入ってはいけないワースト火災保険の見抜き方とは?保険会社が払い渋りをする理由も

火災保険は、家や家財を火事や落雷などの災害から守るために必要な保険です。法律上は強制加入ではありませんが、万が一の事態を想定すると、加入しない選択肢はないでしょう。

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火災保険はその名前から想像されるとおり「火災」だけでなく、落雷や家具家電の破損、爆発や盗難、自然災害などもカバーしてくれます

とはいえ、たとえば水濡れ・破損・汚損などの場合に「経年劣化」と「実際の災害による被害」の境界線が曖昧で、保険会社が「払い渋り」をするケースも。保険会社によって支払いに対する判断基準も違っており、境界線の曖昧さに拍車をかけているのが現状です。

そこでこの記事では「入ってはいけない火災保険」の見抜き方を解説。火災保険に加入する際は、ぜひ参考にしてください。

【目次】

火災保険会社による払い渋りや不払いが発生する理由
入ってはいけないワースト火災保険の見抜き方
主要な火災保険各社の格付け、ソルベンシーマージン比率の一覧
入ってはいけない?ワーストの火災保険会社の具体例
火災保険に加入する際の事前のチェックポイント
まとめ

火災保険会社による払い渋りや不払いが発生する理由

火災保険会社が一般的に払い渋りをする場合は、被害が経年劣化によるもの、不正請求や詐欺が疑われるといったほか、保険会社の資金繰りが厳しいといった場合も考えられます。また、保険会社によって保険金支払いの判断基準は異なります。

払い渋りには適正な理由がある場合もありますが、中には不当な理由で払い渋る悪質な保険会社もいるため注意が必要です。

経年劣化による被害

多くの保険会社は、経年劣化による被害は火災保険の対象外に設定しています。そのため、経年劣化が原因であると判断された場合、保険金が支払われないことがあります。

不正請求や詐欺への対策

保険会社は、不正請求や詐欺行為を防ぐために、保険金の支払いを厳しくチェックしています。そのため、不正行為が疑われる・虚偽の申告があったなどの場合は、保険金が支払われない場合があります。

保険会社の判断基準の違い

保険会社によって、保険金の支払いに関する判断基準が異なります。そのため、保険会社Aでは支払われる保険金が、保険会社Bでは支払われないというケースにつながることも。保険会社を選ぶときは、判断基準の違いを確認して比較するのが大切です。

監修者・四方裕伸(ゆうりFP株式会社):保険会社ごとにカラーがあるのは確かです。公平性を強く重要視して証拠が徹底してそろわないと支払いになかなか進展しない会社と、被害者救済を重要視してある程度証拠に対して柔軟な対応ができる会社とがあります。また、各社のルールも事故の担当者の解釈の仕方によって差が生まれてしまうことも無いとは言えません。

資金繰りの厳しさ

保険会社の資金繰りが悪化すると、保険金の支払いが遅れる・支払われないといった事態に発展する可能性があります。保険会社の資金繰りを確認するには、各社のソルベンシーマージン比率のチェックがおすすめ。

ソルベンシーマージン比率とは、想定以上の保険金支払いが発生した場合に、保険会社にどれだけの支払い能力があるかを示す数値のこと。資金繰りの厳しさが原因の払い渋りを防ぐためにも、必ずチェックしておきましょう。

なお、払い渋りや不払いのリスクを軽減するには、保険金支払いの妥当さをアピールするのもポイント。きちんと申請するために、適切な書類を準備するのが大切です。

入ってはいけないワースト火災保険の見抜き方

入ってはいけない火災保険を選ぶときのポイントは以下の通りです。

・ソルベンシーマージン比率のチェック
・正味損害率
・格付け会社の評価

基準①:ソルベンシーマージン比率のチェック

先述したとおり、「ソルベンシーマージン比率」は、保険会社の財務の健全性を測る指標のひとつ。大災害などの予想外の支払いが発生して支払いが増加したときに、保険料収入や責任準備金以外に、どれくらい余裕資金(資本勘定、諸準備金等)を持っているかを測るものです。

