言わずと知れたオンライン百科事典「Wikipedia」。極めて膨大な投稿数が存在しており、簡単な情報収集ならWikipediaで十分。複雑で専門性が高い調べものでも、調査の足がかりにはなり得ます。
そんなWikipediaは、「ウィキペディアン」と呼ばれるWikipediaの編集に携わるボランティアによって編集・執筆が行われていることをご存じでしょうか。運営がボランティアだとするならば、編集・執筆の動機や、一名のボランティアが毎月どれくらいの編集をしているのか気になりますよね。
そこで今回はWikipedaを愛用している方でも、意外と知らないWikipediaの編集・執筆を行う「ウィキペディアン」とはどんな人たちなのかご紹介します。
ウィキペディアンは日本に何人いるの?
先述した通り、ウィキペディアンは「Wikipediaの編集・執筆を行うボランティア」のこと。つまり、完全に無報酬でページの編集をしていることになります。なおWikipediaの登録者数は221万5185人(2024年6月30日現在)。ただしアクティブな「活動中の登録者数」は1万2,802人(2024年6月30日現在)。「単発での登録や編集」に留まらず積極的に編集をしている方は、大まかに1万3,000人前後と言えるでしょう。
ウィキペディアンはなぜWikipediaを編集するのか
ウィキペディアンの活動理由は人によってさまざまですが、共通しているのは「やりがいの大きさ」。「自分の知っていることを、ウィキペディアに反映して多くの人に知ってもらいたい」「好きなコンテンツの情報を正しく伝えたい」といったことがモチベーションとなっているようです。
またWikipediaは登録さえすれば基本的に誰でも編集が可能です。
そのため自分の好きなトピックについて、他の人の編集履歴をチェックし、誤情報を正したり、加筆をしたりしてより情報を充実させることにやりがいを感じる人もいます。こうした方は執筆そのものというよりは、いわばページの方針を定めてそれに向かってブラッシュアップする工程そのものが「趣味」や「やりがい」になっていると言えるかもしれません。
上位のウィキペディアンは月に何回くらい編集してる?
Wikipediaでは編集回数の多いウィキペディアンを毎月一覧にして発表しています。なお、上位10位についてはIPアドレスも公開。上位ユーザーについては個別の利用者ページがあり、自己紹介や新規作成、大幅編集したページもチェックできるようになっています。
たとえば2024年5月のウィキペディアンの記録を見てみると、上位のユーザーは1カ月で3,407回編集。2位が3,233回、3位が2,734回となっています。土日祝の休み無しで1日100回ほど編集しなくては、月に3000回の編集は実現できないため驚異的な編集回数と言えるのではないでしょうか。
上位のウィキペディアンの編集履歴などを見てみると、ジャンルにこだわって編集している人も多く「書いたり、編集しているうちにいつの間にか上位になった」という印象を受けるウィキペディアンの方もいらっしゃいます。
また一回の編集には「外部リンクの追加、削除」といった細かな工程もカウントされます。この外部リンクは本当に出典として信用できるのか、といった細かな点をチェックして編集を繰り返す気配りに長けた方が結果として上位のウィキペディアンとして日本語版Wikipediaに強く貢献しているとも言えそうです。
ウィキペディアンが書いた記事は信頼できるの?
ウィキペディアンが書いた記事の信頼性については、長年議論の対象となっています。たとえば「大学のレポートを、Wikipediaで調べた情報を基にまとめてもいいのか」というのはよく教育関連で話題となるトピックです。論文や本など原典に比べると、Wikipediaは信頼性が低いという一面は確かにあるでしょう。
またWikipediaは登録さえすれば誰でもウィキペディアンになれるため、誤情報の拡散の基になったり、荒らしの対象となることも多いです。しかし、誤情報をめぐって別のウィキペディアンが編集をしなおすことも。
こちらはゲーム「ファイナルファンタジーVII」の変更履歴のページですが、誤情報をめぐり何度か編集しなおされている様子が分かります。こうした編集を通じて「ファイナルファンタジーVII」のWIkipediaは2024年6月現在、48個の脚注が情報ソースとして付けられたうえで公開されています。
なお「ファイナルファンタジーVII」のWikipediaは最古の編集記録が、2004年まで遡ります。20年間に渡って多数の編集者によって執筆・編集され続けてきたページだと言えます。
つまり誤情報がある可能性は否めないため、レポートや書籍の執筆の際の一次出典としては好ましくないものの、調査の手掛かりとしては十分に有用で価値あるページに仕上がっていると言えそうです。
ウィキペディアンがバイアスのかかった情報を執筆・編集してしまう可能性はないの?
Wikipediaへの懸念点としては、情報そのものの信頼性だけでなく、ウィキペディアンが自分自身や自分の経営する会社やお店などに関する情報を執筆・編集することで「バイアスのかかった情報」を公開してしまうことも挙げられます。しかし、ウィキペディアンになったからといって「自分自身に関するWikipediaページ」を自由に作成・編集することは推奨されていません。
Wikipediaの原則は「中立・公正」です。自分について書くとどうしても主観が入ってしまいがちです。ウィキペディアンはあくまで自分の専門分野や興味のある分野の記事を編集する役割を担っているため、宣伝のための自分のページは削除されてしまうこともあります。
また、先にも述べた通り、国内には約1万3000名のウィキペディアンが存在し、上位の方は1日100回ほどの編集を行っていると見られます。そのため、過度にバイアスのかかった情報などは他のウィキペディアンによって随時訂正されるケースが多いです。こうした工程を通じて「荒らし」や「誤情報」は随時検証され、修正が行われています。
もっとも、約1万3000名(国内)のウィキペディアンが、記事の総数に対して十分かどうかは議論の余地があるかもしれません。2024年6月30日時点で、Wikipediaには142万0576本の記事が公開されています。ウィキペディアンによる編集や執筆が行き届いていない記事が一本も存在しないとは言い切れないでしょう。
そのため、もし自分が詳しいトピックで「このWikipediaの情報は十分ではないな」と感じる記事があれば、ぜひWikipediaに登録して編集してみることをおすすめします。