ソフトバンクが、楽天モバイルと楽天モバイルに転職したソフトバンクの元社員に対し訴訟を起こした。5Gに関わる秘密情報を不正に持ち出したとして、10億円の損害賠償や基地局の使用停止を求めているという。事実関係はこれから明らかにされていくことと思うが、訴えられた時点で楽天モバイルのイメージ悪化は避けられないだろう。もしかすると、それもソフトバンクの狙いなのだろうか…?
ソフトバンクが楽天モバイルを提訴
5月6日、携帯キャリア大手のソフトバンクが、元社員と元社員の現在の勤務先である楽天モバイルに対し訴えを起こしたことを発表した。元社員は2019年12月31日までソフトバンクに籍を置いていたが、2020年1月1日付でライバルである楽天モバイルへと転職していた。そして「転職の際に5Gの基地局網の構築に関する情報を持ち出した」とソフトバンクは主張している。
5Gは現在日本でもキャリア各社が普及を進めている新たな通信規格だ。そうした秘密情報やノウハウが外部、ましてやライバル企業、に持ち出されたとしたら、ソフトバンクとしてはそのダメージは計り知れないことだろう。そのダメージの大きさもあってか、今回の全体の損害賠償請求権は約1,000億円もあるといい、まずはそのうちの10億円を請求するに留めたが今後増額される可能性もあるようだ。
一方で元社員の転職先である楽天モバイルは、社内調査のうえ元社員が営業秘密を楽天モバイルの業務で使用していた事実は確認されていないと主張。「裁判において自身の正当性を主張する」と、こちらも全面抗争の構えを示している。
両者の主張が真っ向から対立しているだけに、現時点では元社員がスパイ的な役割を果たしたのかどうかは明らかとなっていない。しかし世間の目としては、今回の一件に限らず訴えられた側に疑惑の目を向けてしまう傾向があることは間違いない。“スパイ容疑のかかった楽天モバイル”という事実はイメージダウンとなる可能性も大いに考えられる。またソフトバンク側は、「持ち出された情報によって楽天モバイルが建設した基地局の使用停止」も求めているといい、現在急ピッチで対応エリアを拡大している楽天モバイルにとってはこちらも気にかかる部分となりそうだ。
ちょうど現在はキャリア各社が新プランを立ち上げて少し経ったタイミング。そろそろサービス開始直後から新プランに移ったユーザーの使用感が世の中に広まりだし、様子見をしていたユーザーも動きはじめる頃だ。そんな中で企業そのもののイメージダウンとなる訴訟を起こされてしまった楽天モバイルは痛手という他ないだろう。
楽天とソフトバンクといえば、楽天経済圏・ソフトバンク経済圏という国内トップクラスの経済圏でも知られる。そんな両者がバチバチと火花を散らしながらぶつかり合うだけに今後のシェア争いにも小さくない影響を与えることになりそうだ。今後も、この訴えの推移と両者の動向から目が離せない。
ソフトバンクが楽天を提訴 「1000億円」損害主張 弱みの通信網整備に逆風【産経新聞】
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