ドコモやauなどが推し進める「なんちゃって5G」って何なの? 本物の5Gとどう違う?

すでにサービスが開始されている高速回線「5G」。アナタも5G対応スマホに買い替えて5G回線の速さを体験しているかもしれない。だが、実は今利用できる5Gは4Gを高速化させた“なんちゃって5G”が多いことをご存じだろうか? そこで今回は、なんちゃって5Gとは何なのか? 4大キャリアの状況がどうなっているのかを解説しよう。

「なんちゃって5G」ってどういうことなの!?

そもそも、「5G」とは“第5世代(Generation)の通信規格”という意味で、従来の4G(第4世代)よりも格段に高速で遅延が少なく、多数同時接続が可能である。

たとえば、4K動画配信サービスや自動車の自動運転などにも必要な技術となっているのだ。「5G」の基本を知りたい人はこちらの記事を参考にしてほしい。

すでに超高速回線「5G」はドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルなどで運用が開始されているが、実は、「5G」で利用されている周波数は「Sub6」と「ミリ波」の2種類があるのをご存じだろうか?

まず「Sub6」は3.6GHz~6GHzの低い周波数のことで、障害物に強く広いエリアをカバーするのに適しているほか、4Gの技術を転用できるメリットがある。

これに対し「ミリ波」は30GHz帯以上の高い周波数のことで、日本の5Gでは30GHzに近い28GHz帯が割り当てられている。もちろん「Sub6」よりかなり高速だが、障害物に弱く狭いエリアでしか使えないという特性がある。

そこで日本では、いち早く5Gを普及させるために「Sub6」を先に整備することになった。とはいえ、日本の「Sub6」で利用されている4.5GHz帯と3.7GHz帯は、本来の5G(ミリ波)ほど高速ではないため、“なんちゃって5G”と呼ばれることもあるのだ。

もちろん、「Sub6」でも都市部では100Mbpsを超えるので、従来の4Gよりはかなり高速なのは間違いないが……。

■5Gの特徴

【1】超高速&大容量
【2】超低遅延
【3】多数同時接続

■ミリ波とSub6の違い

【ミリ波】本物
[周波数帯]
・30GHz~300GHz(日本では28GHz帯)
[特性]
・高速だが障害物に弱く狭いエリアでしか使えない
・基地局やアンテナ設置にコストと時間がかかる

【Sub6】なんちゃって5G
[周波数帯]
6GHz未満(日本では3.7GHz帯/4.5GHz帯)
[特性]
・4Gを応用した技術で、障害物に強く広域で使える
・既存設備を転用可能でコストがかからない

5Gの「ミリ波」は基地局やアンテナ設置にコストと時間がかかるが、「Sub6」なら4Gの既存設備を転用可能で、手っ取り早く5Gエリアを拡大できる(写真はイメージです)

現状、日本の5G回線はどこまで普及しているの?

日本の4大キャリアでは、すでに5Gサービスが始まっており、都市部を中心に接続可能となっているが、いったいどこまで普及しているのだろうか? 

まず、5Gはソフトバンクが一歩リードしている。すでに2022年1月末時点で人口カバー率は85%を超えており、基地局は2万3,000局以上も設置しているという。

次に、auも2021年度末までに5Gの基地局を5万局設置し、人口カバー率を90%に引き上げる計画で、この2社はいずれも4Gを5Gに転用することで5Gの人口カバー率を一気に上げていく戦略を取っている。

これに対しドコモは、5G専用の周波数帯(3.7GHz帯、4.5GHz帯、28GHz帯)を利用した「瞬速5G」によるエリア拡大を計っており、2021年度末に2万局を設置して、人口カバー率50%を目指す方針であった。

しかし、ライバルと5Gエリアで大きく差がついてしまったことや、ドコモの5Gサービス契約者数がすでに1,000万人以上に達していることもあり、2022年3月11日には、「2024年3月までに人口カバー率90%を目指す」と発表したのである。

これは、現在4Gで利用している700MHz帯、3.4GHz帯および3.5GHz帯の周波数帯を5Gとして転用することで5Gエリアの拡大ピッチを上げるというものだ。

なお、最後発の楽天モバイルはいまだ4Gエリアの人口カバー率が96%であり、5Gについてはまだまだこれからであろう。

(Image:docomo.ne.jp)

5G専用周波数帯で5Gエリア拡大を計っていたドコモだったが、ライバルが急速に5Gエリアを拡大したこともあり、今後は4G周波数帯を転用した5Gも投入して、2024年3月までに5Gの人工カバー率90%を目指すことになった(ドコモ公式サイトより引用)

●ソフトバンク「5Gの人口カバー率が85%を突破」(公式)は→こちら
●KDDI「5G商用基地局の設置開始」(公式)は→こちら
●ドコモ「5Gサービスのエリア展開を加速」(公式)は→こちら
●楽天モバイル「5G(ファイブジー)とは(楽天モバイルの5Gサービス)」(公式)は→こちら

5Gは使用する設備にも「SA方式」と「NSA方式」の2種類ある

5Gには使用する周波数帯以外に、設備にも「SA(スタンドアローン)方式」と「NSA(非スタンドアローン)方式」の2種類があることも覚えておきたい。

SA方式は「単独型」という意味で、すべて設備が5G専用となるため、時間とコストがかかる。しかし、SA方式であれば本来の5Gの特徴である超高速&大容量に加え、低遅延や多数同時接続なども可能となり、まさに本物の5Gを実現できるのだ。

これに対しNSA方式は「非単独型」という意味で、4G LTEの設備を利用しているため、速度の向上は見込めるが、低遅延や多数同時接続は実現できない。まさに“なんちゃって5G”なのである。

NSA方式は4G設備を利用して高速化を目指すもので、低遅延や多数同時接続は実現できない。SA方式は5G専用設備なので、まさに5G本来の機能をすべて発揮できるのだ(図は編集部で作成)

まとめ

いかがだろうか? 高速な5G回線といっても、本物の5Gと4Gを発展させた“なんちゃって5G”の2種類があることがお分かりいただけただろう。

しかし、なんちゃって5Gでも従来の4Gよりはかなり高速だし、現状ではAndroidスマホでも「ミリ波」に対応する機種はごく少数。日本で販売されているiPhone 12/13/SE(第3世代)も「Sub6」しか対応していないのだ。

したがって、現状では一般ユーザーが、自分のスマホが「ミリ波」に対応するどうかを気にする必要はないだろう。

(Image:apple.com)

現在、日本で発売されているiPhone 12/13/SE(第3世代)は5Gに対応するが、それは「Sub6」のことであり、「ミリ波」には対応しない(画像はAppleStoreから引用)

文=すずきあきら/編集・ライター

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