New

意外と知らないイーロン・マスクが手掛ける衛星「スターリンク」は何が画期的なのか?

インターネット環境が整っていない山間部や離島などの地域や、災害時に通信が途絶えてしまう状況を解消してくれる可能性を秘めている衛星インターネットアクセスサービス。その代表格がイーロン・マスク氏率いる「スペースX」が手がける「Starlink(スターリンク)」。

インターネット環境が整っていない地域や、戦時下や災害時に通信が途絶えてしまう地域に対してもインターネットサービスを提供できるのが最も革新的な点と言えるでしょう。実際2022年にはロシアから軍事侵攻を受け、通信インフラに甚大な被害が出たウクライナに無償でサービスを提供して話題になりました。そんなスターリンクの革新性を今回はご紹介します。

スターリンクの仕組み

Starlinkは低軌道に配置された小型人工衛星を用いた衛星インターネットであり、地上・衛星間のデータ送受信が行われています。

スターリンクの仕組み1

衛星は低軌道に配置されている点が大きなポイントであり、衛星インターネットサービスとしては高速かつ低遅延の通信が実現されています。また被災地や戦地であっても、地上側で使うスターリンクの機器さえあればインターネットができるようになります。

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻では「ウクライナ国内の通信インフラ」として活躍

スターリンクの最も有名な活用例は、ウクライナ国内におけるものでしょう。まず2022年のロシアによるウクライナへの侵攻時、ウクライナ国内の通信インフラは壊滅的なダメージを受けました。

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻では「ウクライナ国内の通信インフラ」として活躍1

(画像は「イーロン・マスク(@elonmusk)」公式Xより引用)

そこでイーロン・マスク氏は、ミハイロ・フェドロフ氏(副首相兼デジタル変革相)の要請に応える形で、ウクライナ政府に対してスターリンクの通信インフラを提供。ウクライナ国内での通信が維持可能となる支援を行いました。2022年のロシアによる侵攻以来、ウクライナは推定4万2000台のスターリンク端末をインターネット通信のために使用していると言われています。

Starlink(スターリンク)の衛星通信は、ウクライナの従来の通信インフラが破壊された状況でも重要な役割を果たし、民間人の情報伝達や救援活動にも活用されました。この事例は、同サービスの持つ災害時や戦時下の通信バックアップとしての価値を示していると言えるでしょう。

もっとも戦時下において、民間企業が「自社製品を戦争行為に加担する形で提供する」ことへの可否は別の論点にはなり得ます。なお実際にマスク氏は、ウクライナからの「スターリンクをクリミア半島で使用したい」という要請は拒否しています。

2023年からは「夏フェスで通信が繋がらない問題」の解決策として重用される

2023年からは「夏フェスで通信が繋がらない問題」の解決策として重用される1

(画像は「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」公式サイトより引用)

スターリンクは2023年頃から「夏フェスでスマホが繋がらなくなり、会場での電子チケットの表示やキャッシュレス決済ができない」問題の解決策として、取り入れられるケースがあります。その代表例がROCK IN JAPAN FESTIVALでの導入例です。

そもそも夏フェスは限定された範囲に極めて多数の客が集うため、会場内及び周辺エリアではモバイル通信が繋がりづらくなる事例が散見されがちです。

・キャッシュレス決済ができない
・電子チケットの表示や顔認証ができない
・緊急時の通報などの連絡にも支障が出る

など会場内での通信品質の低さは、イベント運営のネックになりがちです。そこで注目されたのがスターリンクです。

まずスターリンクのアンテナは可搬性が高く、簡単に持ち運べるのが特徴。そのため混雑しやすい入場口や物販エリア、飲食エリアなどに集中してアンテナを設置したり、状況に応じて予備のアンテナを持ち運ぶなどの対策が可能となります。よって入場口では電子チケットや顔認証のスムーズ化ができ、物販エリアや飲食エリアではスマホ決済のスムーズ化が実現されるようになりました。

