CDやレーザーディスクなどに代表される「光ディスク」が1980年代に広く流通するようになってから、40年ほどが経過しました。そして1980年代に光ディスクが登場した当初、VHSテープなどとは異なり、「物理的に保存しやすく、永久に見返せる」と感じた方も多かったのではないでしょうか。
しかし近年、製造初期のCDやレーザーディスクが酸化するなどして「寿命」を迎えるケースが増加しています。ここで気になるのが、普及から四半世紀が経過した「DVD」です。2000年のPlayStation 2の登場をきっかけに普及したDVDは、2024年現在でも視聴可能なのでしょうか。また、劣化が進んだ場合、どのように修復すればよいのでしょうか。
DVDの寿命は意外と短い?
結論から述べると、DVDの明確な寿命は「判明していない」のが現状です。たとえば、財団法人デジタルコンテンツ協会の「長期保存のための光ディスク媒体の開発に関するフィージビリティスタディ 報告書」では、DVDの寿命は保存条件次第で100年以上ともされていますが、保存環境によっては15~20年で寿命を迎えることもあるとされています。
一般的には、ケースに入れて直射日光を避け、高温多湿にならない場所で保管すれば、20年程度は持つとされています。さらに長期保存を目指す場合には、通常のディスクではなく「保管用」のディスクを使用することが推奨されます。
DVDの劣化は「ディスクそのもの」に起因
DVDに記録された映像データそのものは劣化しませんが、「ディスクそのもの」は劣化し、寿命に影響します。
DVDの劣化は、主に物理的な損傷と化学的な劣化の2種類に分けられます。物理的な損傷には、基盤のゆがみや傷、汚れなどがあります。化学的な劣化は、反射層の酸化や樹脂の変質などです。軽度の劣化であれば再生可能な場合もありますが、劣化が進むとエラーが発生します。こうした劣化は、DVDよりも早い時期に市場に出回っていた「CD」や「レーザーディスク」で顕著に見られるようになっています。
1980年代のCDでは「酸化」「白濁」など劣化が進むケースも
DVDの商用化は90年代後半から進み始めましたが、爆発的に広まったきっかけは2000年に発売された「PlayStation 2」の存在。同機でDVDが視聴可能となり、広まりました。つまり、普及からまだ30年も経っておらず、適切な管理をしているDVDは「寿命」と言われている年月を経ていないのが現状です。
一方「光学ディスクの寿命」自体は、徐々に明らかになりつつあると言えるでしょう。たとえば、1980年代から流通しているCDはすでに「寿命」を迎えているものも。よくある典型的なCDの劣化例としては「ケースに入れて適切に保存していたにも関わらず、いつの間にか裏面の反射膜が酸化によって白濁し、データが破損してしまった」といったものです。
同様に1980年代~90年代初頭のレーザーディスクの未開封品を購入し、開封したところ「未開封であったにも関わらずすでにディスクが劣化していた」というような事例も登場しています。
なおCDの寿命は、一般的には30年~50年と言われています。1980年代に製造された初期のCDは必ずしも製造品質が高くなく、当初の想定よりも早期に劣化が進むケースも見られるようです。CDにおける「30年から40年ほどで酸化が進み、白濁する」といった劣化は、今後数年ほどで90年代末~00年代初頭の初期のDVDでも見られるようになる可能性があります。
実はDVDの「通常のディスク」は長期保管向けとは限らない
なお、実はDVDの「通常のディスク」は長期保管向けとは限りません。DVDの寿命は実験では100年以上とも言われているものの、実際には保存状態によって20年程度で寿命を迎えるケースもあるためです。光ディスクは一般的に傷や汚れ、光、熱、湿度などに弱いです。被災による浸水などにも決して強くはありません。
そこで長期保管により強い光ディスクとして注目されているのが「M-DISC」です。M-DISCは、通常のDVDやブルーレイに比べると光や熱、湿度などによる劣化が強く、傷や汚れにも強く、100年以上の耐久性があると言われています。
なお一般的にM-DISCの読み出しは通常のドライブで可能で、書き込みはM-DISC対応ドライブを要します。光ディスクの寿命が「意外と短いかもしれない」ことが気になる方は、通常のディスクから映像データを読みだしたうえで、HDDやSSDにも保管しつつ、M-DISCにも書き込みを行うのも一案かもしれません。
劣化したDVDの「研磨」は自宅で可能?
なお仮に光ディスクの盤面に若干の酸化などが起きている場合でも、劣化の程度がごくわずかであれば「何とか再生できるのでは?」と思う方もいるでしょう。この場合、酸化の範囲がディスク断面における「データ層」に及んでいなければ、ディスク研磨によって問題が解消する可能性はあります。
DVDの傷や劣化が「データ層」に及んでいる場合は修復困難なこともあるので要注意。なお研磨をするためのマシンはAmazonなどで購入可能です。
また酸化など劣化がすでに起きている場合、研磨をしてもそのディスクの寿命は長くは無いかもしれません。そのため研磨して正常な視聴が可能になったら、映像データのデジタル化やM-DISCへの書き込みなどもおすすめします。
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