コロナ禍であっても、比較的影響が少なかった回転寿司業界。業界トップの「スシロー」は2020年9月期の売上げは過去最高を記録、第2位の「くら寿司」も同年10月期の国内売上げが過去最高となり、どちらも2021年には新規店舗の出店ラッシュと好調なようす。一方、かつては業界トップに君臨しながら、現在は「はま寿司」に続く第4位の座に甘んじている「かっぱ寿司」も改革に乗り出し、生き残りと首位奪還をかけた熾烈な争いに一石を投じる構えだ。
はたたしてかっぱ寿司はどう生まれ変わるのか。その動きに注目が集まっている。
古い企業体質を刷新、新しい風を。次々と打ち出す新戦略
かつては業界1位だったかっぱ寿司がスシローに首位の座を明け渡したのは、2011年のこと。その後次々とくら寿司とはま寿司にも抜かれ、あっという間に業界内で“負け組”とまで言われかねない存在となってしまった。凋落の要因となったのは、安さを追い求めるあまり寿司の質が担保しきれておらず、「おいしくない」というイメージが定着してしまったためであった。
他社に比べ品質の悪さを認めたかっぱ寿司は、2016年から再起をかけたリブランディングと変革を推し進めている。今まで工場で一括生産していた寿司ネタの加工を店舗加工に変更し鮮度のアップを試みたり、ラーメンやスイーツなどサイドメニューの開発にも注力したりと、失ってしまった“おいしい”イメージを取り戻すための努力を続けた。
さらに、思わぬ好評を得たという「出張回転寿司サービス」では老人ホームや企業などに向けたサービスも展開、「To B」の需要を新たに掘り起こしたり、世代によって媒体を使い分けるメディア戦略を展開するなど、次々と新戦略を打ち出し、変革の手を緩めなかった。
そのかいあってか、ネットやSNSには「かっぱ寿司めちゃ綺麗で新鮮美味しい」「最近のかっぱ寿司、おいしくなりましたよね」などの声が見られるようになり、徐々に世間のかっぱ寿司のイメージが上向いてきているようである。
これまで改革を推し進めてきたかっぱ寿司は、大きく水をあけられていた他社との差を埋め、今ようやくまた同じ土俵に立ったようだ。ここから、かっぱ寿司の逆襲が始まるだろう。そしてその武器は、“回転寿司”からの脱却だという。鮮度を重視するために、回転レーンをなくし寿司が回っていないフルオーダー型の回転寿司屋のスタイルを今後は推し進めていく方針だ。これは感染症対策として非接触が推奨される今の時代にも即していると言えるだろう。
王者であるスシローは高価格・高品質の商品を投入し、回転寿司なのにおいしいというイメージを定着させた。手軽さと安さだけが売りの回転寿司の時代はとっくに終わり、新鮮でおいしくなければ生き残れないステージに突入しているのだ。
おいしくないという悪いイメージがつき、客が離れ、売り上げが低迷してしまったかっぱ寿司も、地道な努力で進化し続けようやくおいしい、と言われるようになっている。2021年も回転寿司業界の生き残りをかけた争いはさらにヒートアップしそうだ。
参照元:苦境の「かっぱ寿司」に聞いた生き残り策は“回転寿司屋からの脱却”【bizSPA!フレッシュ】