「ググる」という言葉がある通り、分からないことや言葉を「Google検索で調べる」のは日常の一部ですよね。しかし知りたい情報があっても「答えの書いてあるサイトが上位表示されていない」「検索面に広告が多すぎて目的の情報が探しづらい」「上位サイトの品質が低い」など検索の品質に不満を持つ方も多いのでは?
では「Google検索の質は本当に悪くなっている」のでしょうか?今回は昨今のGoogle検索の「質」についてご紹介します。
本当にGoogle検索の質は悪くなっているのか?
Google検索の質が下がっていると指摘されがちな主な理由は、端的に言えば「ユーザーが必要な情報を見つけるのに時間がかかるようになり、検索体験が悪化していると感じることが多い」ためです。
ユーザーが必要な情報を見つけるのに時間がかかるようになっている主な要因をいくつかご紹介します。
個人ブログはほぼGoogle検索で上位表示されない現状
Googleで何かを検索する際「その製品やサービスを実際に利用した個人ユーザーの網羅的かつ品質が高いレビューを読みたい」と考えている方も多いのではないでしょうか。
かつてはその検索ニーズに対する答えを「個人ブログ」が担っていましたが、2024年現在は個人ブログはほぼGoogle検索で上位表示されません。
筆者が調べた限り、たとえば著書があり、Wikipediaにも個人名で掲載されているレベルの有名ブロガーの方の個人ブログであっても2023年9月以降にアクセス数が半減以下へと下降していると見られます。
またその他の有名なブロガーの個人ブログでも、2020年頃を境にアクセス数を落とすなど低空飛行が続いているケースが多いです。
代わりに上位表示されているのはほぼ例外なく「企業ドメイン」であり、個人のウェブサイトはかつてないほど「検索で見つけづらい」状態と化しています。
2024年3月以降、ニュースや出版社が大幅下降し「Eコマース」が上昇
アクセスの下降が見られるのは「個人」だけではありません。専門性の高いニュースサイトや出版社などのパブリッシャーも極めて大きく下降しており、Google検索で見つけづらい存在になりつつあります。
SEO(検索エンジン最適化)やインバウンドマーケティングを専門とする海外企業「Moz」の調査では、2024年3月以降、ニュースサイトやパブリッシャー(出版社)のビジビリティが大幅下降。代わりにEコマースやショッピングサイトが大幅上昇したことが明らかになっています。
ビジビリティとは一言で言えば「視認性」。分かりやすく言えば「検索でのシェア」と考えると良いでしょう。
ニュースサイトやパブリッシャーが検索で占める割合は「-461ポイント」と、最大の下げ幅です。たとえば同調査でアダルト関連は「-22ポイント」。ファイナンス関連は「-40ポイント」。ニュースサイトの下降の大きさが明らかに際立っており、狙い撃ちに近い状態です。
このことは、たとえばニュース性が高いような新製品の情報を検索した際に「ニュースサイト」が表示されなくなり、代わりにAmazonなどECサイトが上位に出ることを示しています。
「ニュースサイトを落とし、ECサイトを上げる」ことになぜここまでGoogleが固執しているのか真意は明らかではありませんが、検索上から専門性の高い報道やレビューを「排除」している状況に近いです。つまり「Google検索の質は悪くなっている」と批判されても、仕方のないデータではないでしょうか。
海外では「Reddit」が急成長
アメリカにおける「5ch(旧:2ch)」のような存在として知られている「Reddit」は、海外で大きくGoogle検索での存在感を高めています。健康から金融、アダルト、エンタメまで極めて多彩な検索ワードで、Redditの投稿がかなり頻繁に上位表示されています。
ではなぜ、Redditは検索で上位表示される傾向にあるのでしょうか。一部では、GoogleがAIのトレーニングに「Reddit」の投稿を用いるための提携(※締結済み)に伴うある種の検索上の優遇措置ではないかという推測すらあります。
ちなみに筆者自身も特に海外のニュースを見たり、考察する際には、Redditを参考にすることがよくあります。非常に面白いサイトであることは言うまでもありません。一方で「Googleで正確な情報を得たいときにRedditが上位表示される」としたら、やや疑問を感じる部分もあります。「ニュースや正確な製品レビューを知りたいときに5chのスレッドが上位表示されている」状況に近いためです。
本来は正確性が求められるトピックスであるにも関わらず、匿名の多数の書き込みが参照されてしまうリスクがあり、なおかつそれをGoogleがAIのトレーニングに使うと考えると疑問を感じる部分が多々あります。
「関連する質問」枠および一部の検索結果の品質が安定していない
Google検索した際に「関連する質問」枠が表示された経験がある方は多いはず。その枠内に「自分が知りたい内容」が含まれたら、より検索の答えに早く辿り着けるため便利な機能です。
ただし表示内容の品質は、非常に不安定だと見受けられます。
たとえば筆者が「ノートパソコン おすすめ」と検索したところ、関連する質問枠には「世界で一番性能がいいパソコンは?」という質問文が表示されています。その答えは「富岳」ですが、これはスーパーコンピューターでありノートパソコンではありません。知りたいこととかなり内容がずれていますね。
なお、余談ですが「世界で一番性能が良いパソコンは?」と会話文の形でも検索してみました。「関連する質問」と「検索」では表示内容が違うか確かめることが目的です。すると、Googleの検索結果(強調スニペット枠)は2017年に公開された大手メディアの記事を参考に答えを返してきました。Googleの答えは「中国の「Sunway TaihuLight(神威・太湖之光)」」とのことでしたが、実際には近年、中国のスパコンは計算速度ランキングで上位に姿を見せていません(※水面下の稼働テストでは上位であるとの噂はあり)。
おそらく上の回答が戻ってきたのは、Googleが「信頼性が高いと思われる企業ドメイン」を参照しており、その記事が新しいか古いかを判定しきれていないためでしょう。
検索意図と合わない「関連する質問」が表示されたり、そもそも検索上位の内容が事実と異なるものであるといったことがしばしば目立ちます。この点は難点であると思われます。
Google検索へのAI導入は賛否両論
Google検索には段階的に、生成AIの導入も進んでいます。Google検索の生成AIは「AI Overview」と呼ばれています。
しかし、AI Overviewの導入はかなり賛否両論。その要因の1つは「回答品質」にあります。たとえば、前述の通り、GoogleのAIはRedditの投稿をベースとした機械学習をスタートさせています。そして2024年5月頃には「チーズがうまくピザにくっつかない」という検索に対し、AI Overviewが「無害な接着剤を混ぜると良い」という回答を返したことが一部で話題になっています。ピザに接着剤を混ぜるというジョークは、Redditに過去に投稿された文言の1つです。
GoogleのAIの不正確さは、これまでにも様々なところで問題視されています。2023年にはGoogleのAIの回答の誤りが市場の反発を招き、同社が時価総額13兆円を失う事態も発生しています。
・専門性の高い報道、製品レビューなどを扱うニュースサイトが「排除」された状態に近しい
・個人ブログ、個人のウェブサイトも「排除」に近しい
・Redditの学習をベースとしたAIが、Google検索上で誤った回答を提供している
・「関連する質問」枠の品質は必ずしも高くない
と総じて、Google検索の品質には直近で様々な問題点が見られるのは確かです。こうした問題点に対して、Googleはどのように検索アルゴリズムを調整していくのか、今後の動きも注目されます。
※サムネイル画像(Image:Tada Images / Shutterstock.com)