アップルがiOS 14.5でプライバシー保護を強化して以降、アメリカで発表された調査結果の中に「iPhoneユーザーの96%がアプリ追跡を無効にした」という事実がわかった。新たなiOSではアプリがユーザーの閲覧情報等を追跡するためには、有効・無効を選ぶプロンプトを表示してユーザーの許可を得ることが必要になった。そこで追跡を許可したのは5%にも満たないのだ。
たしかに近年はプライバシーの保護の重要性が注目されるようになり、「追跡=悪」という図式ができあがりつつある。しかしあたらめて振り返ってみると、はたしてそれは無条件で成立する図式なのだろうか…?今回は、この調査結果から「追跡を無効にする」メリットとデメリットについて考えていきたい。
アメリカで“追跡を有効”にしたiPhoneユーザーはわずか4%
分析会社・Flurryが行った調査は、アメリカ国内で毎日250万人のアクティブなモバイルユーザーを対象として、iOS 14.5のリリース以降、1日ごとのデータを取るというもの。その結果によれば、96%がオプトアウトして追跡を無効にしたことが明らかとなった。また、調査対象を広げサンプリング対象が530万人となった“全世界”版の調査においても、どの調査日でもおおよそ88%のユーザーが追跡を無効にしていたという。
結局、アメリカで追跡を有効にしていたのは4%前後を推移。世界でも12%前後となり、世界的に「追跡されたくない」というユーザーが大多数を占めることが判明した。
たしかにユーザーがどんなページを閲覧していたかの履歴はとてもセンシティブなもの。「自分の閲覧履歴を知られるのは嫌だ」という思いも、ある意味自然なものと言えるだろう。そうしたプライバシーを守ることができるのが、追跡を無効にするメリットだ。
一方で、近年のサービスでは閲覧履歴を基にユーザーが興味を持ちそうな広告を表示させる「ターゲティング広告」という手法が広く浸透している。いわゆる、ECサイトで見かける「あなたの閲覧履歴に基づいたおすすめ商品」のようなものだ。読者の方々もそうした広告を見て「あ、これいいな」とクリックした経験が一度や二度はあるのではないだろうか。追跡を拒否すると、システムが判断材料とする閲覧履歴を確認することができなくなり、そうした有用なターゲティング広告を見ることができなくなるのはデメリットのひとつと言える。
さらに、追跡を有効にしているとログインIDやパスワードの入力の手間を省くことができる範囲が広がったり、近年流行している“ポイ活”で使われるポイントサイトでも追跡を有効にしなければ利用が制限されることもあるのだ。
閲覧履歴は個人情報であり、それを守るため追跡を無効にする気持ちもとてもよくわかる。しかしなんでもかんでも「追跡=悪」と条件反射で決めつけるのではなく、自分にとって便利なものは有効にしていくことで、あなたの生活をもっと便利にできるのだ。
次にプロンプトが出てきたときは、どんなメリットがあるかも考えてから有効・無効を選んでみるのもいいのかもしれない。
参照元:米国iOS 14.5ユーザーの96%がアプリ追跡を無効にしたとの調査結果【Engadget 日本版】
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