回転寿司チェーン大手の「かっぱ寿司」が、同業の「はま寿司」の販売データを不正に入手していた…。突然のニュースに衝撃を受けた人も少なくないことだろう。我々業界の外にいる一般人から見ても、ライバルの内部情報を盗み見るのはマズいことだというのは考えずともわかる。ではなぜプロがそのような“御法度”に手を出してしまったのだろうか…。
今回は、悪事に手を染めてしまうほどに追い込まれていた、かっぱ寿司の窮状について考えていきたい。
かっぱ寿司の新社長、ライバル企業の秘密を盗む?
今回の一件では、かっぱ寿司の運営会社であるカッパ・クリエイトの社長・田邊公己氏が、「はま寿司の営業秘密を不正に受け取っていた」として同社から不正競争防止法違反の疑いで告訴されたというもの。田邊氏は2020年11月にカッパ・クリエイトの顧問となった(社長となったのは2021年2月のこと)が、それ以前の経歴としてはま寿司の取締役を務めていたこともある。そのためはま寿司時代の元同僚から数回、はま寿司社内で共有されている日次の売上データなどをメールで受け取っていたとされる。
ITmedia ビジネスオンラインの報道によれば、売上データを受け取っていたことでただちに罪に問えるかは不透明だという。
また、カッパ・クリエイトが7月5日に発信した「当社役員に対する競合他社からの告訴について」の文書では、冒頭から「当社の代表取締役個人に対して、株式会社はま寿司より不正競争防止法に纏わる告訴がなされ、当該告訴に基づき、本年6月28日、関係当局による捜査が行われました」と述べられている。この書き出しを同記事では、田邊氏以外のコロワイドグループの社員は関与していないと示すためではないか、と伝えている。
かつては回転寿司チェーン業界のトップシェアだったかっぱ寿司がなぜこのような事態になってしまったのか。これには業績が上がらず迷走している現状が強く影響しているとみられる。
かっぱ寿司は2010年頃までは業界1位だったものの2011年に現在の回転寿司業界トップの「スシロー」に追い抜かれて以降、はま寿司や「くら寿司」にも追い抜かれ4位に転落。「4大チェーン」と言われるものの、実情としてはかっぱ寿司の“一人負け”状態だとITmedia ビジネスオンラインは分析する。
“落ち目”とも言える中でかっぱ寿司は、2014年にコロワイドグループの傘下となり、それ以降およそ7年で5人も社長が交代しているという。「一人負け状態」で「社長がコロコロ変わっている」となれば、社長は「一刻も早い立て直し」が至上命題となるだろう。とくに同業他社で取締役を務めていた田邊氏が迎え入れられたとなれば、その手腕・得てきたノウハウを活かした経営刷新が求められていそうなことは私たち素人でも想像に難くない。業績回復の手っ取り早い手段として、“古巣の経営戦略の成功ぶり”の情報を入手するため営業秘密に手を出してしまったとしても不思議はないだろう。
はま寿司の訴えが事実であるとすれば、それは新社長なりの責任感に端を発することなのかもしれない。逆に言えば、通常の手法ではかっぱ寿司の立て直しは厳しいということなのだろうか…?今後の業績の推移を見守ってその答えを探っていきたい。
参照元:なぜ「はま寿司」のデータを欲しがった? 「かっぱ寿司」転落の背景は“伝統の否定”【ITmedia ビジネスオンライン】