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「固定電話は不要」の時代が遠のく? 足踏み状態が続くNTT法見直しの議論

スマートフォンの普及に伴い、固定電話の契約数は年々減少を続けています。この状況を受けて、「固定電話網の維持はどの程度必要なのか」「過疎地や採算が取れない地域でも固定電話の維持が必要なのか」「携帯電話を新たなユニバーサルサービスの中心にすべきではないか」といった議論が浮上しています。

これらの論点に関連するトピックの一つが、NTTに固定電話サービスの提供義務を課している「NTT法」の見直しです。このNTT法の見直しは現在、議論が停滞している状況にあります。一方で、固定電話の需要が減少しているのは事実ですが、「固定電話が完全に不要となる時代」はまだ遠い未来の話と言えそうです。

固定電話はもう不要?

固定電話はもう不要?1

(画像は「photoAC」より引用)

総務省が2024年6月に発表した「令和5年通信利用動向調査の結果」によると、固定電話の保有状況は令和5年時点で57.9%。前年が63.9%だったため、6.0ポイントのダウンとなっています。同年の携帯電話およびスマートフォンの保有率が97.4%であることを考えると、非常に低い数字。携帯電話やスマホの普及で、固定電話の必要性が薄れていると言えます。

NTTは「全国一律での固定電話提供」の責務を負う

20代・30代の世帯での固定電話の普及率が1割を切るなど、特に若年層にとっては不要になりつつある固定電話。そこで急浮上している議論が「NTT法の見直し」です。

現行のNTT法では、NTTに対して「全国一律での固定電話提供」の責務が課せられています。これは、地域や環境に関わらず、すべての国民に平等に通信サービスを提供するという公共性の高い役割を担っているためです。これにより、NTTは採算の取れない地域でも固定電話サービスを継続しなければなりません。

そこでNTTは、対象通信サービスを固定電話ではなく携帯電話を中心に制度を再設計することを求めています。これには固定電話の需要減少や携帯電話が高齢者も含めて極めて広く普及したことに伴う見直しと、固定電話をそれでもなお維持し続けるためのインフラ面のコストの大きさなどが要因として挙げられます。

NTT法が廃止されるとどうなる?

「携帯電話中心のユニバーサルサービス設計」であればNTT法の「見直し」に該当します。しかしNTT法の議論は「廃止」まで飛び火しています。

NTT法が廃止されるとどうなる?1

(画像は「NTT」公式サイトより引用)

前述した「モバイル中心にユニバーサルサービスを再設計する」という議論に加え、様々な要因が組み合わさり、NTT法見直しの議論は「NTT法廃止」の議論へと発展しています。

そもそもNTTはNTT法により、政府が株式の3分の1以上を保有すると定められています。NTT法が廃止されると、約5兆円とも言われている政府保有のNTT株が売却可能となるため、防衛費の財源などに当てることが可能に。しかし、売却された株が外資系企業によって買い占められた場合、安全保障上の問題や、NTTの経営が海外企業に左右されるおそれがあります。

NTT法が廃止された場合、NTTは「ユニバーサルサービスとしての固定電話の提供」からは解放されますが、このように複雑な事情が絡み合っているため、簡単に廃止にはできないのが現状となっています。

ソフトバンクやKDDIはNTT法廃止に反対の立場を示す

NTT廃止論に対し、ソフトバンクやKDDIははっきりと反対の立場を示しています。その理由は、NTTが当時25兆円ものお金をかけて、通信インフラを整備し、その通信インフラを大手キャリアも利用しており、その費用はNTTの電話加入権によって賄われています。NTT法がある限りは「国民共有の公的資産」扱いですが、NTT法が廃止された場合、他社がどう利用できるかは不透明となっています。

NTT法が廃止されて完全民営化された場合「電話加入権」は返還される?

仮にNTT法が廃止された場合、NTTを契約する際に必要な電話加入権を得るための「施設設置負担金」が返金されるかどうかまではまだ議論が進んでいません。しかし、ソフトバンクの代表取締役社長執行役員兼CEOの宮川潤一氏はNTT法廃止議論について言及した際、「当然(電話加入権を)国民に返すべきという議論もあって然るべき」と指摘しています。

全国一律の「固定電話」提供は当面継続へ

NTT法見直しを議論する総務省の3作業部会が10月に公表した報告書案では、冒頭で述べたユニバーサルサービスを固定電話からモバイルを軸に移行するというNTTの提案を総務省が退け、NTT法廃止の議論は停滞している状況です。

当初、NTT法廃止は2025年までに実施されるとの結論が一度は出ていました。しかし、現状ではその実現は難しく、過疎地域などで固定電話の提供が直ちに終了するということはなさそうです。

一方、固定電話の普及率が低下し、スマートフォンがシニア層にも広く普及している現状を踏まえると、「モバイル」を中心としたユニバーサルサービスへの再設計というNTTの提案には一定の説得力があります。

また、NTT法に関する議論が「見直し」と「廃止」の両方向で進んでいる点も注目に値します。例えば、完全民営化が実現した場合、NTTの通信インフラの原資である「電話加入権」が重要な論点となる可能性があります。電話加入権の返還が議論されないまま、膨大な通信インフラが一民間企業の所有物となることについては、安全保障や公平性の観点からも注目が集まるでしょう。

総じて、議論は「モバイル中心のユニバーサルサービスの再設計」を超え、多岐にわたる課題に発展しています。当面は「固定電話」提供は続くと見られます。

オトナライフ編集部
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