経費削減や環境保護の観点から日本でも徐々に推奨されてきた企業や学校のペーパーレス化は、コロナ禍によってさらに加速することになったのではないだろうか。テレワークやオンラインでのコミュニケーションによって電子データでのやり取りが格段に増え、日本でも書類などの管理方法が大きく変わりつつある。そんな中Googleから、文書の整理や管理をデジタルで支援するアプリ「Stack」が実験的にリリースされた。ペーパーレス化の急速な進化も期待できるStackとはどういったものだろうか。
撮影するだけでデータ化&自動分類、テキスト化まで
日本のペーパーレス化は、世界の先進国の中でもかなりの後れをとっていると言われている。これは日本に根付く“紙・印鑑文化”のためとも言われているが、働き方改革やコロナ禍でのテレワーク推奨の波も相まって2020年10月に政府は行政手続きにおけるハンコ廃止の動きを明かした。そして、ペーパーレス化に勢いをつけるかもしれない新たなサービスが登場したというから注目だ。
Googleは3月30日、紙で発行された書類を電子化できるサービスであるStackを発表。領収書や身分証明書をはじめ、様々な紙の書類の写真を撮影すると自動的にスキャンして名前を付け、カテゴリーに分類する。スキャン中には書類上で最も重要な情報も判別され、その情報をもとに利用者は書類の検索やアクセスが可能になるという。また、書類のタイトルだけでなく全文から必要なテキストを検出しアクセスできるのも、他サービスとは大きく異なる点だ。
こうなると、あらゆる企業機密情報や個人情報がデータ化されることとなり、セキュリティ面の強化がこれまで以上に求められてくるだろう。しかし、そこはGoogle。高性能なセキュリティとテクノロジーを活かして情報を保護するとしている。アプリを使いはじめる際には、ログイン時の顔認証・指紋認証によるセキュリティのカスタマイズもできる。まだ実験段階ではあるが、安全性もしっかりと担保されているようだ。
便利かつ効率的なアプリであることが伺えるが、日本の企業はどれほど積極的に導入に踏み込むだろうか。
「紙の書類のPDF化」について、2020年1月時点では東京に本社を置く企業の経営者・役員111名の内74.4%(ペーパーロジック株式会社調べ)の企業がPDF化していると回答。コロナ禍における働き方の多様化により、2020年に社内のペーパーレスの推進した企業は75.7%(同調査)との数字が出ているが、それでも世界の先進国の中で見てみれば日本のペーパーレス化の進み具合は大幅な後れをとっている。
紙資料が減れば、経費削減に加えて、書類を探すために多くの時間を費やす作業も減り作業効率の向上にもつながる。また、SDGsの観点からも「環境保護による持続可能な社会づくりへ取り組む企業」として、企業の社会的な評価のアップも見込める。企業にとってペーパーレスやデータでの管理はメリット尽くしのようにも思えるが、データ化移行への手間や初期投資を考えるとなかなか踏み出せないのが実情のようだ。そういったデメリット面も、AIテクノロジーによる自動整理や、データ化した後の容易な検索機能によりカバーしているのがStackの強みだろう。
実験段階のStackアプリは現在Android版のみのリリースとなっており、iOS版のリリースなども未定ではあるが、ダウンロードは無料となっている。今後の詳細についても、実験的アプリの反応によって判断していくというが、試験的に導入しその後の活用を考えるのにはいい機会かもしれない。日本のペーパーレス化は、Stackを入口にして加速するのだろうか。サービスの本格稼働にも期待したい。
参照元:グーグル、書類をデジタル化して自動整理する「Stack」アプリを試験公開【CNET Japan】
※サムネイル画像(Image:Camilo Concha / Shutterstock.com)