「あなただけは特別よ」と言われれば悪い気はしない。しかし「みんな平等だよ」と言っていたのにもかかわらず、自分以外の誰かを特別扱いしていたら……。アップルはアプリ開発などを行うすべてのサードパーティーを平等に扱うと公言しているが、「Zoom」アプリに対し、特別な機能の使用許可を与えていることが明らかになった。iOS向けアプリの開発者で、Zoom関連アプリも複数開発しているジェレミー・プロボスト氏が、Zoomでのビデオ通話を行っている最中に気づいたという。
iPadでのマルチタスク機能・Split ViewでZoomを使うと…
特別扱いされている機能とは、iPadの画面分割機能・Split Viewを使ってZoomと他アプリを同時起動した際に、フロントカメラが利用できるということ。Split Viewとはふたつのアプリを同時に使える機能で、たとえば写真を表示しながらメールを作成したり、マップを見ながらインターネットブラウザで場所を調べたりすることができる便利な機能だ。
Zoomはビデオ会議を行うアプリなので、「カメラが使えて当然でしょ」と思うかもしれないが、アップルはサードパーティー製のアプリに対して、Split View実行時にカメラの使用を許可していない。つまりこれは、特別なAPIの利用が許可されていることを意味しているが、その許可を得るためのプロセスは公開されていないのだ。「すべてのデベロッパーを平等に扱う」というアップルの主張と矛盾するのではないか、との疑問の声が上がっている。
アップルによる“特別扱い”は、実はこれが初めてではない。過去には、動画配信サービスのHuluに対してサブスクリプションに関する特別なアクセス権限を与えていたことや、Amazonプライムビデオから徴収する手数料を半額にする密約が交わされていたことが公になっている。アップルはアプリ配信元にApp Storeでの売上の最大30%を手数料として要求しているが、なにやら“条件”を満たせば誰でも半額になると発言しており、大手マスメディアやディズニーなどエンターテイメント企業で構成されている業界団体からその条件について追及されていたが、今も明らかになっていない。
一部の開発者を優遇することはフェアでなく、独占禁止法の観点から見ても望ましいものではない。おりしも今、人気のオンラインゲーム「フォートナイト」を運営するエピックゲームズとの反トラスト法(独占禁止法)に関する裁判が始まっており、全世界のユーザーやアプリ開発者から注目されている。裁判の行方は一旦おいといて、Split Viewにおけるこの機能が、他のアプリにも広く開放されることを期待したい。
参考元:AppleがZoomに対して使用許可を与えている「特別な機能」とは?【GIGAZINE】
※サムネイル画像(Image:monticello / Shutterstock.com)