中国の通信機器大手・ファーウェイの逆襲劇が始まった。ファーウェイはスマホに搭載する独自OS「鴻蒙」(英語名ハーモニー)を6月2日にリリースすると発表した。
5G市場をめぐる覇権争いで米国から制裁を受け大きな打撃を受けているファーウェイ。かつては世界スマホ市場でシェア1位を誇ったこともあったが、現在はトップ5からも脱落、6位にまで落ち込んでしまっている。そんな苦境に立たされているファーウェイが今回、思い切った舵を切るようだ。行き詰まったハードウエア事業問題を乗り越え成長するために、今度はソフトウエア事業で世界に挑むらしい。今後、世界のスマホ業界にどう影響するのだろうか。
世界から締め出され首位から陥落。ソフトウエア事業で、世界主導めざす
ファーウェイがスマホ向けの独自OSを6月2日にリリースする。創業者でCEOの任正非は従業員に向け「米国の制裁でハードウエア事業が行き詰まった問題を乗り越えて成長を続けるため、思い切ってソフトウエアで世界を主導しよう」と呼びかけている、とロイターが報じた。
2019年にトランプ前米大統領がファーウェイに対し米国製品の輸出禁止の制裁を発動して以来、同社は米国の重要技術や部品が利用ができなくなり、さらにヨーロッパやアジア各国も米国のファーウェイ排除の動きに追随したため、世界から締め出され大きな打撃を受けている。
任氏によるとソフトウエア事業は「米国のコントロール外にあり、われわれがより大きな独立性と自主性を持てる」のだという。独自OS「ハーモニー」のリリースにより、米グーグルのOSアンドロイドへの依存からの脱却を図るファーウェイ。同時に新規端末が発売されるのか、既存機種のOS更新を行うのかは、まだ明らかにされていない。
米国はバイデン政権下でも規制を継続しているため、同社は今後もスマホを生産するための部品調達は難航が続くと言われている。しかし任氏は、まずは中国本土で足場を固め、欧州、アジア太平洋、アフリカを制すれば、むしろ米国を排除することができると、反撃の姿勢を強めている。果たして、その狙いは奏功するのか、注目が集まっている。
今後、世界のスマホ業界において、どのような影響が出てくるのだろうか。米国の制裁により世界シェアを落としているファーウェイだが、その隙を突くようにシャオミやオッポなどの他の中国スマホメーカーがシェアを伸ばしている。かつては“低価格・低品質”のイメージが強かった中国製品だが、近年の技術力の向上は目覚ましく、今や中国製品は“低価格・高品質”を売りに、スマホに限らず太陽電池やEVなどさまざまな分野でトップに立つようになってきている。
だが、その一方で中国の「情報リスク」に関しての日本国内での不信感はいまだ根強いように感じる。最近でもコミュニケーションアプリ・LINEが委託中国企業に個人情報が漏洩する問題を起こし、大きな問題となった。中国では企業の持つ情報を政府が強制的に入手できることから、情報に関わる分野においては特に、いかにユーザーの安全性・信頼性が得られるかが、大きな課題となってくるのではないだろうか。
現在世界のOSシェアを二分するグーグルとアップルでも、個人情報の保護強化に力を入れる動きがある。利用するユーザーのプライバシーに関する意識も高まってきている。ファーウェイが今後世界のソフトウエア業界で2社と肩を並べるようになるか否かは、情報リスクに対する不信感をいかに払拭できるかにかかっているのかもしれない。
参照元:中国ファーウェイ、スマホ向け独自OSを6月リリースへ【ロイター】