の福祉担当窓口にお問合せください。
教育一般貸付
教育一般貸付とは「国の教育ローン」です。子ども一人につき350万円(特定の要件に該当する場合は450万円)まで借り入れが可能です。
ただし「1年間に必要な費用のみ」が対象のため、翌年以降も貸付を受けるためには、毎年申し込み手続きが必要です。制度の利用には、日本政策金融公庫にお問合せください。
総合支援金制度や緊急小口資金の制度を利用しても、当座の資金を確保できなかった場合は債務整理も検討すべきでしょう。
債務整理には「過払い金請求」「自己破産」「個人再生」「特別調停」「任意整理」の5通りがあります。
どのような形の債務整理がご自身の状況にマッチするか、以下の診断チャートをご利用ください。
債務整理は国が公式に認めている、借金問題を解決する合法的な救済制度です。ただし5通りの選択肢のうち、どの手段を選んだとしても「個人」ですべての手続きをするのは簡単ではありません。とくに「任意整理」の場合、自身で債権者との交渉を行って借金減額を実現するのは難しいことも多いでしょう。
現実的には債務整理を検討する際は、どの手段を選ぶとしても、弁護士や司法書士にまず相談を行うことをおすすめします。
過払い金請求
「過払い金」とは本来は支払う必要がないにもかかわらず、カードローンやキャッシングの返済で「支払い過ぎていたお金」のことです。
過払い金が発生する条件は、法が定める上限利率を超えた「利息支払いをしたかどうか」です。上限利率の一覧は以下の通りです。
元金 | 上限利率(年利) |
10万円未満 | 20% |
10万円以上100万円未満 | 18% |
100万円以上 | 15% |
たとえば貸金業者から100万円を借り入れ、25%の利率で返済したとします。元金が100万円以上の場合、法が定める上限利率は15%です。つまり25% – 15% = 10%の利息金が過払い金として返金されます。
加えて過払い金は、実質的に債権者が貸金業者に「貸していたお金」でもあります。そのため利息が上乗せされて戻ってくるケースも。
過払い金には年率5%の利息が過去の判例によって認められており、過払い金請求を行うと多くのお金が戻ってくるケースも多いです。
「実際にいくら程度のお金が戻ってくるか」は、元金の金額や取引回数、残債などによって細かく変わります。弁護士や司法書士に問い合わせ、個別に見積もりをしてみましょう。
民事再生(個人再生)
民事再生(個人再生)とは、債務者が裁判所に申し立てをして「最大10分の1に減額された債務を3年~5年ほどで分割払いし、残りの債務は免除してもらう」という裁判手続きのことです。
裁判所の手続きのため、強制力があり、減額された借金をおおむね3年程度で返済すれば残りの金額の支払い義務がなくなります。
また自己破産と異なり、生命保険や車や自宅といった「資産」を持ったまま手続きができることも大きなメリットです。
ただし「3年~5年程度で減額された借金を確実に返せる」ことが、民事再生(個人再生)の条件です。収入が不安定であったり、失業中の場合には個人再生は難しいです。
また信用情報に個人再生を行った事実が残るため、「ブラックリスト」に載る形となります。「ブラックリスト」には一度掲載されると、5年~10年は情報が残ると言われています。その期間はクレジットカードの作成やローンを組むことは難しいでしょう。
自己破産
「安定した職に就いていない」ことなどが理由で民事再生(個人再生)が難しい場合、自己破産も選択肢の1つです。自己破産とは、債務者が自主的に破産手続き開始の申し立てを行うこと。「すべての借金を免除する」ことが可能な反面、住宅や車などプラスの財産もすべて処分され、借金も財産もゼロの状態となります。
借金の返済義務がなくなる反面、以下のデメリットがあります。
・住宅や車などプラスの財産もすべて処分される
・新たな借り入れやローン、クレジットカードの利用が難しくなる
・破産手続き中の引っ越しや旅行に裁判所の許可が必要
・公的資格の利用に制限が生じる
・官報に掲載される
・信用情報に自己破産をした旨が残り「ブラックリスト」に載る形となる
特別調停
特別調停とは、裁判所の調停委員が債務者と債権者の間に立ち、両者から話を聞いたうえで「和解」を目指す手続きです。
簡易裁判所への申し立てを行い、特定調停が認められると、裁判所から申立書のコピーが債権者に郵送されます。すると債権者には、債務者への取り立てをいったん停止する法的な義務が生じます。よって「まず取り立てを止めたい」場合に、有効な選択肢の1つです。
一方で「本人が行う手続き」が多いという特徴があります。主な手続きは以下の通りです。
・申立書類の作成
・裁判所との連絡
・裁判所への出廷
とくに申立書類には「特定調停申立書」「関係権利者一覧表」「財産の状況を示す明細書」などが必要です。
これらをすべて自身で用意するのは難しいケースも多いほか、調停はあくまで和解を目指す手続きであり個人再生などと比べると「借金減額が実現される」可能性はやや下がります。債権者が減額に応じないケースもあるためです。
任意整理
任意整理とは裁判所の手続きを利用せず、弁護士や司法書士が債務者の代理人となったうえで、交渉によって借金減額を行うことです。
弁護士/司法書士が、貸金業者やクレジットカード会社と主に利息のカットや長期分割返済などについて個別に交渉。現在の支払いよりも、債務者にとって負担の少ない返済計画を組んだうえで和解を成立させます。
裁判所が介在しないため、特別調停と比べると書類の準備などの手間がかかりません。「利息のカット」「返済期間を長く確保し、分割で返済する」といった形であれば返済のめどが立つ場合は、最小の手間で和解を成立させられる方法です。
一方で任意整理の場合、元本そのものの減額は実現しないことが多いです。借金総額が1000万円を超えているなど、多額の借り入れがある場合は、元本そのものを減額しやすい個人再生などを検討する方が良いこともあります。
当座のお金を用意するその他の最終手段
公的融資や債務整理を行う場合も、手続きが完了するには一定期間の時間を要します。
その間の当座のお金を用意したい場合、最終手段としては「質屋」や「フリマアプリ」で私物を適宜処分し、お金を確保することもおすすめです。
とくに質屋の場合、質入れする製品の査定額の7割から9割程度の金額を借り入れ可能なケースが多いです。なおかつ品物の保管期限までに、借り入れた金額の返済を行えば、品物は戻ってきます。なお返済出来なかった場合も、品物を質屋に売却した扱いとなり、取り立てなどが行われることはありません。
以下のようなアイテムが自宅にある場合、品を質入れすることも検討してみましょう。
・MacBookやiPhoneなどApple社製品
・一眼レフカメラ
・腕時計
・指輪、ネックレスなどアクセサリー
・ブランドバッグ
・宝石類
質屋が近くにない場合は、「メルカリ」などフリマアプリで売却するのも手です。ただしこの場合、品は質入れではなく「売却」したことになるため、後から同じものを取り戻すことは難しい点にご注意ください。
まとめ
本当にお金がないときにまず試すべきは、クレジットカードのキャッシング枠の利用、銀行の定期預金 の「定期預金担保貸付」の利用、生命保険の「契約者貸付制度」の利用です。それでも確保できない場合は公的融資制度に頼ったり、身の回りの高額なアイテムを質屋に売却したりなどしてみましょう。
監修日:2023年1月20日