アップル、信念ブレすぎ? 個人情報保護強化も中国では政府に閲覧権限を与えた疑い

アップルはこれまで、事あるごとにユーザーのプライバシーを重視する方針を打ち出してきていることは、読者の方々もご存知のことかと思われる。4月にリリースされたiOS 14.5でも、アプリがユーザー情報を追跡する際には、ユーザー自身の許可を得るように、という仕様をアプリ開発者に強いていた。しかしそんなアップル自身が、中国国内で得たユーザー情報等をアップルの信念に反するような扱い方をしているという報道が飛び込んできた。

実は公表もしていた! 中国企業への顧客データ移転

(Image:Alberto Garcia Guillen / Shutterstock.com)

中国政府への妥協はないとするが、それも建前上か?

 米ニューヨークタイムズが、中国国内のユーザーの個人情報を中国政府系企業と共有していると報じた。これは、「中国で収集されたすべての個人情報とデータについて中国国内での保管を義務付ける」という中国の法律を守るためだという。アップルは中国にデータセンターを建設し、中国の顧客のiCloudデータを中国に移転。「GCBD」という中国のネット企業が管理するようになった。なんと、この情報はアップル自らが「中国本土におけるiCloudサービスを向上していく素地」を固めるとして公表もしていたという。暗号化したデータを復元するデジタルキーもアメリカから中国に移転しており、中国の捜査当局がアップルの同意なくユーザーの電子メールや連絡先などにアクセスしやすい状態にあるとニューヨークタイムズは警告している。
 こうしたニューヨークタイムズの報道に対し、アップルは声明を発表し反論。そこでは中国での顧客データ管理につき「妥協したことは一度もない」として、顧客データを保護するデジタルキーは今も自社が管理しており、他の国で使われているものよりも高度な暗号化技術を使用していると述べている。

(Image:Top_CNX / Shutterstock.com)

重要な顧客であり製造国でもある中国の発言力は大きい

 中国にデータセンターを建設し、中国顧客のiCloudデータを中国に移転させたアップルの決定は、交渉に関わった2人の匿名アップル幹部を「驚かせた」という。そして、彼らはこれが顧客データを危険にさらす可能性があると述べた。中国政府がデータにアクセスした証拠は今のところ無いが、セキュリティ専門家はデジタルキーの保管に妥協があったことや、アップルに代わって第三者の会社が顧客データを管理していることを考えると、中国がデータを要求したり、アップルに無断でデータを持ち出す可能性があると指摘している。

 さらに、ニューヨークタイムズは、中国政府への妥協は中国向けのApp Storeでも行われていると指摘。中国の規制に違反している可能性があるアプリを拒否あるいは削除する専門チームを社内に作っているとも伝えている。実際に、アップルは有料ゲームやアプリ内課金を提供するゲームに公式ライセンスを要求するようになって以降、政府の要請に応じて大量のアプリを削除している。中国App Storeでは、共産党の汚職を暴露した実業家の郭文貴氏がリリースしたアプリが削除されたり、ダライ・ラマに関するアプリを禁じる一方、中国の少数民族ウイグル人を拘束して虐待したと非難されている中国の準軍事組織のアプリを公開し続けている。このほかにも、「天安門広場」「チベット」「台湾」など、中国で規制の対象となっているトピックスに触れているものがないか監視するなど、中国政府の介入は例を挙げればきりがない。

 アップルはアメリカの規制により中国政府にデータを渡すことを禁じられているので、自国の法より中国の法を優先しているということになる。人権問題やプライバシー保護をめぐり中国と欧米の対立が先鋭化するなか、アップルはますます難しい立場に置かれそうだ。

参考元:アップル、中国政府に対しiCloudセキュリティを妥協しているとの報道【engadget】

オトナライフ編集部
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