現在ネット上で、マイクロソフトから新たなOS「Windows 11」が発表されたのと同時期に「『Windows 10』がシェアを伸ばしている」という報告が注目を集めている。なんとWindows 10は8月頃から微増を続け、ついには80%を突破する事態となっているというのだ。「新たなOSが出たこのタイミングで何故?」という疑問が素直に浮かんでくるのだが、実はそれにはちょっとした原因があるようだ。
今回は、Windows 10が伸びた裏事情についてお伝えしていきたい。
Windows 10のシェア拡大の理由は“バージョン”にあった
世界中のトラフィック解析を行うStatcounterのデータによれば、「Win10(Windows 10)」のシェアは長らく78%台を推移していたものの、2021年9月に79.84%、10月に81.44%と伸長したという。80%の大台を突破した10月といえば、Windows 11が公開された月でもある。はたして何故Windows 10ばかり伸びているのだろうか。
実はWindows 10のユーザーが増えているのはなにも「Windows 11へのアップグレード要件が厳しいせいで不人気だから」などというわけではない。(もしかするとそういう意図のユーザーもいるかもしれないが)インターネット上ではユーザーがサイトにアクセスすると、サイト側へ「このユーザーはどのOS・どのブラウザを利用している」といった情報(User Agent)が通知されるという。そしてその情報の上では、Windows 11とWindows 10がどちらも「Windows NT 10.0」バージョンと表示されるため、Statcounterのデータ上では、実際にはWindows 11を使っているユーザーまで「Win10」として集計されているのだ。
つまりWindows 10からWindows 11へとアップグレードしたユーザーはデータ上で増減の変化を及ぼさず、「Windows 7」などのユーザーがWindows 11に移行した際に「Win10」が増えるという仕組みなのだ。Windows 11とWindows 10のバージョンが同じだったことで起こった珍事と言えそうだ。
2015年にWindows 10が登場した際、「メジャー・バージョンアップは廃止され、日常的に漸進的な改良が続くことになる」として「Windowsの最後のバージョン」になると宣言されたことを覚えている人もいるかもしれない。Windows 11の発表時にもネット上からは、「あのときの話どうなったの?」というツッコミも散見された。
まさかマイクロソフトが「バージョンは同じにしているから、約束は違えていません」と屁理屈をこねることはないだろうが、こうした情報を利用してビジネスに活用している人々からすればたまったものではないだろう。
「現在調査会社もWindows 11とWindows 10の判別に苦戦している」と報じられていたりもするが、巡り巡って「Windows 11のユーザーだけが受けられた恩恵の導入が断念される」などユーザー側にも不利益が発生してしまうとすれば残念なことこの上ない。
今後、この判別の有無がユーザーにとって悪い方向に転がらないことを願いながら、シェアの推移にも注目していきたい。
参照元:Desktop Windows Version Market Share Worldwide【Statcounter Global Stats】
※サムネイル画像(Image:Anton Watman / Shutterstock.com)