マイクロソフトが自社の従業員に対して行った調査から「テレワークが生産性を下げ、イノベーションを脅かす」という研究論文を発表した。かねてから懸念されてきた弊害だが、テレワークの旨みを知ってしまった従業員にとってコロナ禍前の働き方への回帰は現実的でない。一方で従業員自身も仕事の進めずらさを認識し、対面コミュニケーションを望む場面もある。両方の“いいとこ取り”に向けて、世界のマイクロソフトが動いている。
リモートによる「生産性の低下」は共通課題
アメリカのマイクロソフトが、自社の従業員6万1,182人分のテレワークに関する研究論文を発表した。研究は2019年12月~2020年6月の間に行なった匿名化された調査をもとにしたもの。研究では、「全社的なテレワークが従業員同士のコミュニケーションに悪い影響を及ぼし、その生産性と長期的なイノベーションを脅かしている」という結果が出た。
これはテレワーク経験者であれば、実感を伴う研究結果だろう。調査によると、テレワークによってメールやインスタントメッセージなどの非同期通信(非リアルタイム通信)を使う機会が増え、逆に音声や動画を使った通話などの同期通信は減少。さらに固定されたビジネスグループをつなぐ潤滑油的なコミュニケーションも減ってしまったという。
今回の研究でテレワークのマイナス面が露呈することになったが、論文発表と同じタイミングで、マイクロソフトは10月4日に予定していたレッドモンド本社とアメリカ国内の事業所の完全再開予定時期を「新たに予測せず、安全が確保された時点」にすると延期を決めた。これは当初9月に予定されていたものの再々延期となり、オフィスワークの再開はますます見通せないものとなった。
しかし今後もコロナ禍に匹敵する予測不可能な事態が起こるとも限らず、リスク管理の観点からもテレワークが完全になくなることはないだろう。さらにマイクロソフトの別の調査で従業員たちは「73%がコロナ後もハイブリッドワークを継続したい」としている。同時に従業員自身も「67%は対面での関わりを望んでいる」ため、現在は在宅と出勤の両方を合わせた「ハイブリットワーク」というスタイルが模索されている。テレワークとオフィスワークのどちらかを潰すのではなく共存させることで、従業員たちの満足度は高まっていくはずだ。
変化には不具合が伴うものと受け入れて、よりよいワークスタイルを作り上げていこうとするマイクロソフトの姿勢は建設的で評価できるものだろう。
参照元:Microsoft、リモートワークの影響を約6万人の従業員で調査した研究論文発表【ITmedia NEWS】