現在はビルの屋上や郊外に鉄塔として設置されていることの多い携帯電話の通信基地局が、将来はすべて空の上に浮かぶことになるかもしれない。そんな未来を実現するべく、ヘリコプター等の機能を備えた無人航空機型の基地局の開発が、4大キャリアを中心に進められている。2011年の東日本大震災の際には多数の基地局が停止し大きな通信障害が起き、もはや現代ではスマートフォンが人々の生活に欠かせないライフラインであることが改めて認識された。
今回は、そんな災害時にも役立つ“空飛ぶ基地局”についてお伝えしていきたい。
ヘリ搭載型など、進化が続くスマホの基地局
auを運営するKDDIは2月25日、仙台市で行われた「2021 KDDI 災害対策訓練」で、実証実験中の「ヘリコプター基地局」を披露した。小型化された基地局をヘリに積み込み上空を飛行することで、移動可能な空飛ぶ基地局として有事の際に通信網が寸断された地域の通信を一時的に復活させられるほか、携帯電話の発する電波をつかみ要救助者の捜索にも役立てられるという。
このような空飛ぶ基地局はKDDIだけでなく他のキャリアでも開発を進められている。ソフトバンクでは傘下のHAPSモバイルが、2020年10月に地上20kmの成層圏を飛行する無人航空機でのLTEの通信に成功。楽天モバイルは宇宙空間に基地局を置き、地上に電波を飛ばすことで災害時にも利用できる衛星通信ネットワークを構築する「スペースモバイル計画」を進めている。ドコモも2月1日に欧州航空機大手・エアバス、フィンランド通信大手・ノキアの2社と空飛ぶ基地局の開発に向けた共同研究を実施する覚書を結んだことを発表した。
中でもソフトバンクの無人航空機は翼に太陽光発電のためのパネルが敷き詰められており、その電気を使って数ヶ月の間飛び続けることができるようだ。常時被災地の上を飛び続けていてくれたとすれば、道路や通信網に被害を受けて助けを呼べなくなってしまった地域の人たちも積極的にSOSを発信していけることだろう。
こうした空飛ぶ基地局が開発され改良が重ねられていったとすれば、未来の世の中では基地局がドローンのように進化し、ビルの屋上等から“空の上”に移っていくことになるかもしれない。もしそうなれば、現在よりも格段に基地局設置の自由度が増して、各社の通信エリアもさらに向上していくことになりそうだ。
しかし世の中には、世界遺産・白川郷にある「合掌造り風基地局」のようなユニークな基地局もあるため、面白い名物基地局が見られなくなるとしたらそれはそれで寂しいものがあるかもしれない。今後の基地局の進化は、そうした面白さと利便性のバランスを取りながら進めていってもらいたい。
参照元:災害に備え「空飛ぶ携帯基地局」続々…ヘリ搭載、上空に数か月滞在の無人機も【読売新聞オンライン】