2024年に「アナログ回線」「ISDN回線(デジタル回線)」の2種類からなる従来の固定電話サービスが終了するというニュースをご存じでしょうか?
2022年5月に総務省が発表した「通信利用動向調査」によると、固定電話の世帯全体の普及率は66.5%となっています。
参考元:総務省公式ホームページより
この変更は、固定電話の利用者にどのような影響を及ぼすのでしょうか?また通話料金負担の増減や、IP網への移行に伴うメリットやデメリット、そして注意点はあるのでしょうか?
今回の記事では、固定電話が終了し、通話料の一律化が及ぼす影響を詳しく解説します。
【2024】NTTの固定電話が終了・IP電話へ移行 | 料金はどう変わる?
2024年から、NTT東西が固定電話の通信網をIP網へ切り替えます。固定電話の契約数や利用量が減少し、従来の公衆交換電話網(PSTN)の設備が老朽化しているためです。
(画像引用元:NTT東日本公式Twitter)
時報や天気予報などの音声サービスや、利用が多いサービスは継続して利用できます。
なお、この仕組みはこちらの記事で詳しく解説しています。
固定電話はなぜなくなる?IP電話へと切り替わる理由
先述した通り、従来の固定電話サービスがIP電話へと切り替わる理由は、利用者数の減少と設備の老朽化です。さらに、固定電話サービスで利用されている中継交換機も、老朽化により2025年頃には維持が限界を迎えます。
(画像引用元:総務省 情報通信白書のポイント)
光ファイバーを使用することで、長距離通話の低価格化が可能になります。
IP電話を導入している電話サービスの例
電話サービスでは「IP電話」はすでに一般的。代表的なサービスは、フレッツ光とセットで利用できる「ひかり電話」です。
IP電話の最大のメリットは、インターネット回線を利用して音声通話を行うため通話料金は距離に関係なく一律であること。各プロバイダーやCATV会社が提供する050で始まる電話番号や、LINEやSkypeなどもIP電話の一種です。
基本料金はどう変わる? | 通話料が一律化される
従来の固定電話がIP網への移⾏後は、通話料が変更されます。まずは固定電話で発信した場合の通話料を見てみましょう。
従来の固定電話(税込価格) | IP網移行後(税込価格) | |
固定電話着 (単一区域内通話) |
8~23時:9.35円/3分 (市外通話は11円/45秒) 23~8時:9.35円/4分 (市外通話は11円/90秒) |
9.35円/3分(全国一律・全時間帯) |
携帯電話着 | 17.6円/分 | 17.6円/分(現状と同額) |
050IP電話着 | 11.55~11.88円/3分 (IP電話事業者で異なる) |
11.55円 |
続いて、公衆電話から発信した場合の通話料です。
従来の固定電話(税込価格) | IP網移行後(税込価格) | |
固定電話着 (区域内通話) |
8~23時:8~56秒/10円 23~8時:13.5~76秒/10円 ※通話時間は距離で異なる |
9.35円/3分(全国一律・全時間帯) |
携帯電話着 | 15.5秒/10円 | 15.5秒/10円(現状と同額) |
050IP電話着 | 17.0~18.0秒/10円 (IP電話事業者で異なる) |
18.0秒/10円 |
最後に「フリーアクセス」の通話料です。なお「フリーアクセス」とは、「0800」や「0120」から始まる、同一府県内専用の着払いサービスです。
従来の固定電話(税込価格) | IP網移行後(税込価格) | |
固定電話発 | 8~23時:9.35円/3分~11円/45秒 23~8時:9.35円/4分~11円/90秒 ※通話料は距離段階・時間帯で異なる |
9.35円/3分(全国一律・全時間帯) |
携帯電話発 | 8~19時:11円/15秒 19~8時:11円/16.5秒 |
15秒/11円 |
公衆電話発 | 8~19時:11円/9~62秒 19~23時:11円/13.5~62秒 23~8時:11円/15~82秒 ※通話料は距離段階で異なる |
62秒/11円 |
従来、固定電話の通話料は時間帯や距離に応じた価格でしたが、2024年以降は全時間帯・全国一律で3分9.35円になります。なお、基本料金(回線使用料)に変更はありません。
IP電話への移行後もイチリッツなどの割引は利用できる?
