日本のスマートフォン市場における、「iPhone VS Androidスマホ各社の連合軍」という世界的に珍しい対立はまだまだ終わりそうにない。MM総研の調査によると、2020年度の携帯電話総出荷台数は3,511万台で、そのうちスマホは3,275.7万台で前年比16.9%増。出荷されたスマホをメーカー別でみると、アップルが半数近くを占め9年連続の1位に。2021年度からは楽天モバイルもiPhoneの取り扱いをスタートしているためアップルはさらに出荷台数を増やすと見られており、V10も確実か。
iPhone SEの発売により、シェアをさらに伸ばしたアップル
調査によれば、スマホ出荷台数は2017年度の3,258万台をわずかに上回り、年度別で過去最高を記録した。とくにSIMフリースマホの出荷台数は428.7万台と42.4%の大幅アップで、SIMフリー比率は13.1%に拡大。2020年4月からMNOサービスを開始した楽天モバイルによる「1年間無料サービス」の影響ではないかと推察される。
スマホのメーカー別出荷台数では、1位アップル、2位シャープ、3位サムスン電子、4位富士通コネクテッドテクノロジーズ、5位ソニーモバイルコミュニケーションズという結果。アップルは近年、シェア拡大に翳りを見せていたが、2020年4月に発売された「iPhone SE」(第2世代)の影響により出荷台数を伸ばしたのではないかと考えられる。アメリカの調査会社Counterpoint社の調査によると、iPhone SE(第2世代)ユーザーの約26%がAndroidスマホからの乗り換えユーザーであると指摘。また、iPhone 6s以前の古いiPhoneからの買い替えユーザーも全体の30%を占めると示している。つまり、これまで「iPhoneは高い」と敬遠していたAndroidスマホユーザーがiPhone SEへ乗り換えたり、機種変更を渋っていたiPhoneユーザーが買い替えへ踏み切ったことで、シェア拡大に貢献したと考えられる。
AndroidスマホというとソニーのXperiaやサムスンのGalaxyが強いと思う読者も多いと思うが、今回の調査では意外にもシャープのほうが上。シャープは2017年から「AQUOS sense」を発売しているが、ユーザーの声に耳を傾けながら日本人に特化したスマホをコツコツと作り続けた結果といえるだろう。「どうしても国産スマホじゃないと嫌だ」という、一定数存在しているユーザーの心をつかみ続けている。「Xperiaはちょっと高い」「そこまで本格的じゃなくていい」というニーズにも合致しているのだろう。
一方、運用が開始されている5Gに注目してみると、5G対応スマホの出荷台数は1,101.1万台で2019年度の約41倍。2021年度は2,271万台と予測されており、急速に拡大している。今後は3Gサービスが各社終了していくため、さらなる乗り換えが促進されるだろう。アップルは2021年度に5G対応の「iPhone 12」シリーズを発売しており、メーカー別出荷台数の1位の座は確実と思われる。ひとつ気がかりがあるとすれば、新型コロナの影響で半導体の世界的な供給不足の問題はまだ解決しておらず、メーカー各社は半導体調達が滞ることで生産スケジュールの見通しが立ちにくい状況となっていること。アップル VS Androidスマホメーカー連合軍のシェア争いは、もしかしたら物資の調達が勝敗の分かれ目となるかもしれない。
出典元:20年度通期スマートフォン出荷台数は過去最高を記録 うち5Gスマートフォンは1101.1万台(5G比率33.6%)【株式会社MM総研】
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