運営側の連絡もスムーズに

エリアに合わせてアクセスポイントの設置台数を変えることで、データ利用効率の最大化と同時に通信の低速化の防止となり、運営側の連絡もよりスムーズになります。さらにステージなどの広範囲を安定してカバーする必要のあるエリアでは、音声通話時の品質も確保するなど、よりスムーズでキメ細かな運営体制の構築が実現可能となりました。

Starlink(スターリンク)の主な画期的なポイント

Starlink(スターリンク)が画期的だと言われているポイントをあらためて整理します。

メリット1. 場所に左右されないインターネット環境

Starlink(スターリンク)の大きなメリットは場所に左右されないインターネット環境。衛星通信により、これまでの通信サービスではカバーしきれなかった山奥や辺境の地域でも、ネットを使えるようになります。

メリット2. 自然災害などへの通信インフラの備えとしても最適

先述した通り、Starlink(スターリンク)は自然災害や戦時下における通信インフラの備えとしても期待されています。災害時や戦時下では通信回線が寸断されることがあり、被災地ではネット環境が使えないことも起こります。しかし衛星通信は、地上の通信インフラが破壊されている状況でも、スターリンク端末があれば独立して機能します。

メリット2. 自然災害などへの通信インフラの備えとしても最1

なお国内では、Starlink(スターリンク)はKDDIやソフトバンク、NTTドコモが提携をスタート。基地局のバックアップとしての衛星利用や、利用者が衛星インターネットをアンテナなしでスマホから直接通信できる仕組みの整備を進めています。将来的にはスターリンク端末なしで「スマホと衛星が直接通信する」時代がやってくるかもしれません。

メリット3. 衛星インターネットとしては非常に高速な通信速度

これまで述べてきた通り、Starlink(スターリンク)は衛星インターネットとしては非常に高速な通信速度が提供されています。

メリット2. 自然災害などへの通信インフラの備えとしても最2

(画像は「Starlink」公式サイトより引用)

スターリンクの衛星は従来の衛星より低軌道を周回していることが特長。これにより衛星インターネットながら低遅延と高速な通信が実現されており、年々、遅延のさらなる改善も進んでいます。米国ではピークの時間帯に「48.5ミリ秒」→「33ミリ秒」へと、遅延の中央値が30%以上削減されています。ちなみに速度としては下り最大 200Mbpsほどが期待されます。

光回線のような速度や低遅延を期待すると、その通信品質には及ばない点も多いものの「災害時の備え」や「光回線を導入していない自宅やマンションのベランダに置くもの」としては十分な品質ではないでしょうか。

メリット4. 簡易な設置と操作方法

初期設定やアンテナの設置はユーザー自身が行うことができ、設置場所さえ確保できていれば専門知識は不要です。設置にかかる時間も10分から20分程度で済みます。「場所」さえ確保すれば、設定が極めて簡単なのはStarlink(スターリンク)のメリットです。

「固定回線を使わずWi-Fiエリアを構築する」手法としてスターリンクは定着しそう

Starlink(スターリンク)は低軌道衛星を利用するため、通信に必要なのはアンテナのみ。世界中のどこでもWi-Fiエリアを構築でき、夏フェス会場から山奥、戦時下や災害時の国まで端末さえあれば簡単に通信が実現できます。

そのため、これまで通信インフラの整備が遅れていた地域でも、手軽にWi-Fiエリアを構築できるように。これにより新たな通信インフラの構築手法として、幅広い分野での活用が期待されています。Starlink(スターリンク)は、固定回線に依存しないWi-Fiエリア構築の新たな選択肢として、今後ますます定着していくと予想されます。

※サムネイル画像(Image:umitc / Shutterstock.com

オトナライフ編集部
iPhone・Android・SNS・パソコン関連・キャッシュレス、QRコード決済など、さまざまな情報を独自の視点や切り口で発信するニュースサイト
X/Twitter:@otonalife
YouTube:OTONALIFE Ch

iPhone/Androidスマホやキャッシュレス決済、SNS、アプリに関する情報サイト[オトナライフ]

意外と知らないイーロン・マスクが手掛ける衛星「スターリンク」は何が画期的なのか?のページです。オトナライフは、【スキル・ビジネスネット回線イーロン・マスクインターネットStarlink】の最新ニュースをいち早くお届けします。