基準①:ソルベンシーマージン比率のチェック1

ソルベンシーマージン比率は高いほど保険料を支払う余裕があることを示しています。主要な火災保険会社のソルベンシーマージン比率の一覧は、後半でまとめてご紹介します

ソルベンシーマージン比率が200%以下の場合は早期是正対象となり、行政指導が入ります。200%に近い会社との契約は控えるべきでしょう。

監修者・四方裕伸(ゆうりFP株式会社):もっとも日本の損保会社の場合、ソルベンシーマージン比率が支払いに影響していることはまだ起きていないと思います。むしろ次年度以降の保険料アップに影響されることが懸念されます。とはいえ、会社経営は急激に変化することがございますのでチェックは必要でしょう。

基準②:正味損害率

正味損害率は、顧客から受け取った金額と保険料として支払った金額の比率のこと。高いほど、保険会社が保険金を支払う際の負担の大きさ、損害を示しています。

基準基準②:正味損害率1

正味損害率は、保険会社の経営状況を把握するための指標のひとつです。正味損害率が高い保険会社は、経営状態が悪く、倒産するリスクが高いと考えられます。正味損害率が低い保険会社は、経営状態が良く、倒産するリスクが低いと考えられます

なお、正味損害率を公開していない保険会社もあります。そのため、火災保険会社を比較に使う指標としては、前述のソルベンシーマージン比率を重視するのがおすすめです。

基準③:格付け会社の評価

火災保険会社を選ぶ時は、ソルベンシーマージン比率や正味損害率のほか、専門機関による格付け評価・顧客満足度・口コミなども重要。保険会社の情報を総合的に集めるほど、自分に合った火災保険が見つかりやすくなります。

なお、本記事ではソルベンシーマージン比率を主な指標としています。

主要な火災保険各社の格付け、ソルベンシーマージン比率の一覧

大手火災保険会社10社のソルベンシーマージン比率の一覧をご紹介します。前述の通り、ソルベンシーマージン比率は「200%」が安全性の基準。よって以下の主要10社は基本的にどの火災保険会社を利用しても、安全性は高いといえるでしょう。

保険会社 ソルベンシーマージン比率 評価
楽天損保 1110.2%(2021年度時点) A
日新火災海上保険 1230.4%(2022年9月時点) AA+
東京海上日動 843.3%(2022年3月時点) AA+
ソニー損保 813.3%(2022年3月時点)
損保ジャパン 535.4%(2022年9月時点) AA+
ジェイアイ傷害火災 2072.3%(2021年度時点) A
セゾン自動車火災 492.5%(2021年度時点) AA-
三井住友海上火災保険 670.7%(2022年9月時点) AA+
あいおいニッセイ同和損保 789.9%(2022年9月時点) AA+
セコム損保 868.1%(2021年度時点) AA+

なお、火災保険会社を比較する際は格付けとソルベンシーマージン比率、また以下で紹介するような苦情件数などをバランスよくチェックすることをおすすめします。

たとえば、この中ではソニー損保は格付けの取得はしていませんが、ソルベンシーマージン比率は高く、健全性は十二分に高いと言えます。

 

参考元:ソニー損保

入ってはいけない?ワーストの火災保険会社の具体例

ワースト火災保険会社について、具体例をご紹介します。

不払い・支払い拒否の苦情件数が多い火災保険会社の例

日本損害保険協会は、お客様の声、いわゆる苦情の件数を公開しています。

不払い・支払い拒否の苦情件数が多い火災保険会社の例1

たとえば日新火災海上保険株式会社は538件、楽天損害保険株式会社は640件、SBI損害保険株式会社は2623件。(いずれも2021年度第4四半期の件数)

