国際的にも高かった東京の携帯電話料金が、ロンドンに次ぐ安さになったと総務省が発表した。とはいうものの発表の中身を見てみると、東京、ニューヨーク、ロンドン、パリ、デュッセルドルフ(ドイツ)、ソウルの各都市でシェア1位の事業者(東京はNTTドコモ)での比較で、実際に支払っている金額の平均値ではなく、各社が提供している月間データ容量20GBのプラン比較である。つまり値下げ要請により誕生した「ahamo」のプラン料金での比較であり、政府は自らの手柄をアピールしようと躍起になっているようだ。
ドコモの新プラン・ahamoでの比較。実態とは大きく乖離
発表された携帯電話料金の国際比較によると、東京は8,175円から2,973円と前年と比べて5,202円の値下がり。ロンドンは2,166円と最安値で、パリ3,839円、ソウル5,712円、ニューヨーク7,994円、デュッセルドルフ8,325円と続く。しかしこれは各社が提示しているプランの金額であり、実態ではない。
ahamoは有料の店頭サポートをスタートしたものの、オンラインでの手続きが基本であり、自らのデジタルリテラシーに自信がない高齢者などは、依然として高額のメインブランドを使い続けている人も多いだろう。武田総務相は閣議後の記者会見で「今春から各社が低廉なプランの提供を開始し、競争が活性化している。料金水準は諸外国と比べても遜色なく、条件によっては国際的にみて安い水準となっている」と発言しているが、携帯電話への平均支払金額や通話料金については言及していない。はたしてそれは“料金水準”といえるのだろうか。
そもそも各国の主要都市には無料Wi-Fiが飛び交っている。NTTコミュニケーションズの調査によると、無料Wi-Fi普及率は東京の総合評価13.65ptに対して、ニューヨーク15.13pt、ロンドン15.89pt、ソウル16.11ptと高水準で、都市部にいればたいていフリーWi-Fiに接続できる模様。各都市のユーザーはおそらく20GBも使いきれないため、もっと低容量のデータプランで契約しているはず。
日本でも、コロナ禍でおうち時間が増えたことによって自宅Wi-Fiの利用が増え、20GBを使いきれないという読者は多いと思うが、低容量プランについてはまだメスが入っておらず、高額水準のままだ。さらに海外では通話無料のキャリアも多く、通話し放題のオプションを含めた料金で比較しないと意味がない、という見方もできる。
ネット上からも「大容量1プランのみ安くして、他プランは現状維持では意味無し」「標準プランで比較しないと世間一般の料金が判らない」「基本料金、通話料金の比較がないと」といった指摘が相次いだ。ユーザー側が長年求めていた携帯料金値下げなだけに、都合の良い数字を並べて良く見せようとしてもユーザーはすぐに気づいてしまうのだ。
また、5Gの容量無制限プランも比較されているが、東京は8,913円とパリ、デュッセルドルフに次いで3番目に高かった。キャリア各社はこちらも値下げ要請される可能性があるが、見かけの値下げではなく、利用実態に即した値下げでなければ国民は納得しないだろう。各キャリアには、“お上”に寄り添ったサービス改善ではなく、ユーザーに寄り添ったサービス改善をお願いしたい。
参考元:国際的にも高かった東京の携帯料金、一転「ロンドンに次ぐ安さ」に…世界6都市比較【読売新聞オンライン】
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