今日は外食ですませようとなった時に、何を食べるかの選択肢に高確率で「寿司」が挙がる人は多いのではないだろうか。実は、このコロナ禍で外食産業は苦戦しているものの、「回転寿司」市場は伸びているおだ。
スシローやくら寿司など大手を中心とした国内回転寿司市場は、2021年度をみると10年前から1.6倍の規模に拡大していて、前年からも売上が約600億円増加しているという好調ぶりだ。
コロナ禍でも好調な大手回転寿司チェーン 10年で800店も増加しているその理由は
このコロナ禍で最も打撃をうけた産業として思いつくのは、観光業と外食産業だろう。外食産業は店を開けることはできても時短営業を余儀なくされたり、入店人数を絞ったり滞在時間を短縮したりとさまざまな制限が課された中での営業が続いていた。飲食店ということで特に気を使い、使用毎に机や椅子のアルコール消毒を実施したり、ついたてを設けたり、その設備費や手間といった負担も増えただろう。
しかしそんな中でも「回転寿司」市場は好調だ。スシローやくら寿司など大手を中心とした国内回転寿司市場は、2021年度7,400億円を超える見込みで、10年前の4,636億円(2011年度)の8.3%増となっている(事業者売上高ベース)。さすがに前年(20年度)はコロナ禍に伴う休業や時短営業で、過去10年で初めて前年比を割り込んだが、この好調の理由はなんだろう。
「ファミリー需要増」の追い風と「値上げ」の逆風。2022年はどうなる?
この環境下でも回転寿司市場が伸長した理由はなんなのか。特に大きいのは「ファミリー層の需要が増している」ことだ。コロナのために休校時で学校にも行けず、お出かけもできず、通学は始まってもさまざまな行事が中止になった子どもになんとか楽しみをと考えた親たちが、回転寿司セットをテイクアウトして自宅でお寿司屋さんごっこをしたことも、好調の理由に一役買っていたのかもしれない。
にぎりとネタがばらばらになった状態の寿司セットを、子どもが完成させて大将気分で家族に振る舞う。テレビで回転寿司トレインなるおもちゃが紹介されたりもした。卓上にそのおもちゃを置いて、トレインにお皿がのせられるのでちょっとした回転寿司気分が味わえるというものだ。中には、手持ちの電車のおもちゃ「プラレール」を使って同じように回転寿司ごっこを楽しんだ家庭もあったという。
総務省の家計消費状況調査によると、世帯当たりの外食費はコロナ禍前の2019年度から大きく落ち込んでおり、21年度も低水準で推移していた。そんな中でも、「巣ごもり需要」に販路を見出した「ハンバーガー」と同じく回転寿司市場もそこに便乗したことも好調な理由の一つのようだ。
実際、前年度の売上はコロナの影響を大きく受けたものの、後半からテイクアウト需要の高まりが下支えしていた格好だ。今までは郊外ロードサイドを軸に店舗網を展開していた大手回転寿司チェーンが、ターミナル駅付近に小規模店を出店するなど都市部の開拓を強化する動きがみられ、市場は拡大傾向だ。
一方で、水産品の価格高騰や円安が重なり大幅なコスト上昇は避けられそうになく回転寿司業界でも値上げの波が押し寄せてきている。業界最大手のスシローは5月9日、10月からの値上げを発表。“税抜100円”の皿が無くなるという、スシロー創業以来初の決断に踏み切った。今後回転寿司業界全体がどう動いていくのかにも注目が集まっている。
出典元:「回転すし業界」動向調査【帝国データバンク】
※サムネイル画像は(Image:「帝国データバンク」プレスリリースより引用)