意外と知らない「携帯ストラップ」はなぜケータイ文化として廃れたのか

この記事をお読みの方の中にも、かつて携帯電話にいくつも大量に「携帯ストラップ」を付けていた方もいるのでは?ガラケーにはかつてストラップを通す穴があり、たとえばカップルで同じストラップを付けるのはごく自然な光景でした。しかし、スマホが台頭してからは、ガラケー時代ほどには「携帯ストラップ」を付ける人を見かける機会が減ったのでは?

ではなぜ、ガラケー時代に極めて愛用者が多かった「携帯ストラップ」は、スマホに代わっただけで下火になったのでしょうか?

ガラケー時代「携帯ストラップ」はどれくらい売れた?

携帯ストラップは「携帯電話」が1990年代に一般層に普及し始めて、すぐに人気のアクセサリーとなりました。1990年代に特に爆発的な人気となったのが、1998年に渋谷109で販売された「ハイビスカスの造花が付いた携帯ストラップ」。10日間で2万本が売れた大ヒット商品となりました。

「根付文化」がある日本ならではのヒット商品だった側面も

携帯ストラップがなぜ「携帯電話が市場に広まるとともに、瞬く間にヒット商品になったのか」という点には、様々な要因があります。数ある要因の中でも、文化的背景とセットで指摘されるケースが多いのが「根付文化」との親和性です。

「根付文化」がある日本・海外の違い1

日本では江戸時代から「根付」という装飾品を着ける文化があります。根付とは提物を携行するために帯に引っ掛ける留め具のこと。

つまり「モノを携帯する際には留め具をする」のは日本的な文化の1つで、電話を持ち歩くのに留め具をする感覚で「携帯ストラップ」を自然と取り入れたユーザーが多く存在した可能性があります。

事実として筆者もガラケー時代は携帯ストラップを使い、ポケットに携帯電話を入れる際は「はみ出したストラップ自体がファッションの一部」となるように、カバンに入れる際は「ストラップを取り出せばすぐに携帯が見つかるように」使用していました。おしゃれな留め具感覚であったことは、個人的な体験としても間違いありません。

iPhoneに代表されるスマートフォンが普及してからは良くも悪くも「ケースにステッカーを挟む程度」のカスタムが増加。絵文字が世界標準となるなど「ケータイ文化が世界で花開いた」側面もある一方で、携帯ストラップのような日本的な楽しみ方は消えてしまった感も否めません。

アーティストやキャラクターのグッズとしての「携帯ストラップ」

1990年代から2000年代にかけては、人気アーティストや人気キャラクターのグッズとしての携帯ストラップも多く発売されました。たとえばNHKの朝ドラ「ちゅらさん」(※2001年上半期放送)の人気キャラクター「ゴーヤーマン」の携帯ストラップが、放映当時発売されて人気アイテムに。

ゴーヤーマン ストラップ

ちゅらさん ゴーヤーマン ストラップ

画像は「Amazon」公式サイトより引用

なお「ちゅらさん」はNHKの朝ドラの中でも根強い人気を誇る一作であり、2024年現在はNHK総合などにて再放送中。「ゴーヤーマン」も再ブレイク中であり、マスコットキャラクターのキーホルダーなどがアクセサリーとしていまでも人気を集めています。

携帯電話に「携帯ストラップ」を付けなくなった理由は?

先にも述べた通り、1990年代~2000年代にかけて携帯ストラップは爆発的に流行し「市場から好意的に受け入れられたアクセサリー」だったと言えます。

しかし00年代後半からスマホが普及し始めると、携帯ストラップを目にする機会は急速に減少していきました。その最も大きい原因は、スマホに「ストラップホール」がないことです。
スマホは「薄さ」や「高性能化」を競う一方で、ストラップホールのように「使うかもしれないし、使わないかもしれない」機構は端末そのものからは廃される傾向が強いです。その分、アプリには遊び心があるとも言えるかもしれません。

