スマホが登場する以前、携帯電話で音楽を楽しむには「着うた」が主な手段でした。女優の仲間由紀恵さんが静かに横たわり、ORANGE RANGEの『花』をヘッドホンで聴くKDDIの「着うたフル」のCMをいまだに覚えているという人も少なくないでしょう。
「着うた」が登場したのは2002年、その「着うた」のフル尺版に相当する「着うたフル」が登場したのは2004年のことです。つまり2024年は「着うたフル」登場から20年のアニバーサリーです。とはいえ2024年現在「着うたフル」は廃れた存在と言えるでしょう。「着うたフル」が廃れた理由は何だったのでしょうか?
「着うたフル」の登場から20年
「着うたフル」は、従来型の携帯電話向けの音楽配信サービスの一種でした。曲の一部分だけを提供する従来の「着うた」や「着メロ」とは異なり、1曲全体をダウンロードし、楽しむことができた点が特徴です。
2004年にauでサービスが開始され、その後、ほかのキャリアでも提供されるようになりました。ダウンロードした楽曲は着信音として設定したり、携帯電話のマルチメディアプレーヤーで再生することができました。
MP3プレーヤーに購入したファイルやCDからリッピングした音源をパソコンから転送するといった手間がなく「携帯電話単体で完結する音楽サービス」であった点は、00年代当時の音楽サービスとして画期的であり、「着うた」の市場規模は瞬く間に拡大しました。こうした「着うたフル」は、2024年で登場から20周年を迎えたことになります。
※「着メロ」は株式会社YOZANの登録商標です。
全盛期の「着うた」の市場規模はどれくらいだったの?
総務省による「モバイルコンテンツの産業構造実態に関する別添 調査結果(平成24年)」によると、「着うたフル」の市場は2009年に769億円でピークを迎えています(「着うた」系全体の市場では1,201億円)。2000年代に入りCDの売上が年々減少していた中でも、「着うた」はむしろ成長を続けていたことになります。
「着うた」が廃れた理由
「着うた」が廃れた理由としては、スマホの普及、4G回線の普及が考えられます。
スマホの普及
「着うた」が衰退していった主な理由の一つは、スマートフォンの急速な普及です。総務省の「モバイルコンテンツの産業構造実態に関する別添 調査結果(平成24年)」を見てみると、「着うた」市場は2012年には554億円と、ピークだった2009年からわずか3年で半分以下に。この時期はちょうどスマホの普及が始まったタイミングと重なっています。
スマホの普及時期に「着うた」の市場規模が縮小に向かった理由としては、「着うた」の配信サービスが「ガラケー向け」に展開されていたことが大きな要因だと考えられます。
4G回線の普及
「着うた」が廃れたもう一つの要因として、4G回線の普及が挙げられます。2010年~2012年にかけて各携帯電話会社が4G回線の提供を開始。高速なモバイルインターネット接続が可能になりました。
4G回線の普及により、3G回線と比較して高速なデータ通信が実現しました。そのため早くからスマホ対応が進んでいた「YouTube」「ニコニコ動画」などでMVや楽曲を視聴するユーザーが増えたと考えられます。
「着うた」をいまでも使いたいときはどうすればいい?
「着うた」をいまでも使いたい場合、「楽曲を着信音に設定すること」はいまでも可能です。
たとえばiPhoneの場合、iTunesで楽曲のAACバージョンを作ってから拡張子を「.m4a」から「.m4r」に変更。そのファイルをiPhoneに同期させ、設定アプリ→「設定」→「サウンドと触覚」→「着信音」から設定できます。
※サムネイル画像は(Image:「photoAC」より引用)