電化製品や精密機器といった機材の多くは、水に触れてしまうと故障につながります。もちろん、防水性能がないスマホにも該当しますが、たとえば「トイレやお風呂に落としてしまった」「雨の日に濡らしてしまった」など不運なケースに遭遇することも…。
実は、水没した時の対処法として“水抜き音を使うのが効果的”といわれているそう。この“水抜き音”はアプリや動画配信サイトで使用することが可能みたいですが、はたして、どのようなものなのでしょうか?
水抜き音の実態について調べてわかったこと
そもそも水抜き音ってなに?
突然ですが、みなさんは「Apple Watch」の“排水機能”をご存じでしょうか? スピーカーから低い音を出して全体を振動させ、中に残った水を排出するという機能です。
水抜き音とは、簡単に説明すれば、上記のような効果を発揮してくれる特殊なサウンドのこと。たとえば、スマホが水没した直後に水抜き音を利用すれば、本体の中に入ってしまった水を排出できます。
実際に“水抜き音”を活用した人からは「雨に濡れたせいで充電しても反応なかったけど、水抜き音を使ったら即解消」「YouTubeの『水抜き音』を試してみたけど、マジで直った!」など好評の声が続出。一定数の人は“たしかな効果”を認めているようです。
ボタンを押すだけで水抜きできるWebアプリ「Fix My Speakers」
続いて気になるのは、水抜き音を使えるアプリやツール。まずWebアプリの「Fix My Speakers」に注目しましょう。
●Webアプリ『Fix My Speakers』
使い方は非常に簡単で、同サイトにアクセスして絵文字が記載されているボタンをタップするだけ。すると“水を噴出させる特殊なトーンの音波”を再生してくれます。実際に利用した人によれば、“音量を大きくして数時間~24時間ほど音を流し続けると効果が期待できる”とのことでした。
YouTubeやTikTokでも登場する「水抜き音」
他には、動画共有型のSNSで「水抜き音」を探す方法も。たとえば、YouTubeやTikTokで「水抜き音」と入力して検索すると、下記の画像のように、さまざまな水抜き音が表示されます。
試しに、YouTubeで“水抜き音が流れる動画”を開いてみると、概要欄には「水に濡れて音が出ない、音が割れる方は是非お試し下さい」「スピーカー部分に触れて、振動により空気が出てる音量で数分放置すると水抜きが出来る音です」「165Hz、6000Hzの音です」といった説明が。
引用元:水抜きビーバー iPhone、スマホの水抜き音/スピーカーの音割れ改善 165Hz、6000Hz「YouTube」は→こちら
165Hzは低い音、6000Hzは高い音が再生されました。ガイドに従えばいいだけなので、はじめての利用でも難なく使いこなせそうです。
「水抜き音」は諸刃の剣!?
ここまで水抜き音の使い方をチェックしてきましたが、やはりプロの見解も気になるところ。そこでスマホやタブレット、ゲーム機の修理をおこなう「スマホ修理王」の従業員・大橋さんに“水抜き音”について話を伺ってみました。
――YouTubeやアプリなどで使える「水抜き音」は、水没後の対応としてプロの大橋さんの目から見て正しい方法だと思いますか?
大橋さん:必ずしも正しい方法とは言えません。水抜き音を流すことによって、内部に浸入した水が排出される可能性があります。
しかし同時に、水抜き音を流すことで発生する振動によって、内部に浸入している水がさらに内部に広がってしまう場合もあります。基板や電子部品に接触する位置まで水が広がってしまった後に、充電するなどして電気が流れると故障が発生する恐れもあります。
最悪の場合、水抜き音を流した直後に起動しなくなってしまう可能性もゼロではないです。以上のことから、水抜き音は水没後の対応として推奨はできません。
スマホ修理のプロから見れば水抜き音は、直ることもあれば故障につながる場合もある“諸刃の剣”。確実に解消するためにも自分の手で直そうとするのではなく、プロに任せる方がいいのかもしれません。
水没した時の正しい処置&決してやってはいけないこと
では、水没させてしまったら、どのような処置を施すべきなのでしょうか? 引き続き大橋さんに質問してみました。
大橋さん:まず、おこなうべき対処は「電源を切ること」。これは、水没させた液体の種類や水没していた時間にかかわらず、どのような場合でも共通してやるべきことです。内部に浸入した水が電子基板に触れている状態で電気が流れると、電子基板の一部が腐食・ショートして故障する可能性があります。なので、まず電源を切って、このリスクを軽減させましょう。
電源を切った後の対処法は、液体の種類や水没していた時間によって異なります。水没させた液体が「真水」で、水没させた時間がごくわずか(数秒)である場合には、電源を切った後に「動かさず自然乾燥させる」ことが推奨されます。
なお、iPhoneの場合、水没してから最低5時間は放置した後に充電するよう公式に案内されていますので、これを自然乾燥させる時間の目安とするのがよいでしょう。その他のスマートフォンについても、iPhoneと同様に最低5時間は放置してから起動や充電を試しましょう。
自然乾燥後、正常に電源が入り操作できる状態であった場合、念のため速やかにバックアップしておいてください。真水であっても長時間水没していた場合や、海水、プールの塩素水、洗剤の入った洗濯機の水、ジュースなどの“真水以外の液体”に落とした時は、電源を切った後に「できる限り速やかに修理店に依頼すること」が望ましい対処です。
というのも、不純物が混じった液体が内部に浸入している場合、時間が経つにつれて腐食や錆が急速に進行し、復旧が困難な状態になってしまう可能性があります。そのため、電源を切った後は自然乾燥させるよりも、なるべく早めに修理を依頼するのが適切な対処法と言えます。
――ありがとうございます。では、水没させた時に“決してやっていはいけないこと”はあるのでしょうか?
大橋さん:決してやっていはいけないことは、「電源を入れる」「充電する」「スマホを振る」「ドライヤーで乾かす」の4つです。
水没後は「内部に浸入した水が広範囲に広がらないようにすること」と「電気が流れない状態にすること」が非常に重要です。そのため、上記の4つの行為は決してやってはいけません。
取材協力:スマホ修理王
ネット上にはさまざまな水没した時の対処方法が掲載されていますが、やはりプロの見解を踏まえると、理屈や仕組みを理解していない状態でトライするのは危険なようです。しっかりとリスクを見極めたうえで、実践するように心がけてくださいね。
●取材に協力して頂いたのは、iPhone修理・スマホ・タブレット修理をおこなう「スマホ修理王」