「トレジャー端末」という見慣れない言葉が世の中を席巻した。トレジャー端末とは、家庭の机の引き出しなどに埋蔵され使用されていない携帯電話端末(スマートフォン及び従来型の携帯電話)の総称として、伊藤忠商事が商標出願中の言葉。家の中に眠っている不用品を地球にとっての宝物(トレジャー)に変えていきたいという思いを込めて名付けたそうだ。
そのトレジャー端末という名が知れ渡ったのは、伊藤忠商事のプレスリリースが発端。それは家庭で使われていないスマートフォンやタブレット、フィーチャーフォン(ガラケー)などの携帯電話端末を対象のファミリーマートの店頭に持ち込むと、端末1台につきファミリーマートで利用できる1,000円相当のクーポンを進呈するというもの。しかし、2月12日時点で回収受付が停止された。いったい何が理由だったのだろうか?
自宅に眠る携帯電話は2.7億台!? その価値は約3兆円!
まずはプレスリリースの内容を見てみる。
■伊藤忠商事 プレスリリースより引用・抜粋
伊藤忠商事は、家庭で使用されていない携帯電話端末(以下「トレジャー端末」)の回収事業の実証を開始いたしました。グループ会社であるファミリーマートの一部店舗での回収事業の実証に加え、グループ内外の企業を通じた従業員向けの回収も展開してまいります。
ということだ。リリース資料によれば、トレジャー端末の数量は、データ移行の手間や、個人情報流出の不安等の影響で年々増加し、昨年時点で2.7億台あると言われており、その価値は約3兆円にも上るとの試算がある。その活用は、中古市場の活性化に繋がることに加え、中古端末利用による温室効果ガスの削減や、産出量の少ない希少金属が多く含まれていることからSDGsへ貢献する取り組みだと考えて始まったとのこと。
実は2月1日から実証実験として都内25店舗で回収が進められており、その取組みはテレビニュース等でも大きく報じられていたのだ。しかし2月12日、回収受付が停止された。
伊藤忠商事の発表によれば、中止の理由は「店頭にお持ち頂いた端末の台数が当初の想定よりもはるかに多かった」こと。回収を実施していた全店舗で受付を停止することとなった。持ち込むユーザーのメリットは、社会貢献という側面を除けば、ファミリーマートで利用できる1,000円相当のクーポン。どちらの理由で持ち込んだかは不明だが、とにかく想定以上の台数が集まったということは、それだけ自宅に眠っている携帯電話の扱いに困っている人が多かったということだろう。
どれだけの台数が持ち込まれたのかは不明だが、「2.7億台ある」と試算されていたトレジャー端末の一端を崩す取組みの初動としては“合格”と言える反応が見られたと言ってよさそうだ。開始直後には「スマホ買取業者に売却したほうがお得」だと見る意見が強かったが、世の中的には「お得より便利」のほうを選び近所のファミマに持ち込むユーザーが多かったという結果となった。
この取組みで回収されたスマホは伊藤忠グループの株式会社Belongの保有するセンターでデータ消去・検品されたのち、中古スマホとしてのリユースや使用素材のリサイクルに回される。近年需要が増している中古スマホ市場が、この取組みでさらに活気づくことになりそうだ。
●家庭で使用されていない携帯電話端末(トレジャー端末)の回収事業の実証開始について【伊藤忠商事株式会社】
※サムネイル画像は(「写真AC」より引用)