国内のインテリア業界においてシェア1位を誇るニトリホールディングス。コロナ禍で自宅のテレワーク環境を整えたり、気分転換に模様替えをしたりと、この1年でインテリアの需要がグッと上がったこともあり業績は好調だ。
そんなニトリがファミリーレストラン業界に進出したことはご存知だろうか。ユニクロが花屋、幸楽苑が人材サービスなど。最近では、異業種参入は珍しいことではない。しかし、外出自粛で外食需要が減るいま、なぜニトリは飲食事業に手を出したのだろうか。
今回は、ニトリが何を目指し、どこへ向かっていくのかを考えていきたい。
ニトリダイニング みんなのグリル、強みは圧倒的なリーズナブルさ
ニトリは2021年3月、東京都足立区のニトリ環七梅島店の敷地内に「ニトリダイニング みんなのグリル」をオープン。店舗は「いきなり!ステーキ」の居抜きで作られており、チキンステーキやハンバーグステーキがメインのメニューとなっている。驚くべきはニトリらしいリーズナブルさ。チキンステーキ(240g)は500円、ハンバーグステーキ(150g)は700円、デザートではラズベリーソースのかかったダッチベイビーはなんと200円だ。これらはすべて税込み価格。ざっと見ただけでも多くのファミレスチェーンより安い値段設定であることが伝わってくる。
フードメニューは全部で10品程度、ドリンクメニューはソフトドリンクやコーヒー、生ビールなど定番どころが数種類。メニュー数を絞ることで、廃棄ロスを減らし効率を上げて低価格帯を実現しているのかもしれない。
お手頃価格でそこそこおいしい点や、“ニトリのファミレス”という話題性にファミレスチェーンはヒヤヒヤしていることだろう……と思いきや、どうやらニトリダイニングが戦う相手はファミレスではなさそうだ。ニトリダイニングには、ほとんどのファミレスにある飲み放題のドリンクバーが存在しない(2021年4月20日時点)。「食事をとって少しゆっくり休憩したい」「自宅では作業が捗らないからファミレスを使いたい」という、既存のファミレスに多い顧客層には向いていないのだ。
つまり、ニトリダイニングはニトリの店舗へ誘導するための、あくまでも“通過地点”ということ。飲食という新たな導線を設けることによって入り口を広げる考えなのではないだろうか。同じような仕組みで、IKEAやCostcoが挙げられる。イケアレストランでは100円のホットドッグや50円のアイスクリームなど、お手頃価格で高コスパの軽食が販売されており、これを利用するためだけにIKEAを訪れる人も多いという。本当にレストラン利用のみで帰る人もいるかもしれないが、多くの場合が「ちょっと見ていこうよ」とインテリアコーナーにもふらっと足を運ぶことが多いはず。これが売り上げに繋がっているということだ。
ニトリダイニングのシンプルなメニューとドリンクバーを設置していない点を見ると、IKEAやCostcoの強みを取り入れようとしているように見える。ニトリの競合は変わらず家具屋なのか。その答えは、これからのニトリダイニングの動向から見えてくるだろう。今後もニトリダイニングに要注目だ。
参照元:ニトリが密かにファミレスを始めた納得の理由【東洋経済オンライン】
※サムネイル画像(Image:nitori-dining.jp)