ChatGPTは「2021年9月までの情報」に基づいて学習を行われていることから、しばしば「情報の古さや不正確性」が問題視されます。また「数学」に比較的弱い傾向があり、簡単な計算問題を間違えてしまうケースも見受けられます。
これらの課題に対し、2023年3月23日(米国時間)、OpenAIはChatGPTへの「プラグイン実装」を発表。
参考元:ChatGPT plugins
今回はChatGPTのプラグインでできるようになることや、確実に可能となる見込みの「用例」などを解説します。
ChatGPTの「プラグイン」でできるようになること
一言で言えば、ChatGPTにプラグインが実装されると、他サービスとの連携や最新情報の取得などが可能になります。
たとえば2023年のTEDで披露された、OpenAI共同創業者のGreg Brockman氏によるデモンストレーションでは「DALL-E」「Instacart」「Zapier」を立て続けに連携し、複雑性の高いフローを実現しています。
ちなみに筆者が3月時点に、ChatGPTプラグインの発表を確認した際には「DALL-E」が利用可能という情報はありませんでした。海外では、ハッカーがChatGPT APIをハッキングしたところ80以上の未発表プラグインが見つかったという報道もされており「DALL-E」もその1つかもしれません。
参考元:TED「The inside story of ChatGPT’s astonishing potential」
ユーザーに変わってアクションを実行
Greg Brockman氏のデモンストレーションでも取り扱われている通り、ユーザーの代わりに「Instacartで商品をカートに追加する」「ツイートを作成して、Zapierを経由して投稿する」といったアクションをChatGPTから実行できるようになります。
リアルタイム情報の取得
ChatGPTの公式プラグインとして「Browsing」が提供されることも、公式に発表済みです。
同等の検索機能はBingのAIチャットでも提供されています。MicrosoftはOpenAIに継続的な大規模投資を実行していることから、Browsing機能にはBingの検索技術が応用的に利用されている可能性が高いのではないのでしょうか。
参考元:ChatGPT plugins
Python環境の提供:Pythonの仮想的な実行や計算内容の表示、表出力
従来のChatGPTでは、Pythonのコーディングを行った場合に別の実行環境にコピー&ペーストをして動作確認する必要がありました。
今後、ChatGPTに「Code interpreter」プラグインが実装されることでChatGPT上の仮想環境でPythonコードを実行可能になります。
参考元:ChatGPT plugins
他サービスとのAPI連携
前述の通り、食料品の即日配達「Instacart」や自動化ツール「Zapier」とのAPI連携も可能。特に「Zapier」を介することでGoogleスプレッドシートやGoogleカレンダー、Gmailなど個人のドキュメントやファイルへのアクセスが可能となる見込みです。
ChatGPT + Zapier + Google Apps = Everything you need to work 🤯 pic.twitter.com/JYKfYKab9U
— ric.⌐◨-◨ (@ricburton) March 31, 2023
すでにプラグインを使えている海外ユーザーは実現済み
ChatGPTプラグインの一歩進んだ用例:ChatGPTが間違える「フェルミ推定」も可能に
ここからはChatGPTプラグインの一歩進んだ具体的な用途例を1つ、紹介します。
ChatGPTプラグインとの連携が大きく期待されるのが、前述の通り「Wolfram Alpha」。
ChatGPTとWolframを組み合わせることで一層おもしろくなるのが「フェルミ推定」など複雑な処理です。フェルミ推定とはかつてGoogleの採用面接でも採用されていたと言われる「一見予測が付かない数値を論理的思考能力をベースに処理し、結論を導き出すもの」。
たとえば「アメリカにおける牛の総重量は、人間の総重量と比べて重いのか、軽いのか」を求めてみましょう。
数値を扱う繊細な処理を「いままではChatGPTに扱わせるのが怖かった」という方でも扱いやすくなるでしょう。
今後、ChatGPTでは「Browsing」による最新数値の収集や、Zapierを経由してGoogleスプレッドシートの数値の取り扱いにも対応していくと見られます。最新数値やスプレッドシート上のビッグデータをWolframによって演算し、ChatGPTによって自然言語にまとめるといった流れが期待されます。
ChatGPTが公式発表済みのプラグイン一覧
ChatGPTの公式発表済みのプラグイン一覧は以下の通りです。なお前述の通り、海外ハッカーによってこのほかにも大量の未発表プラグインがあることも確認済みです。よってこの情報はあくまで「3月にOpenAIが公式発表したもの」の一覧です。
分野 | 用例 | |
Expedia | 旅行予約 | 対話型の旅行予約 |
Kayak | 航空券やホテルの比較 | 対話型の航空券やホテル比較と予約 |
Opentable | レストラン予約 | 対話型でレストラン選びと予約 |
Klarna | あと払い | 詳細不明 |
Instacart | オンライン宅配(主に食品) | 近隣店舗での食材取り置きや宅配 |
Shopify | ショッピング | 商品検索など |
Milo | 教育 | 詳細不明 |
Speak | 語学学習 | ChatGPTを語学学習プラットフォームとして利用可能 |
FiscalNote | 法関連 | ChatGPT上から素早く法律情報にアクセス可能 |
Wolfram | 数学 | 正確な演算、計算処理と自然言語での出力が可能に |
Slack | コミュニケーション | SlackとChatGPTの連携 |
Zapier | 自動化フローの構築 | 複数のWebアプリケーションとChatGPTの連動 |
上の12個に加えて「Browsing」「Code interpreter」が発表済みです。
ChatGPTのプラグイン利用の順番待ちへの登録手順
ChatGPTのプラグイン利用には、ウェイトリスト(順番待ち)への登録が必要です。
ウェイトリスト登録時に求められる入力項目と必要な内容は以下の通りです。
項目 | 内容 |
First Name (必須) | 名前 |
Last Name (必須) | 名字 |
Email (必須) | メールアドレス |
Country of residence? (必須) | 居住国 |
Would you be willing to provide feedback about your plugin experience? (必須) |
プラグインの感想のフィードバックが可能かどうか |
What types of use cases or new plugins do you want to see built? (任意) |
「どのようなユースケースのプラグインを構築してほしいか」回答する任意項目 |
How do you want to use plugins? (必須) | プラグインの使用用途は何か |
How are you using ChatGPT? (必須) | いまChatGPTをどのような用途などに使用しているか |
Which plugin are you primarily interested in? (必須) | どのプラグインに主に興味があるか |
回答が難しい項目はとくにないので、プラグインを使いたい方は以下のURLにアクセスしてウェイトリストに登録しましょう。英語での回答が難しい場合は、日本語で回答の下書きを作ってからDeepLで翻訳すると良いでしょう。
参考元:ChatGPT plugins
まとめ
ChatGPTのプラグインは極めて先進的なものが揃っており、ChatGPTがこれまで苦手としてきた最新情報や最新数値の取り扱いやコードの実行、計算処理なども大きく機能が補強されます。
筆者個人としては記事内で詳しく紹介したWolframとZapierの両プラグインの利用を非常に楽しみにしています。Wolframの公式サイトで紹介されているフェルミ推定の例でのChatGPTの回答は「GPT-3.5の回答」と品質がまるで異なり、「曖昧な問いに対してより数学的かつ論理的な回答を返すことができるAI」としての進化の一面を見た気持ちになりました。プラグイン登場が楽しみです!
※サムネイル画像(Image:T. Schneider / Shutterstock.com)