(画像引用元:日本損害保険協会

ソルベンシーマージン比率が低い保険会社

主要火災保険会社の中で3ソルベンシーマージン比率が低い会社は、セゾン自動車火災、損保ジャパン、三井住友海上火災保険でした。

ソルベンシーマージン比率が低い保険会社1

ソルベンシーマージン比率はセゾン自動車火災は492.5%(2021年度時点)、損保ジャパンは535.4%(2022年9月時点)、三井住友海上火災保険は670.7%(2022年9月時点)です(ロゴ画像は各公式サイトより引用)

先述した通り、ソルベンシーマージン比率が低いと、大規模な自然災害の際に保険料が支払われなくなることも。とはいえ、200%あれば安全性に問題はなく、上で挙げた三社が危険というわけではありません。

監修者・四方裕伸(ゆうりFP株式会社):ここ12年、タイの大洪水から東日本大震災、令和元年台風などが立て続けに起き、年間の保険金支払額が保険料を上回っている年が続いています。契約総額の多い保険会社ほどソルベンシーマージン比率が近年下がっている傾向にあります。保険会社の安全性もチェックする必要があるでしょう。

格付け評価が低い保険会社

参考元:日本格付研究所による評価が低い保険会社は楽天損害保険、大同火災海上保険、朝日生命保険です。

格付け評価が低い保険会社1

日本格付研究所の格付けでは、楽天損保は#A、大同火災海上保険はA-、朝日生命保険はA-です(ロゴ画像は各公式サイトより引用)

参考元:日本格付研究所

火災保険に加入する際の事前のチェックポイント

火災保険に加入時のチェックポイントは以下の通り。

・ 「火災以外の被害」も発生時に対象となるか
・火災保険の申請期限はいつか

「火災以外の被害」も発生時に対象となるか

先述した通り、火災保険は、下記のような被害も対象です。

・風災
・ひょう災
・雪災
・給水や排水設備の破損による被害
・盗難による外部からの窓ガラスやドアの破損

上記のほかにも、契約によっては「子どもが自分の家の窓ガラスを割ってしまった」という偶発的な破損も対象となるケースも。「まさか」と思うようなことも起こり得るものと想定して保険を選ぶと安心です。

火災保険の申請期限はいつか

火災保険の申請期限は、法律では「被害が発生してから3年以内」です。保険会社によっては、独自の申請期限を設けている場合もありますが、基本的には3年以内と覚えておくといいでしょう。とはいえ、被害が起きたらできるだけ早く保険会社や担当者に連絡をし、申請手続きを行いましょう。

監修者・四方裕伸(ゆうりFP株式会社):気が付いたら放置せずに直ぐに自ら保険代理店に連絡することが、支払ってもらえるための大前提です。但し、屋根の破損など3年以上たってから気が付くこともございます。その場合でも必ず保険代理店に連絡して対象になるか確認しましょう。

まとめ

火災保険は、災害時の備えとしても大切ですが、日常の中で発生するちょっとした被害を補填するのにも有効です。実際に、筆者は子どもが壊した隣家の植木鉢を、保険で弁償した経験があります。植木鉢だけで済んだとは言え、弁償額は約10,000円だったため、保険が適用されて安心でした。

火災保険は、保険料の安さだけでなく、補償内容も確認した上で契約しましょう。

監修者・四方裕伸(ゆうりFP株式会社):保険金の支払いを渋られることを防ぐ方法は、事故時の写真と適正な修理見積を自分で用意し、早め早めの連絡と対応に尽きます。保険会社の保険金の支払いを渋ることについて確認する方法は、ネットの口コミなどがございますが、投稿者の知識不足による勘違いも多く含まれるため、注意が必要です。機会があればその保険会社の保険金支払い部署の考え方を確認しておくことで、納得に近づけると思います。

監修日:2023年6月13日

四方裕伸/ゆうりFP株式会社・ファナンシャルプランナー
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