移行後、「イチリッツ」、「スーパーケンタくん」などの料金割引サービスは廃止され、すべて一律料金となります。
固定電話がIP網サービスへ移行するメリット・デメリット
従来の固定電話が終了し、IP網サービスへ移行後のメリット・デメリットを紹介します。
【メリット】高速通信が可能かつノイズが少ない
IP網サービスでは、デジタルデータの伝送方式を、ノイズが少ない差動伝送を採用。ノーマルモードノイズやコモンモードノイズなどを低減し、通信障害を防止可能です。
音声だけでなく、動画やテキストなどのデータ通信と共用が可能になるのもポイント。高速通信網を利用するため、サービスの充実が期待されます。
なお、光回線が通っていない場合は、メタルIP電話が提供されます。切り替えにあたり、利用者の申し込みなどは必要ありません。
【デメリット】ISDNディジタル通信モードが使用できなくなる
ISDNサービス・INSネット「ディジタル通信モード」とは、「INSネットサービスに標準で具備された主にデータ伝送に特化した通信モード」のこと。IP網への移行に伴い廃止されます。
ISDN回線そのものがなくなるわけではありませんが、以下のサービスは利用できなくなる可能性があります。
・POSシステム
・CAT端末(クレジットカード会社と店舗間の通信)
・EDI(メーカー・卸売り・小売の間での商品受注に関する通信)
・警備端末(監視映像の相互通信)
・レセプトオンライン請求(診療報酬などのデータ通信)
・銀行ATM
・G4FAX(FAXの送受信)
解決策として、インターネット回線を使った「Web-EDI」が注目を集めていますが、標準化されていないこともあり、導入は困難。「ディジタル通信モード」は、提供終了後も2027年ごろまでは補完策が提供される予定のため、その間に対策を進めましょう。
【デメリット】一部の電話サービスの提供が終了する
先述した通り、IP網への移行に伴い、さまざまなサービスが終了します。
・INSネット(ディジタル通信モード)
・ビル電話
・着信用電話
・支店代行電話
・有線放送電話接続電話
・短縮ダイヤル
・キャッチホン・ディスプレイ
・ナンバー・アナウンス
・でんわばん
・トーキー案内
・発着信専用機能
・ノーリンギング通信
・二重番号サービス
・トリオホン
・なりわけサービス
・114(お話中調べ)
・空いたらお知らせ159
・ナンバーお知らせ136
また、「ディジタル通信モード」以外にも、以下のような一部電話サービスが終了します。
(画像引用元: NTT西日本公式サイト)
「マイライン・マイラインプラス」の終了に伴い、フレッツ・ADSLやフレッツ・ISDNの月額利用料を10%割り引く「マイラインプラスセット割引」も終了。「マイラインプラスセット割引」以外で、終了となるサービスは以下の通りです。
・イチリッツ
・ケンタくん
・ケンタくん5
・スーパーケンタくん
・タイムプラス
・ISNタイムプラス
・エリアプラス
・ISNエリアプラス
・テレホーダイ
・ISNテレホーダイ
・i・アイプラン
・i・スクール
・ワリマックス
・ワリマックス・プラス
・ワリビッグ
・ワリエース
・プレミレート
・プロフィッツ
・プロセレクト
・プロスペクト
・県内異名義割引
なお、いずれのサービスも2024年1月のサービス終了までは、これまで通り利用できます。
固定電話とIP電話の比較
固定電話とIP電話を、回線・導入費用・サービス内容などの観点から比較してみましょう。
電話回線
従来の固定電話はアナログ電話が主流で、交換局を経由して音声を伝達するのに対し、IP電話では、音声をインターネット回線で送受信できるデジタル信号に変換して、音声をやりとりします。
つまり、固定電話は音声信号がそのまま伝達され、IP電話では音声信号がデジタル信号に変換されてから伝達されるということです。
導入費用・通話料金
