以前はよく見かけた「ケータイ本体1円」の広告ですが、実は2024年以降このような広告表記は禁止されています。
ところが現在、1円iPhone(月額1円なので、実質12円)の広告が見受けられています。規制をかいくぐった新1円iPhoneは、どのような仕組みで成り立っているのでしょうか。iPhone 15が1円で販売できている仕組みと、購入してもいい人について解説していきますので、ぜひご覧ください。
そもそも、スマホ価格の新規制とは
2023年12月27日から、新ルールとして1円スマホを規制する法律が施行されています。この法律を具体的に図を用いて解説していきましょう。
2023年までは、たとえば端末の購入価格が10万円のスマホを販売する場合、2万円まで(税込2万2千円まで)の割引が認められていました。
さらに、スマホの本体代も無制限に値引きを行うことができたので、スマホの本体代を大幅に値引きした上で、割引が認められている税込2万2千円も割り引くことで、1円スマホを実現してきました。
しかしながら2024年以降は、端末の購入価格割引もスマホの本体代も合わせて、4万円まで(税込み4万4千円まで)の割引しか認められなくなりました。
この割引価格は段階制で、たとえば端末価格が4万円の場合は税込2万2千円の上限まで、端末価格が8万円以上の場合は税込4万4千円の上限まで、つまり半額までの割引規制に設定されました。ところが今回ご紹介するように、機種とプランを限定して新1円iPhoneの販売が告知されています。
実はお得ではない!? 新1円iPhoneの特徴
まず、この新規制をかいくぐった新1円iPhoneは、以下のような特徴を持っています。
・現在のところソフトバンクの新得するサポート(バリュー)でのみ利用可能
・利用対象となるのは、新規契約もしくはMNPに該当する5歳~22歳
・月額1円でiPhoneを利用できるのは12カ月のみで、13カ月目には本体を返却する必要あり
・返却しない場合は13カ月~48カ月目は3,359円/月の支払いが必要になる(合計120,924円税込)
・通信料は7,425円/月(12カ月で89,100円税込)※通信料は筆者が調査した店舗の場合です(店舗によって選択できるプランが異なります)
この上記の条件のなかで注目しておきたいポイントが、今回の新1円iPhone対象となっているiPhone 15(128G)の本体価格です。ソフトバンクではiPhone 15(128G)の本体価格を142,920円に設定し、ヨドバシカメラ値引きとして21,984円をマイナスした120,936円と表記しています。しかしながら、AppleストアでiPhone 15(128G)を購入した場合は、そもそもの価格が124,800円税込です。
つまり、1円という本体価格につられてしまっても総支払額は4,000円弱しかお得にならず、割高な通信料に鑑みると、決してお得とは言い切れません。Appleストアの36回無利子分割払いの方がよっぽどお得といえるでしょう。
Appleストアであれば、iPhone 15 Plusも139,800円から購入可能で、ソフトバンクのiPhone 15よりも定価設定がかなりお得です。無理に1円iPhoneを購入するよりも、現在持っているiPhoneからSIMカードを抜くなどして、「4年契約」や「1年後に機種返却」というような縛りなく利用することを基本的にはオススメいたします。
本体代だけではなく、通信費も割高設定
この新1円iPhoneを契約するために、使わなくてはいけないソフトバンクの新得するサポート(バリュー)の場合、通信料は7,425円/月(12カ月で89,100円税込)です。これは格安SIMが台頭している世の中においてはかなり割高な設定価格といえます。
明確に「〇カ月契約してください」、「1年使ってください」という縛りはありませんが、この通信費はまったくお得ではありませんので、ご注意ください。
13カ月目以降もiPhone 15(128GB)の利用を継続する場合、この新1円iPhoneを契約するメリットはまったくないといえます。
なぜ、2024年も1円/月のスマホが販売できているの?
ではこの新規制のなかで、なぜ新1円iPhoneが販売できているのでしょうか。
実はこの表にあるように、iPhoneの価格は容量ごとに異なってきます。今回の事例では、ソフトバンクのiPhone 15(128GB)のみが新1円iPhoneの対象となっているのですが、これは標準価格と予想買取価格の差が、ソフトバンクのiPhone 15(128GB)のみ44,000円以内となるからなのです。
これが冒頭にご紹介した2024年以降に認められた、税込4万4千円までの範囲内に該当するので、新1円iPhoneが実現しているのです。新1円iPhoneは1年後に機種を返却する前提となっていますので、1年後の予想買取価格を参考にすることで、この割引が実現しています。
2年後の機種返却でも、容量の多いiPhoneでも新1円iPhoneプランが実現できないのは、この表のような制約があるからなのです。
もっと安いスマホでも1円にはならないの?
先ほどの表を見て、「ソフトバンクのiPhone 15(128GB)よりももっと安いスマホなら、新1円スマホとして販売できるのでは?」と考えた方もいらっしゃると思います。しかし、安価なスマホは1年後の予想買取価格も安くなってしまう上に、もともとが安価であると値引きが22,000円税込までしかできません。
また、高価格帯のスマホの場合は割引率が「1円」というインパクトのある数字に設定できず、集客効果があまり見込めません。従って、現在ではソフトバンクの新得するサポート(バリュー)で、iPhone 15(128GB)に限って、新1円iPhoneが実現しています。
新1円iPhoneをお得に利用できる人は?
新1円iPhoneを購入することでお得感を得られる人は、どのような人でしょうか。
まず、毎年iPhoneを買い替えている人や、データ移行などもまったく苦に感じないという人には、問題なく利用いただけます。一年ごとに本体も必ず売却しているという人は、売却の手間がないのでラクです。しかし、傷をつけてしまった場合は、22,000円の支払いが必要になるので注意してください。
通信プランの乗り換えに関しても、知識がある人であれば挑戦してみてもいいでしょう。もしくは5歳~22歳の人であれば、新得するサポート(バリュー)ではなく、スマホデビュープラスという通信プランを利用することができるので、月々3,000円程度の通信料で、新1円iPhoneを利用することが可能です。
しかしあくまで1年後に機種を返却しない限りはお得なプランとは言えないので、この条件に当てはまらない方は購入を控えた方がよさそうです。
若年層や新規層の取り込みを狙った新1円iPhone。法の規制を潜り抜けた1円スマホではありますが、その実態は決してお得とはいえませんので、ご注意ください。
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