今の時期は、猛暑による“熱中症”が心配されますが、実は「スマホ」も例外ではありません。最近ネット上では、“暑さのせいでスマホのバッテリーが膨張する”といったニュースが話題に。そして膨張することで、動作に遅れが生じたり、最悪の場合スマホが爆発してしまう可能性もあるようです。かなり危険な“スマホ熱”ですが、膨張した時の正しい対処法はあるのでしょうか? 今回は、スマホに詳しい「スマホステーション」の担当者に話を伺いました。
スマホの熱を逃すポイントは?
――スマホが熱を持つと、なぜバッテリーが膨張してしまうのでしょうか?
担当者:これは現在スマホに使用されているバッテリーが持つ特性となります。長期間使用していることで内部劣化(酸化)が起きたり、急激な温度上昇によって内部が酸化し、ガスが発生したりします。バッテリー事態はしっかりと包装されているので、可燃性のガスが外に逃げることはほとんどありませんが、バッテリー事態が膨張してしまう原因はこの現象となります。
もう少し詳しく説明すると、一般的にスマホのバッテリーには「リチウム電池」(リチウムイオンポリマー二次電池)が使われていますが、このリチウム電池は多くの電力を蓄電・放電できる反面、温度や大きな衝撃(落下や圧力)によって膨張しやすく、ひどい時は発火・発煙などのエネルギーも大きくなってしまうのです。
――夏場では、特にどのような場所で“スマホ熱”の危険性が高くなるのでしょうか?
担当者:基本的に気温が35℃以上の場所は危険です。さらに直射日光を浴びている状態だと、短時間でスマホが高温になってしまうので、動作に支障が出てしまいます。各メーカーでは動作温度と保管温度をそれぞれ公開しているので、チェックすることをオススメします。例えばiPhoneの場合、使用推奨温度は0℃~35℃、保管温度は-20℃~45℃となります。(※保管温度は、スマホを動作をさせずに置いている時の推奨温度です)
●iPhoneやiPadの動作温度と温度管理については→こちら
膨張したバッテリーは元に戻らない!?
――スマホは大体何度くらいになるとバッテリーが膨張し始めるのでしょうか?
担当者:本体内部が45℃を超えると劣化が始まり、ガスが発生し始めると言われています。手で持った状態で体温よりもかなり熱いと感じる場合は、既に黄色信号と考えた方が良いでしょう。
――一度膨張したバッテリーは、元に戻ることはないのでしょうか?
担当者:残念ながら膨張したり、劣化したバッテリーを元に戻すことはできません。バッテリー交換を行う必要があります。
机の上に数分置いておくだけでも効果あり!?
――「スマホの熱」を逃がすための対処法やポイントをお聞かせください。
担当者:各種スマートフォンのほとんどは、背面や側面から熱を逃がす構造になっていると思います。なので大きめのケースをつけていたりすると、気が付きにくい場合があるので気をつけてください。
実際にスマホステーションでも、お客様から「最近バッテリー持ちが悪くて…」とご相談を受けることもあり、スマホケースを外してもらうと、“既にバッテリーが膨張していた”という事例も結構あります。
そういったことを防ぐために、画面に手を置いても熱を感じる場合は一度ケースから外し、操作をしないで机の上に数分置いておくだけでも放熱することが可能です。ぜひ参考にしてみてください。
冷蔵庫や保冷剤の使用はNG!
――「スマホの熱」を逃がすうえでの「注意点」をお聞かせください。
担当者:「熱いなら冷やせばいい」という感覚から、冷蔵庫に入れたり保冷剤をあてがうなどの行為は非常に危険です。なぜなら急激に冷やされた場合、内部結露(水没)を発生させる恐れがあるためです。
単体を冷やす方法としては、やはりケースを外して熱伝導の良い場所に放置しておくことがベストだと思います。特に“鉄製の机”や“ステンレス製のキッチン台”(※キッチン回りは水分に十分気をつける)などに高温状態のスマホを2~3分放置するだけでも、熱はぐっと下がります。
また外出中に高温になってしまった場合は、クーラーの効いた室内に入って同じように本体の熱を下げる方法が良いでしょう。
――スマホが熱くならないようにするためのアドバイスがあればお聞かせください。
担当者:近年の夏は猛暑日(35℃以上)が連日続いたりするので、屋外でのスマホ使用は極力短時間で済ませることをオススメします。また炎天下の車内など、温度上昇が考えられる場所での放置も危険なので、避けた方が良いと思います。
たとえ購入したばかりのスマホだったとしても、環境温度によって一気にバッテリーが膨張し、「交換しないといけない」というケースもよくあることなので、ご注意ください。
取材協力:スマホステーション
まとめ
35℃以上の場所で使用すると、スマホが熱くなってバッテリーの膨張に繋がることが分かりましたが、仕事などの事情で暑い場所に居続けなければいけないこともあると思います。そういう場合は、なるべくスマホを操作しない方が良いかもしれません。
また、いち早く“スマホの熱”に気づくことも大切です。発火によってケガをする可能性もあるため、暑い場所ではあらかじめスマホケースを外しておいたり、こまめにスマホに触れて体温よりも熱いか確かめたりしましょう。
そして今回最も覚えておきたいポイントは、熱の逃がし方。もし冷蔵庫や保冷剤の活用を考えていた人は、故障の原因になるため絶対NGです。取材では“熱伝導の良い場所”で放置することをオススメしていましたが、外にいる場合は一旦クーラーのきいた場所へ移動するか、近くの修理店へ相談してみるのも1つの手かもしれません。
自分自身の熱中症にも気をつけながら、スマホも熱中症にならないよう、しっかりと対策をおこなってくださいね。
●取材に協力して頂いたiPhoneやスマホの修理をおこなう「スマホステーション」は→こちら
※サムネイル画像(Image:Thongchai S / Shutterstock.com)