楽天グループが現在総力を結集してサービスの拡大に注力している楽天モバイルに、新たな追い風が吹くかもしれない。楽天モバイルが以前から求めていた、電波の周波数帯の再配分の検討を活発化させる動きが起こってきているのだ。これまでは既存の3キャリアに比べてあまり良い条件の枠を与えられていなかった楽天モバイルだが、ついに念願の“プラチナバンド”獲得の可能性が見えてきた。
今回の「再配分検討」の報道で楽天モバイルが得られるであろうメリットや、再配分によって今後どのような展開が訪れるのかを考えていきたい。
周波数帯の配分の見直しが進む?
2020年中頃から活発に携帯電話業界の変革を促している総務省は4月5日、周波数帯の再配分を可能にする制度整備のため有識者会議で議論された内容をまとめた。この議論によって携帯電話用周波数帯の有効利用や事業者の新規参入を促し、国民の携帯電話利用がより幅広くより有利な条件を選べるようになることが期待される。
2020年にキャリア参入したばかりの楽天モバイルとしても、新規参入の障壁となる既存キャリアに抑えられていた好条件の電波を獲得できる大きなチャンスとなるだろう。楽天モバイルは2020年の12月にも、総務省の開催した懇談会で「他キャリアと比べ周波数帯の割り当てが少ない」ことや「電波が届きやすいプラチナバンド(800MHz)帯が割り当てられていない」ことなどを訴え是正を求めていた。一方でドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの既存3キャリアは「再配分が実施されると現在の通信設備の改修に多大な費用がかかってしまう」と反対の姿勢を示している。
まさに弱点を補い市場競争力を高めたい新規参入企業と、既得権益を手放したくない既存勢力の対立といった構造だ。
もし検討中の再配分が実際に認められた場合、楽天モバイルにはどのような変化が訪れるのだろうか。一番のポイントは楽天モバイル自身も希望していた“プラチナバンド”を獲得できるかもしれないことだ。
“プラチナバンド”とは、主に700MHz~900MHz帯の周波数帯のことを指す。比較的周波数の低いこの帯域の電波は「障害物の裏にも回り込みやすい」という特性があり、より広いエリアをカバーしやすいのだという。現在基地局を増設しエリアと電波密度を高めることに注力している楽天モバイルとしては、のどから手が出るほど欲しいものであることは想像に難くない。そのため楽天モバイルとしても、今回の検討は再配分の重要性が改めて認識され、再配分が容易になるような制度が誕生することを待ち望んでいることだろう。
この制度整備に関する議論は夏頃をめどに最終報告をまとめるとしている。楽天モバイルも、楽天モバイルに投資を続けていた楽天グループ全体としても、首を長くしてその日を待っていることだろう。
しかしひとつ注意したいのはこれが「事業者の新規参入を促す」目的もあるということ。これから何年、何十年後に楽天モバイルが大手キャリアとして安定した地位を築いたときに、ようやく手に入れた既得権益をあっさり手放さなくてはならないような事態には気をつけていただきたい。
参照元:携帯電波、再配分へ制度整備 新規参入を促進―総務省会議【時事ドットコムニュース】
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