余談ですが「必要とは言い切れない機構」を廃する傾向は、年々強まっていると言えるでしょう。たとえば、かつてスマホにはイヤホンジャックがあり、イヤホンジャックアクセサリーなどを付けることができました。しかし、近年はイヤホンジャックも廃止の方向に。

携帯電話に「携帯ストラップ」を付けなくなった理由は?1

スマホは、アクセサリーを付ける方法のバリエーションが「極端に少ない」端末であるとも言えるかもしれません。

携帯アクセサリーの人気が「ケース」「スマホショルダー」へ移り変わった

ガラケーは良くも悪くも「携帯電話でできること」に限界がありました。つまり、出かける際には携帯電話に加え、手帳や財布など多くの荷物が必要です。よってストラップは「カバンに入れた携帯電話がどこにあるのか分かりやすくする目印」として、留め具的な役割がありました。冒頭でも述べた根付文化と携帯ストラップの親和性は、こうした実用的な面に現れています。

一方で2024年現在は、スマホ一台に「手帳」「財布」などの役割が集約されており、スマホ一台+マネークリップなどで最低限の現金を保有していれば、外に出かけても困る場面は少ないでしょう。

そのため留め具的なストラップより、「スマホそのものを持ち運ぶカバン」としてスマホショルダーの人気が拡大傾向にあります。またあらゆる機能が集約されている「スマホ本体」の故障リスクを軽減し、なおかつ個性を演出するアイテムとしてスマホケースの人気は盤石となりました。

つまり携帯電話の周辺機器に対して求められる役割が、90年代~00年代は「留め具」だったのに対し、2024年現在は「カバン」であり「保護」であると言えるかもしれません。

端末の耐久性

携帯電話の周辺アクセサリーに求められる機能が「留め具」から「保護」もしくは「カバン」に移行した、と書くと「いやいや、00年代だって携帯電話が故障したら困った」と思う方も少なくないでしょう。

00年代であろうと、携帯電話の故障が一大事であったことは言うまでもありません。しかし「故障に伴う、金銭的な損失」の額面で考えると、ガラケーとスマホには大きな差があることは否めません。

実は、ガラケーの時代は「端末価格自体が安かった」という特徴があります。たとえばau design projectを代表する「INFOBAR」「talby」の定価はともに1万円台半ばでした。

端末の耐久性1

(画像は「KDDI」公式サイトより引用)

つまり、良くも悪くもガラケーは「留め具を付けてもなお、端末に傷が付いたり、故障したり、紛失してしまうならば仕方ない」と諦めが付く価格帯だったと言えるのではないでしょうか。

一方、ガラケーの時代に比べ、2024年現在のスマホは10万円台の端末が珍しくなく、極めて高級化が進んでいると言えます。よってストラップによって端末に傷がつくことに抵抗感があり、どちらかと言えば頑丈なケースに入れた上で液晶を保護しながら使うニーズが高まった可能性が高いでしょう。

「携帯ストラップと相性が良い価格帯」からスマホ自体が乖離した可能性がある

ガラケーとスマホは、同じ「携帯電話」としてしばしば比較対象になります。しかし『1万円台半ばが当たり前だった「ガラケー」』『10万円前後が当たり前である「スマホ」』には価格帯にそもそも大きな開きがあり、その周辺機器やアクセサリーに求められる役割にも違いがあるのは当然であるとも言えるでしょう。

スマホを「ガラケーの後継」と捉えるならば、端末価格そのものがあまりに高騰しすぎているのが2024年時点の現状かもしれません。極めて高価な端末に対しては「ストラップを付ける」ことよりも「ケースやカバンで携行性を高めたり、端末自体を保護する」のを優先するのは自然なことです。

裏を返せば、安価であり、なおかつ「留め具を付けてもなお傷ついたり、故障したり、紛失してしまうなら仕方がない」と諦めがつく価格帯の通信機器には「スマホとは別のニーズ」がいまでもあるのかもしれません。

※サムネイル画像は(Image:「photoAC」より引用)

オトナライフ編集部
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