日本でも回転寿司チェーンの中でも圧倒的強さを誇るスシローが、2021年3月タイ・バンコクの大型ショッピングモールに初出店した。さらにスシローは、3月の進出以降、すでに2店舗目を開店済みで今後も年に複数店舗のペースで拡大していく計画なのだそう。実はこのタイ、“寿司戦争”ともいうべき状態であることをご存知だろうか。ジェトロ(日本貿易振興機構)の2020年の調査によれば、タイでは1,030店舗もの寿司店がしのぎを削っているというのだ。
現地寿司チェーンはスシローのライバルとなり得るか?
タイ1号店はなんと座席数が350席!世界のスシローチェーンの中でも最大の大きさだといい、もはやショッピングモールのフードコートのようなスケールだ。食事は家族、友人など複数で食べるのが基本であるタイの食文化をふまえ、寿司店ならではともいえるカウンター席はゼロ。ボックス席のみとなっている。
1皿の価格は40バーツ(約140円)。100円皿が一般的な日本よりは高いものの、まずまずお手頃な価格に思える。しかしタイの平均的な食事料金は、安食堂や屋台で40~50バーツ(約140~175円)、エアコンの効いたレストランで150~250バーツ(約525~875円)という具合なので、一人5皿食べると400バーツ×4人で行くと20皿、…日本の回転寿司よりはちょっと(かなり?)贅沢、といったイメージか。
5月にはタイのスシロー1号店がある大型ショッピングモールに、対抗するかのように現地の寿司チェーン「MAGURO」が出店。MAGUROはバンコクを中心に10店舗を展開しているが、果たして寿司発祥の地・日本からやってきた王者・スシローのライバルとなり得るのだろうか。
ただ、タイの寿司の味わいはというと、日本とは大きく違っている。味は全体的に濃い。これはトムヤムクンに代表されるような、タイの食文化の特徴である「辛い」「甘い」「酸っぱい」という、刺激的な味わいが好まれるからである。また、シャリも固めで、これもタイ人の好みに合わせているのだろう。
現地の寿司店「SHINKANZEN SUSHI」はテイクアウトをベースにファストフード店のようなイートインスペースも設け、タイ国内に約30店舗を展開。急成長を遂げている。この店でも人気なのはサーモンとカニカマ。サーモンは子どもから大人まで、日本でもトップクラスの人気を誇るネタだが、タイ人のサーモン愛はもっとすごい。通常の寿司メニューに加え、サーモンケーキと呼ばれる刺身の盛り合わせまであるから驚く。
日本人からすると、ちょっと奇抜で「これは寿司と呼べるの?」と思ってしまうが、よく考えたら日本人も、SNS映えするようなスイーツが話題になるなど、日本の消費者のニーズや文化に合わせて、本来の姿とは違う独自の形に進化している食べ物も多い。そう思えば、これらのタイ風寿司も納得の進化形と言えるだろう。
日本の回転寿司チェーン店と現地の寿司チェーンの勝負と、タイでの寿司の進化、今後の動向に注目していきたい。
参照元:「スシロー」進出で、タイ寿司戦争が激化【サライ】
※サムネイル画像(Image:Sushiro Thailand公式Facebookより引用)