第4のキャリア「楽天モバイル」は、2020年4月にデータ無制限&1年間無料で華々しくスタートした。ところが、5月27日からは新たにスマホを1円でバラ撒くキャンペーンを実施している。こんなに大盤振る舞いしているのに、どうやら楽天モバイルの加入者は思ったほど増えていないようなのだ。今回はその背景を探ってみる。
楽天モバイルはどうしてスマホを1円で売るのか?
2020年4月、鳴り物入りでスタートした第4のキャリア(MNO)「楽天モバイル」だが、2020年5月27日から小型スマホ「Rakuten Mini」を1円で販売するキャンペーンを開始した。
楽天モバイルは当初、データ無制限で月額2,980円の「UN-LIMIT」プランを1年間無料にして話題となった(先着300万名)。ところが、肝心なデータ無制限はまだ未整備の自社回線のみで、ローミング先のau回線は2GBまでの制限があったのだ。この辺りの事情は『楽天モバイルが2,980円の無制限プランを発表! ただし楽天回線エリア外は2GBまでという罠』を参考にしてもらいたい。さすがに現在は、au回線も5GBまで利用可能な「UN-LIMIT 2.0」に改められたが、それでも加入者は思うように増えていないようだ。
そこで、更なる加入者獲得のため、自社オリジナル小型スマホ「Rakuten Mini」を、1円で提供するキャンペーンに踏み切ったというわけである。
実は格安SIMの楽天ユーザーが乗り換えないのが痛い!?
今回1円で販売される「Rakuten Mini」は決して性能の悪いスマホではない。FeliCa搭載端末としては世界最小・最軽量を誇り、SIMカードを挿す代わりに本体チップに契約情報を書き込める「eSIM」方式を採用している先進的なスマホである。しかも、最近まで2万1800円(税込)で販売されていたものだ。どうして楽天は、こんな先進的なスマホをたった1円でバラ撒く必要があったのだろうか?
楽天のキャリア(MNO)事業は、いまだ全国にアンテナを設置している真っ最中。MNO事業への投資の影響もあって、楽天の2020年第1四半期決算は241億円もの赤字となっている。そのために、2020年6月に予定していた高速5Gサービスも3カ月ほど延期することになった。このままでは、楽天のキャリア事業は厳しい。そこで急遽、加入者獲得を狙った1円スマホキャンペーンが実施されたと考えられるのだ。
楽天にとってもうひとつの誤算は、格安SIM(MVNO)の楽天モバイルユーザーが、思ったほどキャリア(MNO)としての楽天モバイルに乗り換えていないことにある。実は、ドコモ回線を利用する格安SIMの楽天モバイルはすでに230万もの契約があり、MNOにそのまま乗り換えてくれれば、目標の300万ユーザーはあっさり達成できるハズだったのである。
楽天モバイルは「1年間無料」「データ使い放題」「最新スマホが1円」「いつ解約してもいい」という破格の条件を提示している。にもかかわらず、どうしてみんな楽天モバイルに乗り換えないのだろうか? 筆者はその答えはまったく別のところにあると考えている。
筆者は数年前、いつになってもドコモから格安SIMに乗り換えない友人に「年間5万円以上は得だよ」「電話番号も変わらないよ」と必死に格安SIMへの乗り換えを薦めことがある。だが、返ってきた答えは「面倒くさい」だった。ほかの友人も「とくに困ってない」「手続きがかわらない」「店舗がないと困る」といった感じである。“これはもはや理屈ではない”と感じた筆者は、それ以降、友人に格安SIMの話は一切していない。
つまり、楽天モバイルがどんな大盤振る舞いをしても、おそらく何十年もドコモを使っているおじさん層には何も響かないのである。だって面倒くさいんだから……。
参照元:楽天モバイルが契約数示さず まだ見えない事業の道筋【日経ビジネス】
●楽天モバイル(公式)は→こちら
●楽天モバイル「【Rakuten UN-LIMITお申し込み特典】Rakuten Mini本体代が1円キャンペーン」(公式)→こちら