AppleではこれまでiPhoneをはじめ、多くの製品の製造を中国の工場で行ってきたが、近年では一方で脱中国の動きも進めている。ここで台頭してきたのがインドと言われており、最新の「iPhone 15」シリーズの製造も手掛けているが、どうやらこのインド製、中国では評判が悪いようだ。
中国SNSで広がる「インド製iPhone 15は品質が悪い」というデマ
海外のニュースメディア・Bloombergの報じたところによれば、X(旧Twitter)で「インドの製造ラインから出てくるiPhone 15は動物由来の物質で汚染されている」という偽りの情報が拡散されているという。また、中国SNSの「Weibo(微博)」でも、「ヨーロッパの消費者が品質の悪さを理由にインド製のiPhoneを拒否。代替品として中国製のものが送られている」といったデマが広がっているそうだ。
インド製iPhoneを巡り、こうしたフェイクニュースが氾濫する理由について、Bloombergでは「中国が世界のiPhoneの大部分を製造しているという事実」に由来すると指摘。iPhone製造のため中国全土で100万人以上の雇用を提供しており、その技術力と製造力に誇りを持つがゆえの“反インド感情”の爆発ということなのだろう。
福島第一原発の処理水海洋放出の際、同様に中国SNSにフェイクニュースが飛び交い、日本国内の(多くは無関係のところに)にいたずら電話が相次いだのは記憶に新しい。あるいはインドでも、同様の事態が発生しているのかもしれない。
脱中国を進めるアップルだが、蜜月関係はまだまだ続きそう
これまでもUSB-C端子の内側の刻印を見れば製造国が判別できることは紹介してきた。日本に流通するiPhoneシリーズにも「China」の刻印が刻まれており、iPhone製造の主軸を担っていることは明白だ。しかし、Appleにしても中国だけに頼るわけにはいかないのが実情だ。コロナ禍の2022年には、政府のゼロコロナ政策により、中国の工場で大規模なロックダウンが起きた結果、「iPhone 14 Pro」「iPhone 14 Pro Max」の製造に大幅な遅れが発生したという苦い経験がある。さらに、近年では米中の関係も決して良好とは言えない。そういう中で今後も中国一国に頼るのはリスクが大きいと考えるのは、至極当然と考えられる。
もっとも、AppleのCEOであるティム・クックは、インドでより多くのビジネスをしたいと述べる一方、2023年初めには、Appleと中国との関係を「共生的」と呼んでおり、今後も関係自体は続けていくことを示唆している。Bloombergでも、「中国におけるアップルの生産能力のわずか10%を移転するのにも、8年はかかる」と予測。中国製以外のiPhoneが大部分を占めるようになるよりも、“スマホの次”にあたるガジェットを見つける方が先かもしれない、と皮肉交じりにコメントしている。たかがスマホというなかれ、Appleほどのジャイアントカンパニー、iPhoneという世界的人気スマホが国際情勢にも影響を与えるほどの存在であることがよくわかる出来事だ。
※サムネイル画像(Image:Ringo Chiu / Shutterstock.com)