ドコモが三菱UFJ銀行との業務提携を発表した。「新たなデジタル金融サービスの提供」を図った提携だといい、そのための共同会社の設立も検討していることを明かした。しかし改めて見直してみると、携帯キャリア4社のうち自社グループ内に銀行を持っていないのはドコモだけだ。ライバルたちが自社銀行をもつ中で、自社銀行ではなくメガバンクとの提携を選んだドコモの選択ははたして正解と言えるのだろうか…。今回は、ドコモの選んだ道が示す未来について考えていきたい。
ドコモが三菱UFJ銀行との業務提携を発表
ドコモは5月11日、「NTTドコモと三菱UFJ銀行による、デジタル金融サービス提供に向けた業務提携契約の締結について」と題したプレスリリースで、新たな業務提携について発表した。それによれば、2022年の提供開始を目指す「おトク」「便利」「安心」な「dポイントがたまる新たなデジタル口座サービス」を共同開発したり、三菱UFJの銀行口座と「d払い」「ドコモ口座」を連携させたチャージ(入金)連携を検討したりするという。
ドコモは“ドコモ経済圏”の共通ポイント・dポイントを活用した提携で、利便性の向上や三菱UFJに口座をもつユーザーの流入も狙っているのかもしれない。3メガバンクの筆頭とも言える三菱UFJを味方につけるのは、戦略としてはかなり期待値の高い提携と言えるだろう。
しかしドコモや“ドコモ経済圏”のライバルでもあるキャリア各社の経済圏を見てみると、ソフトバンクはPayPay銀行、楽天モバイルは楽天銀行、auはauじぶん銀行など、各経済圏内に銀行を持っている。「提携を結んだグループ外の銀行」と「グループ内の銀行」であれば、後者のほうが深いつながりを持ち、より強力なシナジーを生み出せることは想像に難くない。
さらに提携をしたとしても結局は別々の企業であり、ドコモと三菱UFJで異なる利害のすり合わせという工程が生まれることも考えられる。そうなれば、対応の柔軟性も経済圏の中でつながるライバルに後れを取ってしまうことだろう。
多くのユーザーをもつメガバンクという大きな味方は強力な一方で、「小回りが利きづらい」という弱点を抱えてしまうことになるのかもしれない。はたしてそうした体制で、“ソフトバンク経済圏”や“楽天経済圏”などとの経済圏競争を勝ち抜いていくことはできるのだろうか。
今後ドコモ経済圏が打ち出していく戦略を、しっかりと見極めていきたい。
参照元:NTTドコモと三菱UFJ銀行による、デジタル金融サービス提供に向けた業務提携契約の締結について【NTTドコモ】