これまでは通話相手との距離が遠くなるほど、経由する交換局が増えるため、通話料金は高くなっていました。一方で、IP電話の場合は、インターネット回線を利用した通話となるため、全国一律の料金形態です。
固定電話とIP電話の導入費用と通話料を見てみましょう。
・固定電話:導入費用は43,000円(電話加入権を新規購入した場合)ほど。通話料は月額1,500~2,000円程度。
・IP電話:導入費用は2,000~3,000円(インターネット回線がある場合)ほど。通話料は月額500円程度。
また、IP電話は電話加入権の取得は必要ありません。導入費用が安いのも、IP電話のメリットです。
サービス内容
一般的な用途での電話利用であれば、IP電話への移行で大きくデメリットを感じることはないでしょう。一方で「思い出深いサービスが終了してしまう」のは事実。
先述した通り、固定電話が終了するに伴い、マイラインとマイラインプラスが廃止。マイラインとマイラインプラスが廃止されるに伴い、そのいずれかとの契約で利用できる「テレホーダイ」もサービスが終了します。
(画像引用元: NTT東日本公式サイト)
「テレホ」の愛称でも親しまれていた「テレホーダイ」ですが、使用できるのは2023年12月31日までです。
固定電話のIP電話への移行や料金についてよくある質問
固定電話のIP電話への移行についてよくある疑問を解決します。
IP電話への移行にあたって利用者側で対応することはある?
2024年の固定電話終了はNTT側が自社設備を刷新する形で行われるため、利用者側で対応が必要なことはとくにありません。ただし、先述のマイライン・マイラインプラス・テレホーダイなどの各種サービスの終了は事前に確認しておくと安心でしょう。
固定電話代の平均はどのくらい?
固定電話の毎月の平均額は2500円程度と言われています。どこに・どれくらいの時間の電話を掛けていたかによりますが、遠距離通話が多い人は、IP電話化によって安くなるでしょう。
電話料金が気になる場合は、後述するソフトバンクの「おうちのでんわ」などのサービス導入を検討するのがおすすめです。
固定電話の基本料金や通話料金を安くしたい場合はどうしたらいい?
固定電話料金を節約したい場合の有力な選択肢のひとつがソフトバンクの「おうちのでんわ」。専用機器の「でんわユニット」と電話機を接続して、LTEネットワークを介した通話が可能な固定電話サービスです。
(画像引用元: ソフトバンク公式サイト)
「おうちのでんわ」と固定電話の月額料金を比較してみましょう。
おうちのでんわ | 基本料金 | でんわユニット割賦金 (36回分割払い) |
月月割 | 合計 |
1,078円 | 474円(×36回) | -474円(36回) | 1,078円 | |
ひかり電話 (フレッツ光ネクスト ギガファミリー・ スマートタイプを利用した場合) |
ひかり電話・利用料 | 月額利用料 | 合計 | |
550円 | 6,270円 | 6,820円 | ||
NTT加入電話・住宅用 (NTT東日本・プッシュ回線用) |
3級取引所 | 2級取引所 | 1級取引所 | |
1,870円 | 1,760円 | 1,760円 |
「おうちのでんわ」の月額料金は、NTT東日本の加入電話よりも、最大で792円安く利用可能。SoftBankユーザーは、携帯電話への料金も無料になるため、さらにお得に利用できるでしょう。
まとめ
固定電話は「すべて終了」となる訳ではありません。従来の回線からIP網へと切り替わりはするものの、2024年1月以降も継続して利用できます。
ただし、使用する回線の変更に伴い、さまざまなサービスや割引が終了となるのは事実。通話料と月額料金を比べて、必要時は「おうちのでんわ」のような、よりお得な電話を利用するといいでしょう。
※サムネイル画像は(Image:「photoAC」より)