「寿司をより手軽に」をコンセプトに、醤油や箸が不要で、おにぎりのような寿司を提供することでじわじわ話題となっている「むすび寿司」。2020年9月に第1号店を大阪市の南海なんば駅構内に開設し、2号店は埼玉県のルミネ大宮のデパ地下に展開しているが、実はスシローブランドを持つFOOD & LIFE COMPANIESによる新業態。開業直後はスシローグループであることを公表していなかったが、今期からはグループ全体のキャンペーン「あっぱれ、日本!超すし祭」フェアなどを合同で開催するなど、スシローグループのスケール感を前面に押し出している。
寿司3~4貫分のシャリを使ってふわっと握るむすび寿司
むすび寿司が提供する寿司は、ロゴにもあるように三角形になっていて、見た目はまさにおにぎり。だが、店内には寿司屋のようなカウンターテーブルとガラスケースが備え付けられ、店内飲食とテイクアウトに対応している。店内仕込みのこだわりのネタはカウンターケースにずらりと並び、店内飲食の場合は客が注文してから一つずつ握るという、寿司屋仕様の調理方法となっている。
むすび寿司一つ当たりのシャリの量は、寿司3~4貫分。食感はふわっと感が特徴で、ネタはたっぷりとボリューム感もある。定番の20アイテムのほか季節限定ネタなども用意されており、旬の味も楽しめるという寸法だ。価格帯は165~240円が売れ筋で、人気のネタは220円の赤海老の胡麻だれ、240円の漬けサーモン。他にも厳選ネタとして285円、310円、550円と、高価格帯の商品もある。
醤油がいらない寿司を提供するため、漬けにするなど手の込んだ仕込みがされているが、その味付けもネタごとに異なるそう。スシローの調達力を活かした新鮮な魚介や、赤酢を使った赤シャリ、海苔は有明産の一番摘み、和歌山県湯浅町で昔ながらの杉樽使用の製法の醤油を使うなど、素材へのこだわりも強い。
おにぎりの形をしていることについては、「食シーンの幅が広がる」ことを理由として挙げている。これは、むすび寿司が江戸時代の屋台文化で流行した江戸前の握り寿司から着想しているから。当時の握り寿司はおむすび並みの大きさがあり、ボリュームがあったため2~3個でおなかがいっぱいになったらしい。むすび寿司の「醤油や箸が不要で、移動中や忙しい日常の合間でもワンハンドで食べることができる」という気軽さは、屋台寿司に通じるものがあるというわけだ。サイドメニューにはごろごろ野菜の具だくさん豚汁などがラインナップされており、むすび寿司3種にあおさと海苔の味噌汁がつく「おすすめセット(715円)」は、昼飯時の男性も十分満足できる内容だろう。
両店ともに実験的店舗で、今後の店舗展開は未定とのことだが、スシローグループである情報を解禁したということは、勝算が見えたということか。日本のファストフードとしての寿司が、もう一度脚光を浴びる時が来るかもしれない。